Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

出張料理人・岸本恵理子さんのお料理での竣工記念パーティ@原宿K邸

原宿K邸

昨年4月に全面リノベーション工事が終わってお引渡しをしていた原宿K邸ですが、先日竣工お祝いのパーティーを開いて、施工の現場監督の辰・田所さんと設計担当者であるスタッフの竹田さんと各務をお招きくださいました。

お料理は、各務の義姉でもあるイタリア料理の出張料理人である岸本恵理子さんに声を掛けてくださいました。原宿K邸の奥さまは、お料理が大好きだとのことで、料理の先生にもついていらっしゃいますが、そこから偶然に義姉の恵理子さんとも繋がって、竣工パーティーを開くなら彼女にお願いしようと以前から盛り上がっておりました。

パーティー当日に先立って、1週間ほど前には料理をする現場視察(?)とのことで、原宿K邸のキッチンの様子を見に来てもらっています。

パーティー当日の料理のメニューを一緒に考えると共に、お鍋やお皿、ボウルなどで調理に使えるものがどの程度あって、何を持参したらよいかをこのように調べさせて頂きました。

通常の出張料理だけであれば、食事開始時間の2時間前にお宅に伺えれば、十分時間があるとのことでしたが、今回はパスタ生地を練るところや、料理の下準備も半分くらいは一緒にやりたいとのこちら側の希望があったので、3時間ほど前にK邸に来てもらっています。

お料理がお好きな、お嬢さまも参加して手打ちパスタを作っている様子です。当然ながら、私、各務も手伝いましたが、ここでは後ろのシンクで食器を洗っております。

手打ちパスタで作ったのが、シシリアのトラーパニに伝わるブジアーテというねじりパスタです。細く伸ばしたパスタ生地を、焼き鳥のくしのような細い棒を使って捩じってゆくものでした。ソースも、シチリア風のイワシとフェンネルと干しブドウと松の実を使ったオーソドックスなものでした。

料理は、焼き立てのグリッシーニに前菜が4種類、パスタ2種類にお肉のメイン料理とデザートと豪勢なコースでしたが、作るだけでなく教えてもらうという欲張りなスタイルで、恵理子さんも大変だったのではないでしょうか…。

全ての料理の写真を撮ったわけではありませんが、左上から時計回りに、生ガキの前菜、芽キャベツのフリット、ピエモンテ名物の極細パスタのタヤリン(こちらはあまりに細いので、事前に仕込んで貰っています)、チョコとキンカンのデザート、メイン料理の豚肉のロースト、そして先ほどのイワシのシチリア風パスタです。

メインの豚肉は、K邸キッチンに採用したミーレの最新式スチームオーブンDGC6800を使って、2時間近く掛けて肉の内部温度を60度でレアに仕上げたローストポールでした。

美味しいお料理にお酒、そして皆が料理を作ったり食べたりしながら、賑やかに設計や工事のプロセスを振り返りながらのパーティー、本当に楽しく時が経つのを忘れてゆっくりさせて頂きました。岸本恵理子さん、美味しいお料理どうもご馳走様でした(キッチンが使いやすいとのお墨付き、どうもありがとうございました)。そしてKさまご夫妻、とても素敵なお食事会にお招きくださり、本当にありがとうございました!

 

 

 

ヴィンテージマンションの空調機器調査@白金台H邸

白金台H邸

先日プロジェクトの設計デザインが始まった白金台H邸ですが、エアコンを全面交換するか、既存機器を活かして補修してゆくかで、費用的に大きな差が生まれることが判ったので、その調査に入って貰うことになりました。

空調機はアメリカンスタンダード社の空冷式エアコンシステムのダクトタイプです。室外機が屋上に一台、室内機も廊下に一台あり、そこから各部屋に向かって天井裏をダクトが伸びているスタイルです。

室内機については、7年ほど前にその時点で故障しそうだった部品を交換していたそうです。このようなヴィンテージマンションのエアコンは、GE(ジーイー)にしてもハネウェルにして、今回のアメリカンスタンダードにしても、メーカーが日本から撤退してしまっていることがほとんどなので、補修しようと思っても部品が無くなっていることがほとんどです。しかし、このマンション全体の空調も見てくれている城西エアコンに点検をして貰ったところ、今回補修が必要な箇所については、部品がまだあるとのことで、補修が可能との判断が出ました。

屋上に上っての室外機の点検の様子です。室内機よりも室外機の方が重要なので、電圧などの異常がないかもきちんとチェックしてくれています。

各吹き出し口に、風量と温度をチェックするセンサーを当てて、暖房と冷房それぞれを作動させたうえで、検査をして貰いました。

吹き出し口のルーバーのチェックまでしてくれています。
検査だけでも3人の方が来てくれた分で2万円+消費税の費用が掛かりましたが、検査の結果35万円程度の補修費用で、既存のエアコンが使えることが判りました。全面的にシステムを変更すると、400万円以上の費用が掛かると言われていたので、360万円ほどのコストセーブができたことになり、お客さまも大変喜んでくださいました。

 

レザー張り扉の研究@麻布台M邸

麻布台M邸

これまでにも幾度かレザー張りの建具をデザインして、作って貰ってきましたが、細かいディテールやレザーの選び方で思い通りに行っていない部分がありました。昨年は、栃木にある工場まで出かけて職人さんの話も聞いてきましたが、まだ納得がいっておりませんでした。

今回は、難しいディテールや素材のことに詳しいトリシュナ・ジバーナの三浦さんに協力して貰い、素晴らしいレザー張り建具を作ることができたと思っています。そこまでの研究の成果(?)を記事にいたしました。

素材としての皮革ですが、本物の牛皮だと、革の厚みやサイズ的で思ったようなものが作れなさそうなので、やはり人工レザーで進めようと考えました。

壁の大理石がモナコグレーで決まっていたので、そのサンプルを持って、これまでも人工レザー素材を使わせてもらっているイノベイジアの岩本町ショールームを訪問してきました。これまでは、イメージを伝えて選んだサンプルを送って貰って、その中から選んでおりましたが、やはり大量にあるサンプルを実際に見比べながら選ぶと、より多くの気付きがありました。

人工レザーに限らず、本物の牛皮も拝見させて貰いました。アメリカでは最高級の牛皮といわれているGarrett社のレザーサンプルです。

微妙な色味の違いも表現されており、カラーサンプルのように多彩な見本がありました。

本革は人工皮革以上に色々ななめし方、パターン付があるそうです。ハイエンドブランドのコートやカバン、靴などに使われる素材まで考えると、ほぼ無限にバリエーションがあるとのことでした。当然ながら、人工レザーと比べると、価格も数倍となってしまい、サイズも牛一頭から取れる牛皮の大きさが限定されてしまうので、それに合わせてデザインしなければならないので、やはり人工レザーで進めることを再確認いたしました。

幾つかのサンプルをショールームからお借りして、麻布台M邸のお客さまご夫妻に確認して頂いている様子です。

大理石だけでなく、造作家具に使ったチークやカラーガラスとの色味の相性、そして革のテクスチャーやスティッチを入れる糸の太さと色も確認して頂きました。

トリシュナ・ジバーナの三浦さんに書いて貰った施工図を、こちらでチェックして返す作業を3度ほど繰り返して、ようやく作り始めて貰うことができました。

そして、レザー建具が作られて、現場に吊り込まれたのがこちらです。この距離だと、レザーの質感が伝わってきませんが、左側の造作家具カウンターや吊戸棚の高さと、レザー建具の特注取っ手の高さ、そしてスティッチの位置が合っており、そしてそれが右側の大理石の目地の高さとも合っていることが判るでしょうか…。

取っ手部分のディテール写真です。スティッチもとてもきれいで、特注取っ手との取り合いもとてもきれいです。

扉を閉じた時の様子ですが、このようなアップ写真で見ても、カウンターの高さとピッタリ合っていますした。価格もこれまで作って貰ってきたレザー建具より高くなってはしまいましたが、費用を負担してくださったお客さま、そしてトリシュナジバーナとイノベイジア、全てを組合せてくれた施工会社の青にご協力でいただき、とても満足度が高い扉をつくることができました。