オーナーマンションの原宿K邸のリノベーション工事で、僕らが設計が一番楽しみにしている造り付け家具(造作家具:ぞうさくかぐ)の取り付けが始まりました。
一般に造作家具の取り付けというと、箱状の家具が現場に運ばれて、壁と壁の間にすっぽり嵌るように埋め込んでゆくようなイメージがあるのではないでしょうか?実際には、色々な作り方(組み立て方)があるのです。
例えば、こちらの造作家具は、先回のブログでも紹介されている通り、ウォールナット突板で作られたフレーム部分は、壁のボードとの取り合いがあるので、2週間ほど前から取り付けが始まっていました。窓横に見える灰色の箱状のものとその下に伸びているベンチ板が、本日現場に運び込まれて取り付けられたものです。
同じフレームの反対側には、このようなカウンター(甲板:こういた)と吊り戸収納がとりついています。吊り戸の下に金物が顔を出していますが、これはワイングラスを引っ掛けるフックになっています。カウンターの下には、ビルトイン型のワインセラーがすっぽり嵌ることになっています。
こちらは、玄関とリビングに渡って直角に折れながら連続している造作家具です。スタッフの竹田さんが立っている場所が玄関で、家具屋さんが作業しているエリアはリビングになっています。全部の5個の違うサイズの箱が現場で組まれ、その隙間にスチール(鉄)で作られたフレームがはまり、全体で一つの造形に見えるように組み上がる予定です。
こちらが玄関側から見た、奥行の浅い靴収納(左側)とコート掛けと工具収納(右側二つ分)になっています。靴収納の上部には、分電盤と弱電盤が入るので、電気配線を指し込みながら家具を付けてゆく必要があります。
こちらは洗面所の家具です。シンクカウンターが入る下台、ミラ張りの扉がついたメディスンキャビネット、そして手前にある扉付き収納がリネン用のトール収納です。こちらは電気配線だけでなく、給水給湯と排水が絡み、天井の高さのズレにも合わせながら組み合わせてゆきます。
トイレは壁が斜めになっているの、その点が難しいところです。壁から壁の間にぴったりとくっつけたいので、塗装仕上げでボード2重貼りにする壁下地を、この部分だけは一枚貼りで置いておき、その間にカウンター家具を組んで、仕上げにボードを被せてゆくことで、壁ぴったりに組み上げる仕組みになっています。
こちらは寝室の窓横に嵌められた本棚です。右側奥に丸い管が竪に通っているのが見えますが、建物建設当時はこの場所はベランダで、上階のベランダからの排水竪管が通っていたのです。オーナーマンションなので、以前にリフォームをした際にベランダも室内に取り込んでいましたが、この雨水管が居室としては気持ちが悪いとのことで、造作家具の一部を取り外し式の点検口として、隠すことになりました。
玄関の靴収納の扉のディテールです。ちょうど凹ん箇所に、スチールで特注で作ってもらった金物をはめ込むとそれが取っ手になる仕組みです。
慎重に接着剤とビスを使って、扉材に特注取手金物を職人さんが固定してくれています。
造作家具が徐々に組み上がってゆく横では、在来工法で作る浴室の作業が進んでいました。防水下地ができて、水溜試験も終わった壁に、下地材のラスカットが張られました。天井には塗装して仕上げにするケイカル板が張られています。
その後、タイルを張る下地になるモルタルが左官工事で塗られました。乾かしている間に、浴槽や水栓金物が運び込まれています。
梱包を解かれた浴槽が設置されています。今回はドイツ製カルデバイの鋼製ホーロー浴槽を採用していますが、ピンク色のブニュブニュしたものは、発泡性の断熱材を事前に吹いておいて貰ったものです。これでお湯を貯めておいた時に、温度の低下を避けることができます。左側に緑色の蓋がされた黒い円筒形のものは、床スラブを貫通して下階に繋がっているバス兼トラップ(バスケントラップ)です。洗い場からの排水と浴槽からの排水を一つに纏めて排水する仕組みになっています。
実は、このバス兼トラップと浴槽の位置関係、そして洗い場のタイル割りなどは、非常に緊密に関係しているので、当日は三人掛かりで、半日以上掛けて設置をしてくれました。
バス兼トラップの上に載せたステンレス製の四角い箱は、目地スルータイプの排水ユニットを載せる箱で、それをモルタルでがっちりと固定している様子です。この箱の位置のタイル割りから逆算された位置になっています。
これで、来週からは造作家具の残りの組み立てとキッチン組み立てになってゆきます。