Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

施主検査前夜のシークレットプレビュー?@六本木N邸

六本木N邸

マンションリノベーションの工事が完了した際には、お施主さまに立ち会って貰いリノベーションの工事内容に間違いがないか、気になるキズや施工不良がないかを確認して頂く「施主検査」というプロセスがあります。本来的には、初めてリノベーションの内容を目で見て、空間性を実体験して貰う、感動的なタイミングのハズだと思っています。
ただ、悪徳リフォームや第三者インスペクションなどの影響で、施工側がインチキ工事をしていないかを確認することが目的のようになってきているようです。何とか、お施主さまにリノベーションと初めて出会う感動を味わって貰いたいと考えて、今回は施主検査の前日の夜に一工夫をしてみました。

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ちょうど施主検査の前日にお施主さまご夫妻と夕食をご一緒する約束をしていたので、その食後に現場を極秘(?)で見学してもらったのです。いわば、シークレット・プレビューです。
翌日の施主検査に向けて最後の仕上げ工事やクリーニングを必死で進めてくれている施工会社には、事前に電話でお願いをして、見学しても良いかを確認したうえでのプレビューなので、実質上は全くシークレットではありませんが…。

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今回の六本木N邸は照明計画も練りに練っており、夜景が特にきれいなので、お施主さまご夫妻も本当に喜んでくださいました!
普通の検査だと、リノベーション工事関係者が多数見守る中で、シビアな目でミスを見逃すまいとする心構えで、空間体験するというより検査に立ち会う感覚となってしまいがちです。ただ、この夜は何度も打ち合わせを重ねてきた設計の僕らとご夫妻の4人だけで、検査といったヤボ用は抜きに、単純に空間を初見するという目的で訪問することができたので、「まるでテレビのビフォー&アフター番組のような感動を味合うことができた」とお施主さまからも喜んで頂けました!

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こちらが、その翌日の竣工・施主検査の様子です。僕ら設計側がお施主さまに先立つこと2時間ほど前に伺って、一通り施工不良個所や未成個所に付箋を付けてチェックしてたいた内容をお二人にご説明してゆきました。写真は、丸柱と床フローリングが接する箇所に隙間があり、コーキングで納めるべきか薄い木の雑巾摺りを廻すかをご相談している様子です。

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ほぼ全ての家具が揃っている段階でのチェックなので、ダイニングエリアであればダイニングチェアに座って気になる個所をチェックして貰い、リビングであれば、ラグに隠れる箇所のチェックは軽く済ませて、ソファーに座って正面に見えるテレビ収納付近は念入りにチェックして頂くようなスタイルで検査して頂きました。

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施工のリフォームキュー側からは設計・営業担当の岩波さんと坂本さん、現場の富田さんと宮脇さん、家具についてはメイズの柚澤さん、そして設計からは担当スタッフの竹田さんと各務の大人数で、付箋を貼った個所を回ってゆきます。

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検査ギリギリで完成したライブラリーの本棚やガラス扉を奥さまと一緒にチェックしました。とてもきれいなディテールの納まりには奥さまも感心してくださいました。

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廊下では、主にフローリングのキズや幅木との間の隙間をチェックした内容をご説明いたしました。黒いフローリングは、白いホコリが目立ちやすい上に、まだ工事のチリが空中を舞っているので、しばらくは汚れやすい状態であることもご説明しています。

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洗面所と浴室の検査では、追加でバスローブのフックを付けたいとのことで、浴室への扉脇で高さと位置を確認して貰っている様子です。

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主寝室のヘッドボードもご覧になるのは初めてでしたので、デザインの工夫や作り方のディテールも説明させて頂きました。まだシーツは掛かっていませんが、ベッドも現場に入っているので、サイズ感も判って、使いやすそうな様子も判ると講評でした。

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1.5時間ほどご一緒に回って頂き、検査で引っ掛かった個所全てを図面にナンバーリングして、さらにその内容を以下のようなリストに後日纏めて、施工側とお施主さまにお渡しいたしました。

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細かい点を含めて、60項目以上のダメリストとなりました。ここまでの工事プロセスも設計側で細かく見てきましたが、やはりどうしてもこれくらいの数のチェックは入ってしまうものなのです…。とはいえ、塗装や簡単な調整で直るものがほとんどなので、こちらのリストに施工側でいつまでに補修ができるかを描き込んでもらった上で、お施主さまにお渡しすることとなりました。
前夜のプレビューから、当日の検査立ち会いまで、長時間現場に立ち会ってくださったNさまご夫妻、どうもありがとうございました!

 

渋谷区タワーマンションプロジェクトのリフォームアドバイス

リノベーション

一昨年の春、メールで渋谷区のタワーマンションのご相談がありました。180平米超えで、高層階からの素晴らしい景観が特徴のマンションでした。

こちらが現地の夜景です。大きなリビングにセミオープンなキッチンが面した開放的な間取りでした。現在も同じマンションの違う階に住んでいらっしゃるので、リビングから見える景色を違う方向に変えたいことや、お二人のお子様たちに同じ条件の部屋を用意したい、またシックでスタイリッシュなインテリアが好きなので、全面リフォームを検討しているとのことでした。

リフォーム提案

現地の様子と竣工時の図面を読み込んで、僕らなりに考えてご提案したのが上記のスケッチ案です。リビングとキッチンのあり方は二通り、また書斎コーナーを含めた水回りもオプションを含めたご提案でした。ライバルとして大手のリフォーム会社2社にも提案して貰っているとのことでした。
結果的には、大手のN社にお願いすることになったとのご連絡を頂きました…。

残念ではありましたが、その後どうしていらっしゃるのかと気になっておりましたが、ほぼ一年経った頃に、再度のご連絡を頂きました。N社に頑張って貰って 打ち合わせを続けてきたそうですが、①最終的な仕上げ材を決定することができていないこと、②使い勝手や動線もここまで決めた内容で進めてよいのか判断で きかねていること、③費用的にも当初の想定より相当膨らんできていることの3つの問題をご自分たちだけでは解決できないとのことで、有料で構わないのでア ドバイスをお願いできないかとのご依頼でした。

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その時点までに選んできた仕上げ材やプランを拝見して、色々と思うところを率直にお話させて頂いたところ、N社にも交渉してみるので、N社とのこれからの打ち合せにも同席して、施主側のアドバイザーとして手伝って貰えないだろうかとのお話になりました。

そこからSさまご夫妻、N社との幾度かのメールや電話でのやり取りがあってから、お打ち合わせに同席してアドバイスしてゆくことに決まりました。

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こちらがN社のショールームでのお打ち合わせ様子です。N社側からは営業担当とデザイナー、さらには上司の責任者も同席しての打ち合せになりました。僕らはデザイナーではなく、あくまでも施主側の助言をすることでデザインはN社側に任せていること、素材探しはお手伝いするが、大手のN社では社内規定や付き合いなどで使えない素材があるので、それらを採用すべきかどうかには口出しをしないこと、また見積りを落とすための方法についてはアドバイスするが、見積り内の単価についてはコメントしないことをルールとしてお手伝いすることを確認させて貰いました。

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そこまで進んできたデザインから想起した素材や本、雑誌等を持ち込んで、N社側のデザイナーとお話しをしてみたところ、デザイナーの方も全く同じ本を見ていたことが判りました。N社が用意していた素材と、僕らが持ってきた素材を見比べている様子です。

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両者が考えている素材のトーンは似ていましたが、壁面に大理石を張るのがN社側の提案でしたが、どうしてもそこが価格的に大きな問題になっているように感じたので、僕らは石材の代わりにレザー調の素材感があるクロスを張ってはどうかとアドバイスいたしました。マナトレーディングが扱っているレザー調の輸入クロスです。
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こちらは現地の昼間の様子です。SさまとN社側の事前の相談で、リフォーム案が決まった時点でどのような部屋になって、景色がどう展開するのかを確認するために個室を仕切っていた壁のボードを撤去してありました。
問題点はまだ色々ありました。キッチンのサイズや床仕上げ材の種類とその範囲、玄関ホールの仕上げ材、造作収納のデザイン、子ども部屋のアイデア、照明計画等々、お施主さまも迷われる個所が多かった分、それらに対し誠実に纏めてきたN社の 案にもお施主さまの迷いが反映されているように感じていました。とにかくNさまご一家の暮らし方を整理して、素材の使い方と費用の掛け方をそれに対応させ ることを主眼にアドバイスを行ってゆくことになりそうです。

《全能住宅改造王》的翻修裝潢建議 驚異のリフォーム&リノベーションの中国語版

ニュース

2012年に初版が発売になり、その翌年に改装増版されたリフォームの技術本、「驚異のリフォーム&リノベーション」(エクスナレッジジ)の中国語版が発売になっています!台湾の出版社が翻訳権を購入して出版の運びとなったそうです。

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タイトルは「大師如何設計《全能住宅改造王》的翻修裝潢建議となっています。全能住宅改造王とは、台湾で大人気のテレビ番組「劇的!ビフォー&アフター」のことだと思われます。共著者の中西ヒロツグさんは台湾でも相当な著名人だと聞いているので、その人気にあやかっているのだと思われます。

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写真のキャプションから図版の説明まで、ほぼすべてが中国語に訳されています。翻訳者の方の苦労は並大抵ではなかったのではないでしょうか…。

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最後のページに掲載されている著者経歴の個所です。「哈佛大学」というのがハーバード大学の中国語訳であることが判ったり、住宅リフォームコンクールが「住宅翻修競賽」だったり、中西ヒロツグさんはそのまま中西ヒロツグさんだったりと、中国語の勉強にもなります。今後中国進出を狙っている設計者の方のための勉強テキストにもなりそうです(笑)。