Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

上階からの水漏れ対応の顛末-1

成城Z邸

7年前にスケルトンでのリフォームが完成し、その後も2度ほどの模様替えでもお手伝いさせて頂いたいる成城Z邸のお客さまから、2つ上の階のリフォーム工事が原因の水漏れで、自宅の寝室やウォークインクローゼットに被害が出ているので、見て貰えないかとのご相談がありました。

上階漏水が原因の水漏れ調査

ご相談のメールには、このウォークインクローゼットのペンダント照明やダウンライトの孔から水がポタポタと垂れてきているショッキングな映像が添付されていました。僕らが工事をお願いしたリフォームキュー担当の森井さんと一緒に伺った時には、既に上階での水漏れ原因を作った大手リフォーム会社のN社の担当者がチェックした後で、漏電の危険のあるダウンライトなどはこの写真のように取り外されておりました。

上階漏水が原因の水漏れ調査

浴室も水漏れがかなりあった場所だったとのこと、オーダーユニットバスの設計施工をお願いした東京バススタイルの和久田さんにも来てチェックして貰いました。

上階漏水が原因の水漏れ調査

こちらは浴室の天井点検口裏に設けていた弱電のルーター基地です。既に水が引いているのか乾いたのか、パッと見るとダメージはなさそうに見えましたが、Zさまからは水漏れ発生後にネットの接続状況の悪化やステレオシステムに異常が発生しているといった悪影響が出ているので、水漏れがここにも被害を及ぼしているのは確実なようです。

上階漏水が原因の水漏れ調査

まずは僕らカガミ建築計画とリフォームキューで、水漏れしたかしていないかに関わらず、家じゅうの点検口を開けて覗ける床下や壁裏、天井裏を全てチェック致しました。こちらは書斎の飾り棚のパネル部分を取り外せるようにデザインした特殊な点検口です。

上階漏水が原因の水漏れ調査

来客用トイレの柱型PSの点検口からは浴室の床の情況を見ることができました。

上階漏水が原因の水漏れ調査

水漏れが発生した場合、まずは濡れている個所を探します。濡れていなくても、建材にシミが出来ていたり、長期間の湿気に晒されると天井や壁下地のLGS(金属製の下地材)に錆が発生することもあるので、それらを見逃さないように注意深くチェックしていきます。幸い、携帯電話のカメラを差し込んでユニットバスの下までのぞき込んでみましたが、こちらには水漏れの被害は発生していないようでした。
因みに、この写真の緑色の管はお風呂の追い炊き管で、左上に見えている青が水、赤がお湯の管で、白い箱状のものがユニットバスの浴槽裏で、床にキャラメルのようなものが広がっているのはおーだおユニットバスの脚をコンクリートスラブに固定するための接着剤で、水漏れとは関係がありません。

上階漏水が原因の水漏れ調査

浴室の床は特に穴をあけてチェックすることができないので、他の点検口からも浴室の下を確認しました。この写真では上の白い箱がユニットバスです。壁のLGSの隙間に詰められているのは、竪排水管(写真の黒に金属の網でカバーされたもの)の音が室内に響かないように敷設されているグラスウール製の断熱材です。この種類の断熱材は水気に弱く、濡れるとすぐにしぼんでしまうのですが、この箇所は水漏れにはやられていないようでした。

上階漏水が原因の水漏れ調査

洗面所のセンメンカウンター下の点検口も空けてのぞき込みました。

上階漏水が原因の水漏れ調査

水漏れの被害が見えていないリビングダイニングもチェック致しました。こちらには点検口は無いので、床付けのコンセントボックスを外して、携帯電話を差し込んで確認しました。
僕らが行った一次調査を行ったカ所では、床下には水漏れの痕跡はありませんでした。もし、床下に水漏れの痕跡があったら、更に下の階のお宅にも水漏れ被害が発生している可能性も高いので、まずは関係者一同ホッと致しました。

上階漏水が原因の水漏れ調査

水漏れ事故の原因を作ったN社の担当者は、これで調査は終わったと思ったようで、「水漏れ範囲の特定はできたので…」とお話しし始めたので、お話し途中でしたが、遮らせて頂きました。こちらからは「今までのはあくまでも一時的な簡易調査ですから、ここからは天井や床に新たなに人の頭が入るサイズの点検口を開けて、より詳細な調査をして貰いたい」とお伝えして、上記の図面をその場で作りながら、どの箇所に点検口をあけるかを指示していきました。水漏れの兆候が見えていなかったリビングダイニングについても、天井カセット式のエアコンを外したり、目立たない場所の床に点検口を開けて調査するための基本資料を作りました。
N社の担当者から、2階上のお部屋の水漏れの原因は、給水管のヘッダーの一部をプラグ止めした際の処理が適切ではなく、プラグ止め部分が錆びて落ちてしまい、床下空間がプールのように水だまりになってしまったとのことでした。既にこのお部屋の床下の水はポンプアップしたうえで、ファンを入れてほぼ乾いた状態になっているとのことでしたが、上階の2つのお部屋や、Zさまの隣室はまだ調査に入ることもできていないとの話を聞いていたので、まだどこから水が漏れてくるか分からない状態なので、調査はより時間を掛けて念入りにすべきだと主張致しました。

上階漏水が原因の水漏れ調査

N社の方も当初はそこまでやるのかと、少々驚いた顔をしていましたが、Zさまも一緒の場で、もし補修工事をした後に何かトラブルがあった場合のことを考えたら、まずは調査を徹底的にやるべきなのではとお話ししたところ、十分に理解してくれたようです。その後にリフォームキューに依頼して空けて貰ったウォークインクローゼットの天井点検口がこちらです。
一部でもこのように開口してしまった面は、その部分だけを塞いでも塗装の仕上げはごまかせないので、全面塗り直しという大きな工事になってしまいますが、お客さまのZさまからは、水漏れのウミは全て見付けて直して貰いたいし、これをキッカケに気になっていた部分を自費でプチリフォームなさりたいとのとても前向きなお話しを頂いておりました。

上階漏水が原因の水漏れ調査

具体的には書斎の壁面収納の使い方が変わってきたので、それに合わせて作り直したいというご希望や…、

上階漏水が原因の水漏れ調査

書斎の反対側のこちらの収納は、ガラス扉の収納は左側だけにして、真ん中の収納は見えない収納にして欲しいとのご要望や…、

上階漏水が原因の水漏れ調査

ユーティリティーのカウンター収納は真っ白で寂しいので、もう少し雰囲気のある造作家具に変えることができないかというリクエストがありました。

上階漏水が原因の水漏れ調査

更に、どうせ水漏れ補修のために最低でもひと月は家を空けなければいけないので、「各務さんが気がついたポイントでリフォームすべき箇所はありませんか?」とのお話しがあったので、当初からほとんど手を加えていなかった、この玄関扉周りが殺風景なので、枠を付けて色も変えたらとお話しをしたところ、それも是非やりたいとのお話しになりました。

上階漏水が原因の水漏れ調査

ウォークインクローゼットも、上段のものを隠せるようにレースのカーテンを付けて、洋服のハンガー部分には間接照明を付けて、使えなくなってしまったペンダント照明は同じものを探すのではなく、雰囲気を変えたものに変更してはとのアドバイスにも是非と喜んで下さいました。

上階漏水が原因の水漏れ調査

Zさまは、「災い転じて福となす」という精神で、水漏れのことで落ち込むのではなく、それを逆手にとって、より良い自宅環境が整うキッカケにしたいと仰ってくれました。

上階漏水が原因の水漏れ調査

リビングも何か変えることは無いかと問われ、天井に歪みが見えたので、それはこの機会に直しましょうとお伝えしたところ、もっと大きく変えて気持ちを変えるようなことをなさりたいとおっしゃられました。僕らのブログで見たミノッティのソファを入れて、今お使いのソファ(因みにこちらもミノッティ)と変えることは?と聞かれました。当然ながら自分には全く責任が無い中で、水漏れのトラブルに見舞われて、本当に面倒な交渉や工事依頼をしなくてはならないのに、それをポジティブパワーで跳ね返そうとするZさまの意気込みには本当に感服致しました!
それを不安そうに聞いている水漏れ原因のN社の担当者には、水漏れ補修工事と、今日の打ち合わせで見積もることになった追加工事は、当然別に見積もって御社に請求することはありません。ただ、工事申請や養生などの費用については水漏れ補修工事で発生する物を流用させて貰いますとお話ししたところ、それであれば勿論構いませんとのお話しになりました。因みに、カガミ建築計画の水漏れ調査の立会いを無料サービスでお手伝いすることは難しいので、一回の調査立会いにつき10万円の費用と水漏れ復旧工事の監理費用としてその15%の費用をN社に支払ってもらうようお願いして、了解を得ております。解体工事から先の様子はこちらのブログをご覧ください。

造作家具の取付け@関西I邸

関西I邸

先日工場で作られている箱家具を見学して参りましたが、それらが現場に入って組み立てられ始めています。

関西I邸_造作家具の組立て

全ての箱を現場に搬入してしまうと、身動きが出来なくなってしまうので、三分の一程度ずつ搬入して、取り付けてゆく段取りになっています。その順番も先行して箱を取り付けておかないと、周りを仕上げることができないものから優先的に進めて貰っています。

関西I邸_造作家具の組立て

リビングの一角で、カウンター上はひな人形などを飾る棚、下にはワンちゃんの小屋をはめ込む収納はもうすでに取り付けられています。

関西I邸_造作家具の組立て

カウンター甲板のクオーツストーンが左右の壁に入り込むようなデザインとなっているので、こういった家具は先行して取り付ける必要があるのです。

関西I邸の洗面所家具組立て中

奥のプライベートエリアの洗面カウンターの取付けは、まさに佳境を迎えていました。

関西I邸の洗面所家具組立て中

長いクオーツストーンの甲板がキャビネットの上に乗り、その上にメディスンキャビネットが吊られています。壁やキャビネット内のコンセント設置穴からは電気の配線が伸びています。壁との取り合いは10ミリでシールで埋めることになっていますが、壁との隙間を見ると、正確に作られているのが良く分かりますね。

関西I邸のユーティリティー家具組立て中

洗面の奥のユーティリティーはガス乾燥機の乾太くん等の設備機器とダクト接続が絡んでくるので、やはり先行して箱が組まれていました。

関西I邸_主寝室の造作ヘッドボードの組立て

こちらは主寝室のヘッドボード部分を組み立てている途中です。既製品のルーバーを組み込んだクローゼットの扉(引き違い戸)は既に組み込まれています。こちらもエアコンの冷媒管とドレイン管が家具の中を通るので、先行組となります。

関西I邸_造作家具の組立て

大物の家具の場合は、何度も箱を入れる場所に運んでは、リビングに戻して刷り直す作業を続けてくれています。

関西I邸_造作家具の組立て

ちょうど正面左奥の廊下で組立て職人さんが作業してくれていますが、手前に横たわっている本棚家具を組み込むために頑張ってくれています。

Lamello(ラメロ)の木製ビスケット

箱もの家具は分解して現場に入れて、現地ではめ込みながら組み上げてゆきますが、ビスなどで固定するとビスの頭が見えてしまうので、このような独特の部品を組み合わせながら金物類が見えないように組み上げてゆくのです。因みにこのハッパのような部品は、Lamello(ラメロ)というスイスの会社の製品なのです。本棚の組立ての様子は過去のこちらのブログでも細かく説明しております。

造作家具組立ての7つ道具

丸のこや三角定規、かんなやカッター、物差しなどを使いながらの丁寧で時間がかかる作業なのです。

関西I邸_造作家具で作った通り抜け型パントリー

既に組み上がっているのは、キッチンと玄関を繋いだ動線上に設けてパントリーの収納です。キッチンの冷蔵庫とは別に冷凍庫とワインセラーをこちら側に収納する予定です。

関西I邸_造作家具で作った通り抜け型パントリー

通路を挟んで反対側には、キッチンに収まりきらない調理家電を置くカウンターと引き出し、その下にはごみ箱収納置き場、上部は扉付きの吊戸棚収納となっています。

関西I邸_造作家具で作った通り抜け型パントリー

玄関側からパントリーを通してキッチンを見たアングルの写真です。キッチンとパントリーの引き込み戸を開いた状態で使えば、見せるキッチンと隠すパントリーとして使い分けることができるのです。

関西I邸_トイレ手洗い造作家具組立て中

こちらはトイレの手洗いカウンターです。カウンター上の4方枠付きの鏡の枠も造作家具で作って貰っています。

関西I邸_ロフトの造作

こちらへ厳密には造作家具ではありませんが、ロフト収納内に棚を取り付けるための下地を付けて貰っています。

関西I邸_ロフトの造作

当初は箱状の家具を置く考えで進めていたのですが、途中からお手伝いに入って貰った収納アドバイザーと奥さまと僕らとの相談で、ガチャレールを背面に仕込んだ棚板をロフトの周囲壁に設けようとのお話しになり、下地を作って貰っているのです。

フリースタンディングバスのある水回りのCG_ザ・ライブラリー

ザ・ライブラリー

ザ・ライブラリーブランドで取り組んでいるメゾネットマンションリノベーションの中央区S邸は、設計のスピード感とコロナ禍でのスタート準備のため、下階と上階で設計及び施工を2つのフェーズに分けて行っています。下階でのペンディング事項(未決事項)がほぼ無くなり、造作家具の取り付けが始まったタイミングで、上階の設計に取り掛かっています。

フリースタンディングバス&洗面カウンターのある水廻り手書き平面図

メゾネット上階フロアのデザインで目玉となるのはフリースタンディングバスのある水回りです。フリースタンディングバスとは、浴槽を壁や袖壁の中に埋め込まず、仕上がった部屋の中にまるで家具のように据え付けるタイプの浴槽のことです。
今回はリノベーション前の水回りから位置を移動して、洋室だった部屋一室すべてを水回りにする構成となっています。このアイデアは当初からお客さまが持っていたお考えで、初めて伺ったときには、使い勝手の面や、排水の水勾配(床下の排水管の水を淀みなくスムーズに流す勾配)や換気扇のルートのことなどで、実現性は乏しいのではと思っていました。ただ、その後やはりフリースタンディングバスを使っている今のお住まいを拝見したり、Sさまの強い想いを幾度も伺ううちに、何としてもやり遂げたいタスクの一つへと昇華してきました。
とはいえ、洋室1室分の広さの水回りの床すべてをオーダーユニットの防水パンで作ったり、在来工法の防水層を作るのは予算的にも厳しいので、どこまでを防水エリアとして、どのように見切るのかをSさまと何度も打合せをさせて頂きました。

上階平面図_メゾネットリノベーション中央区S邸

浴槽がフリースタンディングなだけでなく、ダブルボウルのある洗面カウンターも部屋の中央に置いて、周囲を回遊できるようになさりたいとのこと、現地の実寸を見ながら、かなり細かい設計を進めています。

フリースタンディングバス&洗面カウンターのある水廻り

以下、作成したCG等も掲載している続きは、ザ・ライブラリーブログをご覧ください。