Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

中古別荘の解体調査 軽井沢中古別荘リフォーム-02

軽井沢Y邸

Y夫妻が軽井沢の中古別荘の購入を決めてから1ヵ月、事務所スタッフ一同と知り合いの大工と一緒に乗り込んできました。中古住宅のリフォームでは、一般に良く「工事してみないと判らないので、工事費がちゃんと見積もれない」という話を聞きます。
しかし、これは住みながらのリフォームの話しで、時間的余裕が無い時の話ですね。今回は時間的な余裕もあって、現在住んでもいない別荘リフォームですから、まず先に大工と一緒に気になる部分や構造がわからない部分を解体し、詳細な現地調査を行いました。特に今回は既存別荘の図面(別荘竣工時の図面)も不動産屋さんが作った程度の簡単な間取り図しかありませんでしたので、測量と写真撮影からスタートです。

軽井沢の中古別荘解体調査中

同時に大工さんには気になる箇所の壁や床、天井までドンドン開けていってもらいます。筋交いがあって欲しい壁に’筋交いが見付からなかったり、トイレの床をはがしたら、予想もしなかったコンクリートのタタキがあったり、さながら探偵が古い屋敷を捜査しているかのようなドラマが展開します。朝の10時に調査を開始し、細かい寸法を測量し、隠れた構造を調べて、それらを図面に書き込んでゆく作業が終わったのは、暗くなってきた夕方の4時です。

こちらは屋根裏の様子です。簡単に既存建物の調査と言いますが、大工さんも合わせて総勢5人の専門家で約6時間、これだけの労力が掛かるのです。後は事務所に帰って、測量した寸法と写真を比べながら、構造や設備の位置まで落とし込んだ図面を書くだけです。

最後の写真はおまけで、屋根裏に見つかったスズメバチの巣です。既に捨てられていましたが、見付けたときは一瞬全身に悪寒が走りました。

中古別荘ハンティング 軽井沢の中古別荘リフォーム-01

軽井沢Y邸

前からの知合いであるY夫妻から、早春のある日お電話を頂きました。軽井沢に中古別荘を買いたいので、その相談に乗って欲しいと。中古別荘を見て回って、リフォームの可否を見ながら
別荘ハンティング?(中古別荘探し)をしたいとのお話でした。これは楽しそうだと、早速日程を調整し、Y夫妻と一路、軽井沢へ向かいました。

不動産屋と一緒に6つの中古別荘を見て回りましたが、それぞれ一長一短ありで、これだという物件はなかなか見付かりませんでした。そろそろ日も暮れて帰ろうかという時に、不動産屋の口から「建物の価値は無いけど、敷地は面白い物があるけど…。でもリフォームをする価値のない建物は紹介しても仕方がないよなぁ…。」というつぶやきが聞こえてきました。

軽井沢の中古別荘購入

皆、疲れてはいましたが、踏ん張って最後に見に行ったものがこの別荘です。敷地付が良い(南斜面で北側道路)ことに加え、外見も中身も確かに痛んでいますが、専門家の目で見ると、基礎も建物規模に対しては問題なさそう。床下は意外と乾燥しており、これは拾い物なのではと直感が働きました。

Y夫妻も、古びたインテリアも面白いし、南側に広がる広々とした林の景色が気に入ったようで、
建物の強度さえ問題なさそうであれば、これはめっけもんかもとの話になりました。暗くなってしまったので、当日はそれ以上は詳しく見れませんでしたが、帰り道は皆興奮状態でした。
そしてその2週間後に、Yさんから「例の軽井沢の中古別荘、買う事に決めたよ!」との電話を頂きました。これが軽井沢の中古別荘リフォームの発端でした。

リフォームとリノベーションの違い

リフォーム

リフォームとリノベーションという言葉、どちらも既存建物の改装や増改築を指す言葉ですが、実は明確な違いはなく、色々な会社や建築家が違った思惑で使っている言葉のようです。

リフォームという言葉は早くから使われているので、一般名称として広く認められていますね。建築的には

  • 改築(面積は変えずに間取りの変更)、
  • 改装(内外装の模様替え)、
  • 増築(床面積を増やす工事)、
  • 修繕(設備修理や雨漏りの修繕)、
  • 耐震(地震に対する構造補強)

等が含まれていると考えられます。しかし、元のREFORMという英語は、社会制度や政治等の改良、改善を意味しています。

リノベーション(RENOVATION)は、英語では建物修繕、改善、刷新を意味し、実は日本の「リフォーム」という言葉にほぼ相当します。しかし、日本ではこちらが後発で、まだ馴染みがないので、リフォームを内装模様替え(壁紙の貼り替えや床の張替え)や設備刷新(キッチンやトイレの交換、エアコンの付け替え)として、リノベーションを全面的な改修で、新築時以上の価値を建物に持たせる計画として使い分けている会社や組織があるようです。

リノベーションをいう言葉を、リフォームを超える新しい考えとして提示したいリノベーション派の人たちがいるのに対し、リフォーム派の巻き返しもあります。構造のみを残し(時に補強も含む)、内外装や設備を全く建物として再生させる計画をスケルトン(骨組み)・リフォームと呼び始めています。
個人的にはニューヨークで働いていた時はRENOVATIONの設計をしていましたが、日本では一般の人でも判りやすいリフォームという単語を使ってゆきたいですし、その延長としてのスケルトン・リフォームという言葉や、よりデザインを重視した、デザインリフォームという言葉を広めてゆきたいと考えています。

因みに上の写真はアメリカでのリノベーション現場で、下が日本のスケルトンリフォーム現場です。どちらも変わりありませんね。