Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

サルバトーリの施工事例とサンプルボックス

世田谷区Y邸

サルバトーリ」はイタリアの加工大理石ブランドです。一般にインテリアで使う大理石は色味と柄と純度(汚れていない度合い)で評価されてしまいます。きれいな石でも、変な柄(例えば顔に見えてしまう模様)があったり、真っ白な部分にシミのような模様があったりするだけで、価値がガクンと落ちてしまう、また、掘り尽くされてしまえば終わってしまうという限界がある素材(実際には地中に大量に眠っているのですが、掘る方法がない…)であることを考えて、廃棄されていた端材を接着して木材の集成材をイメージすると分かりやすい加工大理石を作り始めたのが、このサルバトーリ社です。

上の写真の中央奥の黄色っぽく見えるのが、端材を寄せ集めてカットしたリートベルデというシリーズの加工大理石です。その他の物も、ノコ目や溝をつけることで大理石の硬度を際立たせたり、波模様をつけて柔らかく見せるなどの工夫をして、大理石素材の新しい魅力に気が付かせてくれる、優れたブランドだと思っております。

そのサルバトールの日本代理店であるインテリアズ社の弊社営業担当の佐々木さんと上司の青木さんが、サルバトーリ社に依頼したサンプルボックスをプレゼントしてくださいました!同じサイズにカットされたサルバトーリの素材が、注意書きと共に一つのボックスに入っており、持ち運びができるような仕様となっています。

右からインテリアズの青木さんと佐々木さんと僕、各務です。実は、佐々木さんは、僕が以前教えていた建築の夜学の教え子なのです!佐々木さんが入社する前から、インテリアズは愛用させて貰っておりましたが、佐々木さんが入ってからは、よりコンタクトもしやすくなり、とても助かっています。
ここから先は、これまで僕らの設計事例で、実際に使ったサルバトーリの実例をご紹介しておきます。

始めてサルバトーリに出会って、一目惚れして採用させて貰ったのが、こちらです。テレビとバイオエタノール暖炉の背部にリートベルデ柄のクレマ・ドルチェを張っています。

同じ住宅事例の玄関壁(写真右手)には、同じリートベルデ柄ながら、ホワイトカラーラの材質の板を使い、すこし硬質な感じを演出しております。

渋谷区のタワーマンションS邸の玄関に、やはりクレマ・ドルチェのリートベルデ柄を使ったことがあります。中身まで同じ素材でできた無垢材なので、出隅のコーナーでもきれいに見せることができるのも助かります。

こちらの写真はリビングの右手壁から正面の柱型まですべてをクレマ・ドルチェのバンブー柄で張っています。やはり手前の出隅部分は、小口を磨いて、石材の厚みを見せて終わりにしています。こちらはブログのみで紹介している世田谷区Y邸の事例です。

港区R邸の重厚感のある玄関ホールの正面壁には、シェブロン柄のピエトラ・ダルヴァを採用しました。

木製のフレーム、無垢の大理石やモザイク加工の大理石と並んでも全く遜色しない、存在感のある素材ですね。

外苑前C邸のテレビボードと柱型部分には、ピエトラ・ダルヴァのローを張り込んでいます。濃い灰色に塗装した木製フレームと、黒くてマットなカラーガラスと黒っぽく染色したウォールナットの扉でうまくマッチしてくれています。

こちらはブログでもホームページでも紹介していない、珍しい戸建てリフォームのお宅です。ダイニングの正面壁にザラッと表面に傷をつけたような表情のビアンコカラーラと真鍮色の目地棒を組み合わせたトラッティという柄の物を張っています。出来上がりを見た瞬間に、奥さまがとても上品で本当に気に入って下さったのが印象に残るプロジェクトでした。

奥さまの清潔で白いイメージに対して、テレビのあるリビングはご主人の立派で重厚なイメージに合わせてピエトラ・ダルヴァのロー柄です。周りの壁紙も灰色のものにして、テレビと背面壁が一体化するようなデザインです。

こちらもまだブログでは完成していない渋谷区Q邸の玄関ホールです。右手の壁にクレマドルチェのリートヴェルデを張っています。地層のように積み上がった表情が廊下正面の板張りとも合って、濃厚な空間となりました。

同じ渋谷区Q邸のリビングのテレビ背面には、ピエトラ・ダルヴァのインフィニートを張りました。一定のリズムで溝を掘っただけの素材なのですが、これも不思議な硬質感があるのです。テレビの背面から、バイオエタノール暖炉の手前部分にまでこの素材が差し込まれています。
佐々木さん、そして青木さん、大変貴重なサルバトーリのサンプルボックスのプレゼント、どうもありがとうございました!

遮音床下地とフローリング張り

千代田区M邸

千代田区M邸の現場では、遮音床下地とフローリング張りが始まっています。

まずモルタル仕上げの床スラブにクッション材付きの遮音下地を張ってゆきます。

今回は天井の高さがそれほど高くなく、置床システムを使うことは避けたかったので、このサイレントトライマット(特殊建販)を使っています。厚さ22ミリで防音性能ΔLL(1)-4(旧LL-45相当)をクリアする製品です。

サイレントトライマットの上には、フローリングを張ることができないので、12ミリのベニヤ板を上から増し張りします。

玄関前の廊下部分では、遮音下地材張りとベニヤ板張りが追いかけっこのようになっていました…。因みに、ベニヤ板の上にはガス式の床暖房マットが張られ、床暖房がない部分は隙間を埋めるダミーベニヤが張られます。

そして、ベニヤ板張りが終わったところから、フローリング張りが始まっています。ベニヤ板に赤いペンと黒いペンで記号や線が描かれていますが、それらはベニヤ板の下に床暖房が仕込まれているエリアを示しています。

フローリングはサネのオスとメスが刻まれており、それらをはめ込むように張ってゆきますが、冬と夏の湿度と温度差でフローリング材が伸び縮みするので、間に紙一枚を挟んで隙間寸法(約0.2ミリ)を調整してゆきます。

フローリング屋さんが持っていた隙間用の紙片です。因みにこちらで採用した床フローリング材は、フィンランド産のノルド(ADワールド社)のTHAR(ター)という製品を使っています。

ターはノルドシリーズの中でも、ヴンテージというジャンルのフローリングで、大きな節、割れをグレーのパテ埋めで意匠的に活かしたラスティックな仕上げとなっています。

フローリング張りは、エアコンプレッサーで動くフロアタッカー(大型ホチキス?)とゴム製のハンマーを使って張ってゆきます。

翌日に現場に寄った際には、LDKを含めてほぼ全ての床フローリングが張り終わっていました。よく見ると、床フローリングに2カ所孔が空いていますが…、

これらは床付けコンセント用の穴です。家具レイアウトを考えて、ダイニングテーブルとソファーの下に隠れる部分に床暖房マットに隙間を設けて、配線を仕込んでいました。

まだ、壁も天井も骨組みの状態ですが、床だけでも仕上がってくると、住宅感が生じるのが不思議ですね。

フローリング屋さんの横では、大工さんが何やら金物を取り付けていました。

A4サイズ程度のベニヤ板にこの金物を取り付けると…、

このような部品が出来上がります。

これは壁補強用の下地材なのです。こちらはキッチン部分の壁下地ですが、棚板やカウンターを取り付ける高さに合わせて、補強用下地が設置されています。壁をベニヤ板一枚分フカす(増し張りして壁の厚みを増す)のであれば簡単なのですが…。

図面では、展開図に四角いエリアを指定して、壁補強下地と描くだけですが、実際には大工さんがこれだけ手間を掛けて下地補強をしてくれているのを知ると、頭が下がるばかりです。

廊下からLDに入る間口と、LDからゲストルームへの間口部分には何やら取り消られています。


特注でお願いしているスチールサッシが取り付けられていました。

こちらはスチール製のFIX袖扉と引き戸を吊り込むレールの構成になっています。

窓枠にも先日搬入されていた、木製のセミオープンポア仕上げ(木目を半分残した塗装仕上げ)の枠材が取り付けられています。

また、浴室の扉枠周りには、防水処理がされていました。黒いテープ張りのように見える箇所が防水部分となります。

ハイテグラ-タイルと左官の融合仕上げ-

渋谷区Q邸

左官材メーカーのフッコーが一昨年に発売した出した、左官とタイルの融合仕上げ材のハイテグラを渋谷区Q邸で採用しました。

ホームページに、左官とタイルの融合仕上げと書いてありますが、まさに「言い得て妙」な仕上げだと感じています。

このような真ん中に溝が彫られた、ザックリとした素焼きのタイル(色は2種類)をワザと隙間を開けて壁に張り、タイル同士の隙間と溝部分に、やはりザラッとした目地材を詰め、さらにタイル上にも目地材を左官材的に上塗りしてゆくという独特の仕上げなのです。

簡単に作り方の工程を紹介いたしました。LGSと不燃のケイカル板で仕上げた壁に不燃の左官下地を塗ります。因みに、今回使ったのはバイオエタノール暖炉の上と横部分の壁となります。

そこに、背面からネットで繋がった、先ほどの素焼きタイルを張ってゆきます。

全面にタイルが張れたら、目地材を隙間に詰めながら上塗りしてゆきます。

こちらがハイテグラ専用の左官材で…、

上記の材料を水で溶いたものを責任施工(メーカーが指定した施工会社にての施工)で塗ってゆきます。

全体に左官材が塗れた所で、細かいコテを使って、タイルが顔を出すように適宜左官材を削ってゆきます。この削り度合いが、左官職人さんたち曰く、一番難しい所だそうです。

一通り仕上がった状態のハイテグラのディーテル写真です。まさに、タイルと左官の融合仕上げなことが分かりますね!

こちらは、また数日後の様子で、下にバイオエタノール暖炉を据え付けるカウンターの下地まで出来上がってきた際の様子です。
今回はバイオエタノール暖炉周りの仕上げ素材として、
・どっしりと重量感が感じられる素材で仕上げたい
・ただし、実際には下が抜けているので、軽量化が図れる素材を使いたい
・出隅コーナーまで一体で見える仕上げとした
という3点を考えてゆくうえで見付けた素材がハイテグラでした。ハイテグラはベースとなるタイルの色と形、左官材の色で多様な表情を見せることができる、ユニークな仕上げ素材なので、今後も工夫しながら使ってみたいと考えております。