Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

ダイニングのペンダント照明選び@西麻布N邸

西麻布N邸

解体工事の騒音のことで、リフォーム計画を変更しながらも、工事が進んでいる西麻布N邸プロジェクトで、ダイニングコーナーのテーブル上に吊るペンダント照明選びを進めています。

ある程度、カタログから候補を選んだうえで、担当スタッフの前田君と一緒にショールーム周りをして参りました。まず向かったのが、青山外苑前にあるヤマギワのショールームです。

今回捜しているペンダント照明は、華やかさと非日常感のあるものをとのことですが、カタログでは見えてこないガラスの質感やディテールが重要になってくるので、まずは自分たちの目でそれらを確認してきました。こちらの照明は、きれいではありましたが、照明の下部にはカバーがついており、使ってゆくうちにそこに埃が溜まることが想像できたのと、使っている金物が少々安っぽく感じたので、今回はパスすることになりそうです。

こちらも似たようなデザインですが、秋葉原にあるコイズミのショールームのペンダント照明です。

こちらもアップでディテールをみてみると、ガラスをつっているリングなどの金物が貧弱でした…。

杉並区にあるオーデリックのショールームには、前田君一人で行ってきてもらいました。

お目当てのペンダントライトはこちらでしたが…、

うねったようなガラスのデザインはとてもきれいでしたが、サイズが小さいのと、非日常感という意味では、まだちょっとデザイン性が足りない気がいたしました。

最後のこちらは、日本製ではなくアメリカのアーテリアーズのペンダント照明です。お付き合いのあるベイカー@東京が扱っている照明器具ですが、五反田のショールームには実物がないとのことで、

実物を納品したお店が恵比寿駅近くにあるとのことで、会社帰りに前田君と一杯飲みがてら、こちらのお店に伺って密かに照明器具を撮影してきました。ショールームとは違って、近寄ってディテールを確認することはできませんでしたが、非日常感覚はいっぱいの遊び心があるユニークな照明であることは確認することができました。

西麻布N邸では、ペンダントだけでなく、スタンドやテーブルランプの提案して欲しいとのご依頼を受けておりますので、上記のショールームを回りがてら、幾つかのスタンド型照明も見てきました。こちらはヤマギワにおいてあったフロスのテーブルランプです。

こちらはミノッティのショールームに飾ってあったスタンド照明です。雰囲気もあってとても素敵な照明でした。

こちらはTOYOキッチンが扱っているモーイ(moooi)の置き型照明ボールです。Nさまのお子さまがまだ小さいことと、もう一人お子さまを欲しがっていらっしゃることから、子どもの安全性も考えながら、スタンド照明は検討してゆくことになります。
久々に照明に絞ってのショールーム巡りをいたしましたが、LEDが一般化してからの照明デザインの裾野の広がりを実感することができました。

 

 

 

 

 

 

 

 

浴室と水回りのレイアウト変更@西麻布N邸

西麻布N邸

先回の西麻布N邸の解体状況をお伝えしたブログで、近隣の方々から解体騒音のことで注文が入ったことを書きました。その後施工会社にも努力して貰って、時間の制限や解体方法を変更しながら解体を続行していたのですが、やはり近隣の方々からのご了承を得ることができませんでした…。

お客さまからも、工事後は近隣として暮らしてゆく人たちからのお願いなので、無理はしないで頭を使って解決して欲しいと依頼されておりました。元々、解体工事を終えてから一か月の現調時間を取って、リノベーション工事に入るスケジュールだったので、そのひと月分の余裕の時間を先に使って、在来工法で作られていた浴室の床シンダーコンクリートの撤去工事を最小限にするために、浴室と水回りの位置をレイアウト変更する案を作って、見積りと共にお客さまのご承認を得ることができました。

リフォーム前は、浴室が2つにトイレが2つあり、その中央に長細いユーティリティーが挟まっている水回りレイアウトでした。解体工事を始める前に考えていた、リフォーム案では浴室は在来工法のバスルームBを解体して、そこにコンパクトなオーダーユニットバスを入れ、ユーティリティーはレイアウトはそのままで縮小して、洗面脱衣をゆったりと取ることと、バスルームAはシャワーブースとトイレに変更して、手前の洗面はクローゼットにするというご提案でした。

ただ、お客さまからも、浴室はなるべく大きくしたいとのご要望もあったので、変形の浴室で良ければと、中央のユーティリティーの部分にオーダーユニットバスを入れれば、変更プランのような大型浴室も実現できることをご説明いたしました。この方法だと、バスルームBの床下はダブルボウルの洗面からの排水経路分だけを溝状に斫れば良いだけですので、それならコア抜きを連続して、解体騒音を最小限にすることができることもご説明いたしました。

浴室サイズがアップして、浴槽もグレードアップしているので、工事金額はそれなりにアップしますが、解体騒音を最小にすることと、浴室を大きくすることができるので、お客さまも喜んでご了承してくださいました。

と書くと、簡単に検証できたように見えてしまいますが、実は工事をお願いしてる工務店とオーダー浴室をお願いしている東京バススタイルと、幾度かの現場検証を行った上で判断させて頂きました。現場監督の石山さんと設備屋さん、そして東京バスの真柄さんとうちのスタッフの前田君がPSをどこまで縮小できるかを見ている様子です。

最上階住戸なので、PS内には上階からの排水管は降りてきておりませんが、同じ太さの通気管が通っているので、少し移動はできますが、それでどのサイズの浴槽が入るかは中々難しい判断でした。

反対側にも通気管と給水管などが通っていましたが、給水管は動かす必要がありますが、通気管は動かさないでも何とか避けることができそうでした。

通気管と排水管の床付近の状況です。手前左側にはガス管が来ていますが、元々この個所にはガス乾燥機が入っていたので、それを新しい洗面脱衣室側に移動できるかも、大きな問題でした。

こちらは天井裏の様子です。防火区画の位置も変えるので、FD(ファイアーダンパー)の位置も変わり、梁を貫通しているスリーブが一か所しかなかったので、そこにガス乾燥機のダクトを通せるかなどの検証もしましたが、何とか通せることが判りました。

バスルームBの解体状況です。床のタイルとシンダーコンクリートを斫る前でしたので、新しく設ける洗面カウンターからの排水を、どこを通すかを改めて相談させてもらいました。

こちらは、後日浴槽を撤去後に、洗面ボウルからの排水経路分を溝斫り(ミゾハツリ)した様子です。丸型のコア抜きを連続して溝を作っていることが良く判ると思います。この解体時の騒音では、近隣の方々からの注文は幸いに入りませんでした。

もう一つの浴室だった箇所も同様にコア抜き機での溝斫りでした。こちらはシャワーブースとトイレの排水を流すので、溝の形状も少し複雑になりました。

当日は、階段周りの壁も解体されていたので、階段のリフォームについても打ち合わせを行いました。

階段の突き当りの壁をどうデザインするか、またこの階段の開口部付近にテレビ代わりのプロジェクタースクリーンを設置する予定なので、どのように作るかの打ち合わせもさせてもらいました。

解体時の騒音のことで、一旦工事がストップしてしまい、その先どうすべきかで、お客さまと施工会社と僕ら設計で悩んでおりましたが、災い転じて福となす作戦で、グレードアップした浴室や水回りを、解体騒音を最小に抑えながら実行できることになりました!

 

 

 

イサム・ノグチのアカリ製作工場見学@オゼキ

見学記

彫刻家イサム・ノグチの和紙を使った照明器具の「アカリ」を作っているオゼキの岐阜工場を見学してきました。

機械作業は一切なく、全てを手作業で作ってゆくアカリの様子をじっくり拝見させて頂きました。

工場といっても、岐阜市内の株式会社オゼキの自社ビルの3階ワンフロアが工房のようになっているのです。

流れ作業で大量生産するのではなく、一人の職人さんが一つの型に専念して、竹ひご巻きから和紙張りまでの一連の作業を全てをこなしてゆくスタイルとなっています。

イサム・ノグチ氏が存命の頃に作られた、幾つもの木製型があるのですが、それらを修理しながら大事に使ってきているそうです。

基本的には中心に木型を組んでおいて、その周囲に竹ヒゴを巻いて、和紙を張ってゆき、ノリが完全に乾いた状態で、内部の木型をバラして取り除くので、このように木型も組み合わせ式になっており、バラけないようにゴムバンドで結束されています。

最初の竹ヒゴを巻く作業が、実は一番難しいそうで、それぞれの型によって難易度が違うので、最初は簡単な型からスタートして、徐々に難しい型へと移行してゆくそうです。

ちょうど真ん中に竹ひごを糸で結んでいる個所が見えるでしょうか?この継手の個所を小さく目立たないようにすることが非常に難しいそうです。

竹ひごだけでは強度が足りないので、開口部には針金が回されています。その針金に和紙を巻き付けてから、少しずつノリを付けながら和紙を張ってゆきます。

こちらは竹ひごの密度が非常に密なEというタイプのアカリになります。

柔らかめのノリと霧吹きと竹ひごと糸とはさみを交互に使いながら、職人の皆さんが丁寧に作ってゆきますが、一日で作れるアカリは難易度にもよりますが、2つか3つ程度だそうです。

24Nというタイプのアカリの内部を見た様子です。ノリを乾かしながら和紙を張るため、この写真のように一つ置きにしか和紙を張ってゆけないのです。

もうすぐ張り終わるL7タイプの照明です。先ほどは、竹ひごが密な方が難しいと書きましたが、このL7のように竹ひごが極端に少ないもので、形をしっかり出すタイプもやはり難しいとのことでした。

きれいに張り上がって、乾燥されているアカリのシェードたちです。因みに手前にウツボのように並んでいるのはBB3/33Sというタイプのシェードです。

実はオゼキはアカリだけでなく、伝統的な岐阜提灯も作っています。同じフロアの奥では、伝統絵付師の方が、丁寧に一つ一つに顔彩絵具で描いている様子も見学させて頂きました。

オゼキの本社近くにあるアカリのショールームも拝見させて頂きました。

最近はあまり作ることのなくなってしまった古い型のアカリなども並んでおり、とても美しい空間となっていました。以前は良く照明器具として使っていたアカリですが、最近は使うケースが減っていましたが、今回再発見したことも多く、またインテリアの一部として使ってゆきたいとの気持ちを新たにしました。
今回は日米のイサム・ノグチ財団の名誉理事と理事である、ショージ・サダオ伯父に特別にお願いして工場を見学させて頂きました。オゼキの皆さま、お忙しい中での見学、どうもありがとうございました。