Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

浴室解体騒音問題で、急遽パッカー工法での解体に切り替え

青山P邸

青山P邸プロジェクトでは、解体作業が進んでいます。

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ヘアの中央に残っているのはRC(コンクリート)の構造柱です。解体前までは視線が止まっていた、右奥のキッチンエリアと左奥の廊下部分まで視線が伸びているので、随分広い空間になったように感じられます(とはいえ、左奥には来客用トイレなどが来るので、完成時にはまた閉じてしまいますが…)。

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同じ立ち位置から、もう少し左側を見ると、このように中央奥に3つの寝室が並んだプライベート廊下が伸びています。手前の天井が下がっている部分に、今回のプロジェクトのメイン空間の一つである、ライブラリーコーナーができる上がる予定です。

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こちらが、解体二日目の状況ですが、取り外した造作家具等が片づけられたことで、現場がすっきりしました。

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キッチン部分の床が解体され、設備配管の位置が判りました。左奥には室内強制給排気型のガス給湯器が入っていたので、給水給湯とガス管がそこへ向かって集中しているのが判ります。

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玄関のタタキ部分です。銀色で縦に伸びている管が見えますが、これは上下階を貫通している排水管で、動かすことができない部分です。以前、この周りに大き目のPS(パイプスペース)がありましたが、これの幅を狭めることで、玄関スペースを広くすることできそうです。

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在来工法の浴室(構造躯体に直接防水処理して、その上からタイル等を貼って仕上げられた浴室)のハツリ作業中です。浴室の壁タイル、床仕上げをこのようなハツリ機械を使って、大音響で削ってゆきます。

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ところが今回は、作業途中で近隣の方から解体騒音のことで、「もう少し静かにして欲しい」とのご依頼が管理会社経由でありました。そこで、こちらのお施主さまのPさまと施工をお願いしているスタイル・イズ・スティル・リビングと齋藤さんと相談して、ハツリ作業は表層のタイルを剥がすところまででストッ プして、そこから先の防水層を保護している保護モルタルの撤去については、比較的騒音が発生しないパッカー工法を使って進めることになりました。

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こちらが、その後パッカー工法で防水層下の嵩上げコンクリートルまで撤去した様子です。

間近で見ると、当初ハツリ機で解体下所から、保護モルタル(防水層が傷つかないようにカバーしているモルタル)、その下の黒い線が防水層、さらにその下に嵩上げコンクリート(モルタルと違って、骨材(小石)が入っているのが判ります)がはっきりと見えます。パッカー工法では、まずは周囲から連続してコア抜きして、その後中央部分はもう少し間隔をあけてコア抜きし、そこに油圧を使った破砕機(パッカー)を差し込み、孔から孔へとヒビを入れて、取り外してゆきます。コア抜き作業もパッカー作業もほぼ無音ですので、費用の面ではお施主さまにご迷惑をお掛け致しましたが、その分近隣の方へのご迷惑を減少することができました。

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こちらはパッカーを使う前の洗面所のスラブと浴室のスラブの位置関係が判る写真です。因みに、写真左上が浴室で、手前の床が凹んだ部分が洗面所の床です。

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最終的には、浴室部分のスラブ床高さと洗面所を合わせることができました。すでに洗面床には二重床が敷かれているので、判りにくいのですが。

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こちらは、プライベート廊下に面した家族用トイレの床を解体した箇所です。こちらのトイレは、サイズを拡大して、大き目の手洗いカウンターを設け、また収納だった箇所に洗濯機を移動(かつてはキッチン内にありました)するのですが、スラブの段差があるので、排水経路を工夫する必要がありそうです。

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今回リフォームしているお宅は1階で、解体時の状況からも、当初に地下駐車場の点検口から見上げた際にも、スラブを貫通して排水管が下階の天井裏を通っていたので、念のためにリフォーム中のこちらの現場の天井裏も覗いて、上階からの配管が天井裏を通っていないかを確認いたしました。
幸い、上階からの配管は何も通っていませんでした。ニューヨークのマンションで、この規模のほぼスケルトンリフォームをする場合は、当該階に関係しない設備配管でも、工事中に交換するよう管理組合から指導されるのです。

解体着工&現場でのディテールスケッチ

一番町A邸

先日の部分解体調査で、浴室と洗面の位置交換リフォームが可能なことが判明した千代田区一番町A邸で、お施主さまから工事着工のGOサインが出て、解体に取り掛かりました。

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一般にスケルトン(マンションの基本骨格であるコンクリート躯体)状態まで解体したリフォームをスケルトンリフォームや(全面)リノベーションと呼んで、より高度な技術ともてはやされる傾向がありますが、実際には使える部分を残しながら不要な部分だけを解体した工事の方が技術的には難しいのものなのです。

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こちらの建物は築年数が12年と比較的築浅なので、使える部分はなるべく再利用することで、コストダウンも図っております。因みに、この規模のマンションであれば、壁下地・天井下地ともにLGS(軽量鉄骨)で作られていることが多いのですが、こちらではなぜか木製下地で作られていました。

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壁で仕切られていたクローズド型のキッチンがあった部分は、間仕切壁を撤去して、キッチン本体も取り外してもらいました。

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こちらが取り外されたキッチンユニットです。ガスコンロは汚れも酷かったので、交換予定ですが、その他のシンクや食洗器、収納ユニットはまだ十分に使える状態だと判断していたので、きれいに取り外して、養生保管してもらい、クリーニングをしたうえで、再度取り付けなおしてもらう予定としています。

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こちらが水回りを配置転換することになったかつての浴室と洗面の場所です。こちらについては、設備配管のやり直しが必要なので、ほぼスケルトン状態まで解体して貰いました。

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事前の部分解体調査と管理組合が保管していた竣工時の図面から推察していた通り、スラブが一部さげられており、排水管の位置も問題がないことが判り、当初の予定通りに洗面床仕上げとほぼフラットな浴室を設置することができそうです。因みに、コンクリーと床に記された墨(壁の中心を示す線や描き込み)は、竣工時のものです。

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床に座って、かつての天井裏を見上げた様子です。こちらは当初からスペースの余裕があったので、問題がなさそうなことが判っていましたが、ダクトの内部の汚れもあまりなく、そのままダクトルートを変更すれば、再利用できることも判りました。

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かつての洗面の場所に浴室を設ける上で、実はもう一つ懸案になっていたことがありました。サッシの内側が木製で作られており(外側はアルミ製です)、そのまま浴室内にそのサッシが面するようにすると、湿気でサッシが傷んでしまうことが心配されていました。オーダーで作るユニットバスを東京バススタイルにお願いしていたので、現地を見て貰ったうえで、浴室用のインナーサッシを考えたスケッチディテール図面がこちらです。

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リフォームキューの現場監督の富田さんと東京バスの眞柄さんがインナーサッシの取り付け方を現地で打合せしている様子です。元々のサッシが、外開きにも内倒しにも対応するドレーキップというタイプの変則的なサッシ(自然換気には内倒しで、窓清掃には外開きで対応するタイプ)なので、どちらでも使えるように、ワンサイズ大きめのインナーサッシを取り付けることになりました。

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こちらはリビングの既存床下地の状態です。根太式の置床で、下部には断熱材が敷かれているタイプでした。

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現場監督の富田さんが、職人さんたち全員が床の組み上げ方を共有できるように壁に描いてくれたスケッチです。フローリング仕上げのリビングダイニングと、タイル仕上げのキッチン・洗面・廊下の床仕上がりをフラットにするためには、床下地の厚みを3ミリ変えておかないといけないことがこれを見て分かるのです。

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他にも、僕等設計側が伝えた情報は、拡大コピーした図面と共に、特に重要だと考えられる情報は、その場所ごとに赤いマーカーで壁にメモ書きされていました。因みに、こちらの寸法はキッチンの冷蔵庫やトール収納の幅を示した情報です。
設計側がいくら図面で指示しても、うまく職人さんたちに伝わらないこともあるのですが、現場監督が情報を整理して、それぞれの職人さんたちに必要な情報をタイムーに伝えてくれているととても安心することができます。

 

「世界にひとつだけのプレミアム・リノベーション」発売!

千代田区一番町Y邸

僕らのこれまでのマンションリフォーム&リノベーションの実績を纏めた書籍「世界にひとつだけのプレミアム・リノベーション」(エクスナレッジ社)が8月3日から発売になっております。

表紙

全頁カラー印刷で、とにかく写真が豊富なリノベーション事例集となっています。
因みに、表紙は千代田区一番町Y邸のリビングの写真です。

リビングダイニング-7

大きな写真(ほぼ全て自分で撮影した写真ばかりです)に簡単な説明文、そしてリノベーションのポイントなっている図面(平面やディテール)、そして写真に写っている仕上げ材や家具、備品等のリストまで掲載しておりますので、リフォーム・改築だけでなく、インテリアの本としても、参考にできるのではと思っております。こちらは六本木N邸のリビングです。

リビングダイニング-12

ブログでは掲載しておりますが、カガミ・デザインリフォームのHPにはまだ未掲載のプロジェクトも、こちらの本では惜しみなく紹介しております。こちらは中央区のサービス付き高齢者向けアパートメントS邸のリビング事例です。

キッチン-6

リビング・ダイニング、キッチン、玄関、廊下、寝室、その他諸室と項目分けして、それぞれに特徴のある事例を掲載するスタイルの本となっています。キッチンでは、この写真の南麻布K邸のような、超大型キッチンから、よりコンパクトなキッチンまで幅広く紹介しております。

水廻り-12

トイレでもバリエーションある事例をなるべく多く掲載するようにしております。

建具

全てが事例紹介の写真だけでは、退屈になるので、建具や家具、照明計画等のコラムやビフォー&アフターを比較できるページも設けています。

-Before&After-4

読者対象として、高級マンションのリフォーム&リノベーションを検討していらっしゃる方、ハイエンド・インテリアに興味がある方、これから高級リフォームに取り組みたいと考えている若手建築家、家具やファブリック類の実例を色々と見てみたいインテリア・コーディネーターの方々などと想定して、僕らのこれまでの取り組みを紹介する本となっています。
一般本屋でもインターネットでも、税込2,592円で絶賛発売中ですので、是非本屋で手に取ってみてください!出版に関連して、セミナーやサイン会(誰がサインを欲しいのか疑問ですが…)の企画も考えておりますので、その節には是非ご参加頂ければ幸いです。