Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

「ばか棒」と「さや管ヘッダー」について

成城Z邸

成城のZ邸では、遮音二重床の床下地が作られていました。

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先回の記事では、際根太のことを説明いたしましたが、メーカー側がうたっている遮音性能を確保するためには、すべてをマニュアル通りに作ってゆく必要があります。基本は防振支持脚の上に、パーティクルボード(通称パーチ)を敷いて、メーカー指定のボードを敷いて、必要に応じて床暖パネルを載せて、仕上げのフローリングを張る構成となっています。大工の内原さんが張っているのは、パーチ同志を継ぎ目を塞ぐビニールテープだそうで、これもマニュアルに指示されているものだそうです。

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そして下のパーチと互い違いになるように石膏系不燃制振材(ケイ酸カルシウム板のようなもの?)を敷いている様子です。接着剤が継ぎ目に入らないこともマニュアルに指示されているのでしょうか…。今回使用したのは万協フロアーの製品ですが、ご興味がある方はインターネット上に公開されている簡易マニュアルをご覧ください。

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床を作っている大工の内原さんが大切そうに持っている道具を見せて貰いました。パッと見ても良く分からないでしょうが、実は床レベルを決める上ではとても重要な定規になる道具だそうです。横に書いてある「すてない」、「たいせつ」というメモがその重要さを物語っていますね。

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事前にレーザーで墨出しをしてある床仕上げレベルから、どの厚みのどんなボードを張るかを実寸で示したもので、大工用語では「ばか棒」と呼ばれているものです。計算ができない人(つまりバカ?)でも間違わないように、シンプルに寸法を記した物差しなので、そのような名前がついているそうです。

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こちらの現場では、大工は内原さん一人で工事を進めて貰っていますが、広いお宅なので、部屋ごとに進度が違っているので、人つの現場で色々な作り方を勉強することができます。

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まだ床が張られていないキッチンでは、給水と給湯用のヘッダーが置かれていました。色のついた管はさや管と呼ばれるもので、二つを合わせてさや管ヘッダー方式と呼ばれる給水システムです。従来はメインの給水管から枝分かれ状に分かれていましたが(スター配管ともいいます)、ヘッダーという部材に水を集めて、そこから分岐させることで、各部屋で水を同時使用した際、均等に水が供給することができるというシステムです。さや管は、CD管とも呼ばれる部材で、その中に架橋ポリ管を入れているサヤになっています。後日、さや管の中の架橋ポリ管を交換することで、メンテナンスや後々のリフォームが楽になるということで一世を風靡いたしましたが、実際には後日のリフォームが面倒なことと、給水箇所が10カ所程度の住宅では水圧の軽減もほとんどないこと、また費用が余計に掛ってしまうことなどから、ここ数年一気に廃れてしまった工法です。

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今回は折角部材が揃っているので、さや管もヘッダーも再利用することになりました。

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奥の寝室側の状況です。こちらは床下地も完了しており、壁のボードも張られいている状況です。床下地が出来上がると、廊下のフローリングヘリンボーン張りに入るとのことで、非常に楽しみです。

 

大判大理石調タイル・フィアンドレの現場搬入&取付け

原宿K邸

原宿K邸のキッチン正面壁に張って、キッチンの見せ場としたいと考えていたイタリア・フィアンドレ社の大判タイル(3000ミリ×1500ミリ)が現場に届いたとの連絡があったので、見に行って参りました。

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イタリアで希望のサイズにカットして貰ってから日本に輸入して貰う方法と、日本に大判で持ってきてもらい、日本のタイル工場に入れて貰って、そこで切ってから現場に運ぶ方法、そして、大判のまま現場に持ってきてもらい、現地できる方法の3通りがあるのですが、今回は現場寸法の確定のタイミングと輸入のスケジュールの問題、そして費用的なことも考えて、トラックで現場正面まで大判のままで運んで貰うことになりました。

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パレット状でトラックに積まれただけで来るので、工事をお願いしている辰の方で、ラフタークレーンを手配して貰いました。階段やエレベーターのサイズ的な問題で、大判のままでは現場に入れることが出来ないので、マンションの横にあるコインパーキングを2台分借りて、カット作業をする場所を確保して貰いました。

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こちらが指定した図柄通りにテープを張って、墨出しして貰い、それにそってカットして貰っている様子です。現場監督の田所さんは、粉塵が飛び散らないように掃除機を横で構えてくれていますね。

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無事カットされた大判大理石調タイルを現場に入れた様子です。これから正面右奥の壁にこのタイルを張ってゆきます。因みに、今回はブックマッチ(開いた本の状態のように、模様や柄を左右対称に組み合わせる方法)で柄合わせをするので、2枚の左右対称の柄のタイルを、それぞれカットして貰って張ることになります。

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ガスレンジの正面壁に張る予定なので、レンジフードのダクトが背面に抜ける箇所には、カッターでこのような穴をあけて貰っています。少し大きめの孔ですが、特注のレンジフードで孔の周りは隠れることになります。

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一枚ずつ設置場所に仮置きしてゆきます。レンジフードのダクト孔、上部から伸びてきているレンジフード用の電気配線用穴もピッタリです。壁の下部には、タイルを乗せるための横桟を事前に固定しているので、仮置き作業もやりやすいです。

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辰の夏井さんと各務で押さえている間に二枚目も仮置きしました。目地寸法も柄も問題がありませんでした。

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次は、タイル屋さんが壁全面に接着剤を塗ってゆきます。因みに接着剤は合成樹脂系アクリルエマルションのものを使っているそうです。

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タイルを張った後は、背面壁とタイルの間に上手く接着剤が行き渡るように、バイブレーション工具を使って軽い振動を与えてゆきます。

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こちらが、その工具インパクト・ハンマーです。

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無事タイルが張り終わりました。今回はスタトゥアーリオをブックマッチに張って貰いましたが、とてもきれいな出来で、僕らのテンションも上がってきました。

 

 

解体でセミ・スケルトン状態になった成城Z邸

成城Z邸

リフォームデザインがほぼ決まり、見積りもOKを頂いた成城Z邸では、工事契約が無事締結され、管理組合からの承認が貰えたので解体工事が始まりました。

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解体が終わり、清掃も済んでほぼスケルトン(骨格)状態にもどったお宅で、お施主さまのZさまとリフォームキューの担当森井さんとの打合せを行いました。ちなみに、スケルトンとは生物学的な用語で「全体的骨格」を意味する言葉だそうですが、マンションリフォームでは、皮膚ともいえる内装材、筋肉ともいえる間仕切壁、血管ともいえる配管やダクト類、内臓ともいえる設備機器類をすべて撤去して、コンクリートの骨組みだけが残った状態まで戻した(解体した)ことを指します。
実際には、こちらのお宅はまだ築浅なので、床には配管類が残っていますし、天井裏のダクト類も使えるものは残してあり、間仕切壁の下地LGSも壁位置の変更がない箇所については残してもらっていますので、正確にはセミ・スケルトン状態ですね。

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床に見えているのは、ヘッダー配管された給水(水色の管)と給湯(赤色の管)です。築10年のいわゆる築浅(ちくあさ)マンションなので、さや管ヘッダー方式が採用されており、配管そのものも架橋ポリが使われており信頼性も高いので、水圧を確認して問題がなかったので残すことになっています。

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こちらに灰色に見えているのは排水管です。薄い灰色の管は耐火二層管(別名:トミジ管)と言われれているもので、その先少し残っている濃い目の灰色の管は硬質塩ビ管(VP管)です。このお部屋はロビー階にあり、天井高さが高く、玄関から階段なしで直接アプローチできるようになっていますが、雁行型のマンション構成のため、排水管がスラブ下で竪管に結ばれるスタイルとなっています。コンクリートスラブが上下階の防火区画になるので、区画貫通する配管類は横引きされた長さが1m以内については耐火二層管にすることとされています。

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こちらは天井裏の様子です。雁行式なので、天井スラブに吹かれている断熱材(黄緑色のボアボアしたもの)が梁を超えて、部屋うちまで入ってきているのが判りますね。ダクト類も非常にきれいに配管されているのが判りました。ダクトの内部も目視で覗いて汚れがある箇所については高圧ブロア清掃する予定でしたが、前の方が殆ど使っていなかったようで、フィルター類の清掃だけ問題がなさそうだとのことになりました。

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天井で写真左下から梁に平行に手前まで伸びてきているのが天井カセット式エアコンの冷媒管とドレイン管でした。天井カセットの位置は、天井デザインにあわせて付け替えることになっているので、エアコン室内機は取り外してもらっています。

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大きなリビングダイニングがセミ・スケルトン状態になった様子です。天井高さが梁下で2800ミリほどあるので、スケルトン状態になると、写真では却って部屋が狭く見えてしまっていますが、実際にはとても大きな空間です。

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LGSの壁や配管位置のチェックをお願いしているお施主さまのZさま、リフォームキューの森井さん、うちのスタッフの竹田さんたちの背丈と天井高さを見比べると、空間の大きさが判ってもらえるのではないでしょうか。

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こちらは北側にかつて3つのお部屋が並んでいたプライベート空間です。真ん中に残った上下階を貫通する設備竪管を除いて、間仕切壁は撤去されています。

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翌週からはLGSの下地工事が始まりました。大工の内原さんは、もともとがLGS屋さんだったそうで、下地作りから大工造作工事までを担当してくれることになりました。

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設備配管工事とLGS工事が進む現場に、Zさまも何度も現場視察に来てくださいました。現場でPSが縮小できることが判った来客用トイレは、広さを活かしてレイアウト変更をすることになりました。

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プライベート空間の洗面や書斎、寝室についても、現場で展開図を見ながら確認してゆきました。大工の内原さんたちは、お施主さまが現場にくることが判っている際は、いつも材料を片付けて清掃してくれるので、とてもきれいな状態で現場打合せができています。

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LGS工事が終わると、遮音床下地工事です。こちらは際根太(キワネダ)の施工状況です。マンションリフォームで良く使われる遮音床の二重床工法は、床の荷重を点で支える防振ゴムのついた支持脚部材、面で床を支える床パネル部材、そして壁際から音が上下階に伝わるのを防ぐ際根太(防振システム根太)の3つが揃って遮音性能を確保する仕組みとなっています。以前は置床といって、際根太で床位置を固定して、支部部材そのものはスラブ上に置くだけのシステムが主流でしたが、壁際から音が伝わりやすいことや、地震で支持部材が動いてしまうことなどから、現在は際根太は壁と隙間を空けて、支持部材を接着剤で床スラブに固定する固定床システムが主流となっています。

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床パネルが敷かれつつある中、設備配管も設計図通りにレイアウトされていました。