文京区S邸では、超大型のキッチンを計画しています。どのくらい大きいかというと、アイランドカウンターが4130ミリ×1500ミリ、背面のL字カウンターの長さが5120ミリと1380ミリで、その中にビルトインの冷蔵庫と冷凍庫とワインセラーとオーブンが組み込まれています。
Sさまは色々なウェブサイトやインテリア本、ピンタレストなどを見比べているうちに、どんなキッチンがご自宅用にベストなのか分からず、少々迷子になってきているようでしたので、サービスで素材と色味の検討用CG(コンピューターグラフィックス)を作ることになりました。扉は濃いグリーングレーかライトグレーかナチュラルなオーク、カウンターは白い大理石か黒い御影石、それらをどのように組み合わせるのが良いかを順列組み合わせ式に考えて4つのパターンを、弊社のCG番長こと副所長の前田君に頼んで作って貰いました(通常はCG作成を別途費用をお願いしておりますが、今回は工事費だけでも1億円を軽く超える大型プロジェクトなので、サービスでLDKだけのCGを作ることとしました)。
Sさまご夫妻が打ち合わせに事務所に来てくださった際のCG打合せの様子です。実はCGを作ったことは内緒でしたので、まず打ち合わせ室に前田君がいることに不思議な様子をしていらっしゃいましたが、その後前田君がCGを動かしながらお見せした所、食い入るように画像に見入って下さっていました。
通常、他の事務所でのCGは完成したものをプリントしてお渡しするようですが、前田君はザ・ライブラリープロジェクトでご一緒しているTAGKENの田口さんからの直伝の5Dレンダーソフトを駆使して、リアルにその場でSさまご夫妻のリクエストを聞きながら色味を変えたり、アングルを変えたりしながら見て頂くことができました。
まずは4種類のパターンを事前に作っていたものを見て頂きました。こちらはアイランドはカウンターが白大理石で扉が農灰、背面ユニットはカウンターが黒御影石で、扉はライトグレーものです。
キッチン通路に立ってみるとこのような雰囲気になります。ダイニング側から遠目でみていると判らない取っ手などのディテールが見えてきますが、ブロンズ色の取っ手は嫌だとのご意見を頂きました。
通路の反対側から見たアングルです。床のタイルはどのようなものを想定しているのかとの質問で、仮にベージュ色のタイルを敷いていることをお伝えしたところ、床材は重要だからもっと考えなければとのことになりました。コンロ前のタイルも要検討事項となりました。
扉材の色味を変えて、視点も変えながら色々と見比べてゆくうちに、一番良いと思われるデザインに収束してゆくことができました。
こうやってCGの効能をブログで説明すると、さすが文明の利器、このCG技術があれば素人のお客さまでも判断しやすいから、どんどん使うべきだと思われそうですが…、
実はCGを作るのは中々に大変な作業なのです。デザインする側としては、きちんと寸法が判るキッチンの平面図と展開図を用意する必要があります。
ビルトインの設備器具などは全てのスペックを指定して、CGを作る前田君に情報として渡す必要があります。
展開図の扉材なども、色味を付けて置くだけではCG化しにくいので、イメージ写真や素材を撮影したデータを用意しておくのです。
まずは素材は無視して、立体として変な所が無いかを確認したうえで、
4通りのCGを作るので、混乱しないように、それぞれの素材と色味を整理したシートで説明して、それぞれのパターンを作って貰うという面倒な手続きがあるのです。前田君も自分で設計しているプロジェクトであれば、時間が空いた時にCGの準備をすることができるそうですが、自分が担当していないプロジェクトのCGを作るのはかなり大変だったとのことでした。
キッチンCGを作る際に、リビングダイニングの他の部分を単純化したCGも作って貰っていたので、Sさまご夫妻に見て頂きました。当初は木の仕上げで温かみを出そうと考えていたダイニングですが、このCGだとモクモクしいので、木仕上げをもう少し減らして、絵を掛ける壁を作りたいとのことになりました。
もとのキッチンダイニング側は、キッチンが無くなるとかなり広がって見えるので、テレビ壁をもう少し工夫することと、正面左側の横長窓をデザイン的にどう処理するかが課題として見えてきました。
最後のこのCGは、打ち合わせの内容を反映して作り直してもらったものです。ペンダント照明も変わって、色味や細かいディテールが色々と変わっているのが判るでしょうか?
CGの準備を進めてくれた前田君、そしてCGのための資料作りを頑張ってくれた竹田さん、どうもお疲れさまでした。