Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

乾式二重床の際根太とLGSと木製の複合下地組など

赤坂S邸

無事解体工事が終わった六本木S邸の現場では、遮音乾式二重床システムが組み上がり、LGSの壁下地作りが始まっていました。

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毎回、このような工事現場の写真をブログにアップしていると、「結局はどこの現場でも同じようなものではないですか?」と聞かれることがあります。確かに見た目はどちらの現場でも似たようなことが起こっていますが、やはりそれぞれの現場で特殊な事情や色々なレベルでの問題も発生しているのです。
ちなみに、今回の六本木S邸の現場では、以下のことが通常とは違っており、現場打合せを重ねながら解決しています。

  • 耐震ダンパーがついた特殊な構造の建物であること
  • 同時に、10件以上のリノベーション現場がマンション内で動いており、エレベーター確保だけでも大変なこと
  • 元々の作りから、天井裏を走っているダクト経路が複雑で、それに合わせた天井の作りが難しいこと

等です。以下、順不同ですが、現場で工事をお願いしているリフォームキューと打合せ、確認していった事項を書いてゆきます。

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墨出し寸法の確認は、毎回解体工事後の重要なイベントです。とはいえ、乾式二重床の場合はコンクリートのスラブ(床板)に細かく寸法を墨出ししても、二重床で隠れてしまうので、スラブ上での墨出しと二重床のベニヤ下地上の墨出しの二段階での寸法確認が必要になります。

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こちらは搬入設置されたオーダースタイルのユニットバスの鏡面ステンレス・アングルピース(通称アンピ)と洗面側の枠や壁との取り合い確認です。通常オーダーユニットバスは白いビニールでカバーされたアンピまでしか作ってくれないので、そこから先をリフォーム本体工事側でどう処理するかを決めなければなりません。処理方法としては、木枠を取り付けるか、ステンレス枠を作るか、壁として塗装またはクロスで仕上げるかの3通りが考えられます。今回はもっともオーソドックスな木枠取り付けで仕上げることになっています。

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ちなみに、こちらが設置された東京バススタイルのオーダーユニットバスの箱です。左側の白いビニールでカバーされた箇所がガラスの扉とガラス壁で、右側がタイル壁の裏側になります。ベニヤ板を貼ってある部分は内側から将来的に取っ手などを取り付けられるように下地補強されている個所になります。

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外側はチープに見える(?)オーダーユニットバスですが、内側はこのようにシックに仕上がっていました。

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床に転がっているこちらの部材は、遮音乾式二重床システムの独立際根太(きわねだ)部材です。遮音性能を高めるための二重床システムも、マンションでの採用が増えて、騒音問題が社会的に取り扱われる回数も増えるとともに研究が進んできており、そのシステムも変わってきました。以前は際根太(壁際で二重床を支える部材)は壁に固定されていましたが、それではこの際根太から壁に振動が伝わってしまうとのことで、現在は壁から独立際根太を浮かせて(少し離して)床に接着剤で固定する方法が主流になってきました。

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このように、床スラブに梁等での段差があっても、独立際根太と固定床脚を段差に応じてつなげてゆくことで、遮音性能が確保された乾式二重床をくみ上げることができるのです。

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壁間仕切りのLGS下地は床スラブから直接立ち上がり、その壁下地を挟んだ形で、乾式二重床が組み上がってゆく様子です。壁下地に二重床がくっつかないように、隙間にスペーサーが挟まれているのが見えるでしょうか?

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壁と天井の下地(最終的にボードを張って壁や天井とするための骨組み)材は基本的にはLGSで組んでもらっていますが、部分的には木製の下地材も混ぜてくれています。特に細かい寸法調整作業が多く発生する扉の枠廻りにには木材が多く組み込まれています。工事を担当していくれている大工の内原さんは、元々がLGS職人だったのが大工作業もできるようになったので、LGSと木の組み合わせがとてもスムーズにできています。

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写真は現場に運ばれていた枠材です。これらは事前に工場で集成材で作られた枠材やカーテンボックスで、LGSに組み込んでゆくのです。

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引き込み扉(壁のポケット内に扉を引き込むタイプの引き戸)の枠廻りは、特に作り方が複雑なので、このような複合的な作りになっています。

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ブログの最初にダクト経路が複雑だとのことを書きましたが、こちらがスケルトン状態の天井を見上げた様子です。写真中央に左下から右上に3本のダクトが通っていますが、これらがキッチンの給気と排気に、トイレの排気ダクトです。さらに写真左端にも浴室からの排気ダクトが通っています。浴室からの排気ルートは、この部分の天井を高くしたいので、3本のダクトが通っている個所に移動を検討しています。

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キッチンの排気もガスコンロの場所が変わったので、このようにダクトを大きく曲げる形で、天井の形が変にならないように調整して貰っています。ダクトには火災予防の点からも、内部&外部結露の問題や振動による音の問題からも、ロックウール断熱材でカバーしてゆく必要があります。

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職人さんが切っているのが、そのロックウール断熱材の基材です。直線部分を巻くのは簡単ですが…。

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曲がったダクトのコーナー部分は、このように三角形に切ったロックウール材を扇状に繋げてきれいにカバーしてゆくのです。職人さんの丁寧な技に感服です!

 

 

 

 

解体作業で現れてきた問題への対処方法について

原宿K邸

マンションオーナーの原宿Kさまのお宅の解体工事が始まりました。

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解体が始まったと同時に、工務店のの現場監督の田所さんから幾つかの問題点が挙がってきました。

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  1. キッチンを予定している部分に逆梁があったこと
  2. コンクリートのにジャンカ等であまり良くない箇所がいくつか見つかったこと
  3. 壁裏でサッシからの水漏れが見つかったこと、等です。

僕らに取って一番大きな影響があるのが、なんといっても1番の逆梁でした。当初は、この部分に冷蔵庫を置くレイアウトでキッチンプランを検討していたので、それを根本から見直す必要が出てきました。

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2と3については、ある程度予想はしていたので、早速Kさまご夫妻に現場に来て頂き、状況を説明したうえで、補修計画を進めることになりました。

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1については、奥さまとここまで練り上げてきたキッチンプランを作りなおすことになるので、奥さまにも現地にて状況を説明させて頂きました。もっとビックリなさるかと思っておりましたが、「災い転じて福となす」の気持ちで、「これをキッチンを考え直す良いキッカケと考えて、より良いキッチンプランを作りましょう」と、とても前向きなお話をしてくださいました。

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こちらは床材をはぎ取ったことで現れた、床下に隠されていた給水給湯管、排水管とガス管です。右側に見えているオレンジ色の柱は、20年ほど前に大規模リフォームをなさったときに、壁を撤去した代わりに差し込んでいた鉄骨柱だそうです。
実は、リフォーム計画がある程度進んだ時点で、この鉄骨柱のお話を伺った際に、竣工時の図面にきちんとした情報があまり乗っていなかったことや、エアコンなどの配管のためにスリーブが色々な箇所に開けられていたことなどから、工務店とも相談して解体工事とリフォーム工事を切り分ける方針で工事を進めるようにスケジュールを組んでおりました。つまり、解体した状況によっては、リフォームプランが変わる可能性もあることを考慮して、リフォームプランを練りなおす時間を確保していたのです。

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給水管が床スラブを斫ったか所を通っていたり、

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図面では分かっていなかった浴室の排水管経路やスラブとの高さ関係を、浴槽撤去時に確認したり、

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上階の部屋の排水管が貫通した天井裏に、以前の水漏れでカビた箇所が見つかったりと、問題が色々と現れてきましたが、それぞれを工務店と相談しながら補修計画と見積りを作って、すべて承認して頂いて補修した後でリフォーム本体工事に取り掛かる予定なのです。

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解体工事がすべて終わった時点で、現場をきれいに清掃してから改めてお施主さまと問題点を見て頂きました。お見積りが変わる可能性がある個所や、プランの練り直しが必要な箇所をご説明させて頂きました。

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ジャンカや水漏れについては、早急に直してほしいとのことで、すぐに補修工事を始めて貰いました。

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床スラブのレベルもまちまちで、どこを基準に床仕上げ高さを決めるかも難しく、また引き戸を多用したデザインだったので、床の水平性と壁の垂直性が重要になってくることを考えて、壁と引き戸がくる位置の床にはセルフレベリング材を使って、床補修も行って貰いました。

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コンクリート躯体の補修工事が終わり、セルフレベラーで床スラブも補修された後の現場の様子です。

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あとは何とか、このキッチン部分に現れた逆梁(写真左手の壁の床付近に見える出っ張り部分)を避けながら、キッチンプランを練り直す問題だけが残りました…。

 

 

 

 

タイル張り・造作家具&再塗装建具の取り付け@白金台P邸

白金台P邸

床のフローリングが張り終わった白金台P邸リノベーションプロジェクトの現場に、今度がタイル屋さんが入ってきました。

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キッチンと大型パントリーが一体化した空間の床タイルは、大理石柄が美しいヴィストーン(平田タイル)を斜め貼りして貰っています。

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トイレの床と壁には、同じヴィストーンをイモ目地で張り伸ばしてもらっています。造作家具でデザインした手洗いカウンターと鏡の額縁も取り付けられていました。

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ハーフユニット浴槽を使った浴室の壁には、大理石柄ボーダータイルのストーンボックス(アドヴァン)の2色を張り分けて貰っています。

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テンパーガラス(強化ガラス)の扉はまだですが、ステンレスサッシがとりついた浴室は、タイル張りの効果で高級感がグンと出てきました。

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順番は前後しますが、浴室手前の洗面脱衣室には、ダブルシンクの洗面カウンターがとりつきました。奥の廊下突き当りにもリネン収納があり、収納量も十分なスタイリッシュな洗面+浴室になりそうです。

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洗面カウンターの上には、やはり造作家具で作ってもらったメディスンキャビネットがあります。扉裏にLEDの間接照明を仕込んでいますが、電圧を落とすためのトランス(変圧器)が必要となるので、写真のような位置にトランスを隠す収納を作ったもらっています。

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キッチンと背面収納も取り付けられました。キッチンの吊戸棚下には、使えそうなスペースがあったので、キッチンパネルを工夫して貰い、小物を置けるニッチ収納を作ってもらいました。

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リビングには2つの造作収納が設置されます。一つ目は写真左側に見える柱形を覆うように設置された、オーク白拭き取り仕上げの飾り棚です。2つ目が写真中央右のカウンター収納です。

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写真では分かりにくいのですが、室内のシックなデザインとマッチさせるように、アールデコ的なデザイン様子を取り入れています。

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天板にはポルトロという高級大理石を採用しています。イタリアのラ・スペッツィア近郊で採れる大理石だそうで、写真のような黒字に金色の柄が印象的なとても美しい大理石です。

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工事中には、収納の建具を再塗装するために、建具が取り下げられていましたが…

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木目を残したセミ・オープンポア仕上げで、黒く塗られた建具が戻ってきました。

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建具に使われていたヒンジやレバーハンドルなどの金物類もヴィンテージ感を活かす貴重なアイテムなので、すべて軽く磨いた上で再利用して貰います。

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まだ、埃が待っているので、シックさが十分に伝わらないと思いますが、玄関ホールの雰囲気がガラリと変わりました。

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同じように黒く塗られた両開きの扉が廊下からリビングへの入り口にも吊り込まれました。

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同じタイミングで、クラシカルでシックさを演出するもう一つのアイテムの壁付けブラケット照明も取り付けられました。

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リビングのテラスに面したアルミサッシには、プリーツ網戸を隠す木製の方立(ホウダテ)が立てられました。アルミサッシの軽さが、この方立を取り付けることで、奥行と重厚さを演出しようと考えています。