Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

マンションリノベーション 解体事前調査

白金台S邸

港区白金台の高級マンションリノベーションの現場がいよいよ始まりました。

マンションリノベーションでは、

  • 何を残して、
  • 何を移動して再利用して、
  • 何か壊して捨てるのか、

慎重な判断が必要になります。

解体工事に先立って工事業者と一緒に、それらを記したテープを貼って周りました。捨てるものは赤いテープで、一度取り外して後で再利用するものは青いテープで、そのまま同じ場所で使うものは白いテープで、印をつけてゆきます。

写真のトイレ周りだけでなく、壁や床、建具やスイッチ、”金物類”から、天井噴出し口、大きな造作家具や”キッチン”にまで、全てに判断を下しながらテープを貼りました。

設計者としてはは、テープを貼ったものと同じ内容で、解体図を用意します。

  1. 床について、
  2. 壁・造作について、
  3. 天井について

の三枚の解体図を作り、現場で判断した内容を落とし込んで、解体業者の職人さんたちが間違えないように、二重に準備をしておきます。

マンションリフォーム解体指示図

図面も、白黒やハッチだけの図面では混乱しやすいので、写真のように、カラーできちんと見分けられる図面を用意して、現場の壁に貼っておきます。

いよいよ明日から解体工事の開始です。

スケルトン状態の別荘

伊豆OK別荘

静岡県伊東市の個人別荘リフォームプロジェクトの工事も始まり、解体情況を確認に行って参りました。
リフォームではスケルトンという言葉が使われますが、建物を人間に例えると、

  • 皮膚といえるのが内装仕上げ材、
  • 筋肉といえるのが下地材や断熱材、
  • 血管といえるのが電気配線や給排水の配管、
  • 骨といえるのが構造体となります。

これらのうち、内装仕上げ材や下地材、断熱材や電気配線、給排水配管までを解体して、構造体だけになるまで裸にした状態を、
リフォームではスケルトン(骨組み)状態と言います。この状態まで内部を解体してから工事を始めるリフォームをスケルトンリフォームといいます。

 別荘リフォーム スケルトン解体

床と天井だけでなく、間仕切りや壁のボード、お風呂やトイレ、キッチンまで全て解体した裸の状態となっているので、窓を開けると風がサァーと通り抜ける気持ちよい空間になっていました。スケルトンになると、人工的に調整した空調や、照明などがなくなるので、その建物と周辺環境の関係が、素な形で見えてくるのかも知れません。

浴室の解体状況

スケルトンになっていることで、骨組みの健康状態を確認することが出来ました。想像以上に構造材はきちんとしており、腐ったりシロアリにやられている箇所は見受けられませんでした。また、浴室も解体してあったので、新しい浴槽の寸法や、壁や設備との取り合い寸法の打合せを行うことができました。他に新しいサッシの取り付け方法や、設備配管のルート、床暖房の工事手順などを打ち合わせて参りました。

SUMIKAプロジェクト見学記

見学記

東京ガスが各世代を代表する著名建築家四人に実験的住宅とパヴォリオンの設計を依頼したという宇都宮のSUMIKAプロジェクトを見学して参りました。建築家の伊東豊雄氏、藤森照信氏、西沢大良氏、藤本壮助氏が

  • プリミティブ(原始的な)
  • 自由で豊かに自然と関わることのできる住空間
  • 人々の動物的本能を甦らせるような、自由で独創的な住まい方

などをキーワード、コンセプトとして、実験的な住宅を宇都宮の市街地に点在させるというプロジェクトがSUMIKAだそうです。今回は東京ガスとオゾン・リビングデザインセンターのスタッフ方々と一緒に見学する機会を頂きました。

まず、最初に拝見したのが、伊東氏設計のパヴィリオンでした。木造のパズルのような構造体が美しい建築でした。実に上手く作られており、不思議なデザインが不思議でないように思えるほど、巧妙に作られていました。(模型の中に居るような感覚?)構造体は編カゴのようでもあり、パズルのようでもありますが、コンセプトの「木の下の空間」には、どうしても感じられませんでした。やはり光がこぼれてくる状態や枝が張ったような構造は似ていても、風や温度などの体感できる感覚が違うことで、人工的な環境に感じられてしまうのかも知れません。

次に拝見したのは、西沢氏が設計した住宅でした。厚い屋根と四周の建具を全開にすると、外と一体化する、やはり不思議な住宅でした。幸い、素晴らしい天気に恵まれていたので、風が爽やかで、光も美しく、
快適な空間を楽しむことが出来ました。ただ、都市型住宅として、外との一体の仕方や、天気が悪いときにはどうなるのかなど実際に住まう住宅として考えたときには、数々の不安が残りました。

今回の見学で一番興味を持っていたのが、この藤本壮助氏設計の住宅でした。実験的な(?)空間の設計では、若手ナンバーワンの建築家が作る空間は、実際に体験するとどうなのかが興味がありました。
そして実際に体験してみると、実に面白い空間でした!
鉄製の箱と、樹木が立体的に組み立てられ、梯子が繋いでいる空間なのですが、考えるより、感じるような空間で、単純に巡っていることが楽しくなるのです。思わぬところから、思わぬ場所へと梯子が伸び、外部と内部の境界が曖昧で、温かい空間とひんやりした空間が交互にあったりと、子どもに戻って、かくれんぼをしたくなる感覚におそわれました。ただし空間の面白さは抜群でしたが、住宅としての性能は一番低そうです。危険を顧みなければ、幼稚園や保育園、あるいは子どもの遊戯施設として最適なのではないでしょうか?

最後に拝見したのが、藤森氏設計の住宅、コールハウスでした。焼いた杉板を外壁に使った住宅です。ここまで見学してきた住宅が、あまりに一般の住宅の概念から外れていたので、この住宅には安心感を覚えました。と言っても、決して普通の住宅ではないのですが…。

体験してみると、とても狭い入り口や建具、急な梯子や、斜め床の寝室、外部梯子を使える茶室など、ユニークな空間が、上手に一つの住宅の中に納められていました。材料も、焼杉をはじめ、クリの板、塗り壁や、
木製サッシなど、触覚的にも気持ちが良い素材が多用されており、自分が住むとしたら、一番住んでみたい空間でした。最後の写真はオゾンスタッフの方々がお茶室に集合した様子です。

正直、全体的にみると遊び的な要素が強すぎると感じました。ただ、このような実験的なものから新しい住宅概念が生まれるのでしょう。その新しい概念をいかに感じ取って、普通の人にも納得して貰えるような形で、どのように展開してゆくかが問われている気がしました。最後に、貴重な機会を下さった、東京ガスとオゾンに感謝の一日でした。