Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

最後のお風呂  そして解体…

新築住宅

昨年こちらのコラムでご紹介した、「オゾン・リビングデザインセンター」の「家づくりサポートシステム」が縁で設計をさせて頂くことになった、大田区の三世帯住宅N邸ですが、いよいよ既存建物の解体が始まりました。僕らとしても何度も打合せをさせて頂いた住宅でしたので、明日から解体が始まるという前夜に、そっと最後の姿を覗きに伺って参りました。

ちょうどご両親がシャッターを開けているところでしたので、夜分でしたが声をお掛けしてみました。その夜からお隣に仮住まいすることになっているのですが、最後のお風呂を、昔の家で浴びたいとの想いで、湯浴みの準備をして来たとのことでした。新しい三世帯住宅を作るために、古い住宅を壊すことは必要な事ではありますが、お二人にとっては本当に思い出深い家であることを、今更ながら最認識いたしました。

その翌々日、解体の現場を訪問いたしました。お店も住居もすっかり引越しが済んで、古いお宅もどんどん解体されている最中でした。仮住まいしているお隣の2階から解体の様子を撮ったのが二枚目の写真です。恐竜のような重機の向こうに見えているのが、古いキッチンです。僕等にとっても、何度も打合せをさせて頂き、その度に美味しいご飯をご馳走になったキッチン。僕等でも寂しい思いがするのですから、長年使いこんできたお施主様達には、どのように感じるのでしょう…。寂しさ、悲しさの深さの分だけ、新しい三世帯住宅が完成した暁には、家族9人が楽しく、賑やかに暮らせる、そんな未来の生活の為に、僕等、設計者が更に頑張らねばとの想いを強く感じた二日でした。

伊豆山の蓬莱

見学記

連休を利用して、熱海の近くにある伊豆山の蓬莱という旅館に泊って参りました。ご存知の方も多いかと思いますが、こちらは江戸時代から続く由緒ある名旅館です。若い頃、祖父母のお供で泊まったことがありましたが、今回は、奮発して妻と自腹で泊まって参りました。旅館の空間の特徴を、体験を通して理解し、何とか別荘の設計に生かせないかとの想いでした。今回の宿泊で、旅館の空間の魅力を何となくですが、体感することができました。

伊豆山蓬莱中庭

まずは、ゴールデンウィークの大渋滞の中を必死にドライブして着いた時のお迎え。ここからゆっくりした時間が始まる事を、旅館の静かなアプローチの中、女将さんの挨拶が合図になって教えてくれているかのようでした。そして部屋への案内。写真のような小さな庭を迂回する回廊を経ることで、期待が高まります。そしてたどり着いた部屋から広がる景色。ここまで海の近くでありながら、海を見せないでいて、最後に部屋から
切り取ったような海を見せるという心憎い演出。

伊豆山蓬莱のテラス

別荘でここまで凝った演出は難しいかも知れませんが、建物へのアプローチや、部屋の構成、小さな演出の数々と色々と参考になることが沢山ありました。いつか、このような素敵な和風の別荘も設計してみたいものです。

9年前に設計した住宅、8年前に設計したクリニック

見学記

先日8〜9年前に設計し、引渡しを行った建物を偶然二つ見る機会がありました。

一つはちょうど9年前に竣工引渡しをした住宅、上野毛T邸です。僕にとっては、独立後始めての新築住宅でしたので、とても思い入れのある住宅です。お施主様がランドスケープのデザイナーで、奥様もインテリアデザイナーでしたので、とてもきれいに使ってくださっていました。外壁に多少の汚れは見られましたが、外構もご自分達で手掛けられたので、今でもきちんとしていました。時々ご夫妻にはお目に掛かる機会があるのですが、最近は中は拝見しておりませんでした。

二つ目のこちらは8年前に竣工引渡しをしたクリニック仙川Tクリニックです。その後、近所に引越しをされた事は伺っていましたが、クリニックの後がどうなっているかを拝見したのは、車で通りかかったこの日が初めてでした。見事にカフェにリフォームされていました。よく見ると、僕等が設計した鉄骨製庇は上手く再利用されていましたが、後は全て解体されてしまっているようでした。自分もリフォーム設計をする立場ですので、
いかにリフォーム前とリフォーム後が変化するかを見るのは楽しみなのですが、自分が以前に設計した空間が、ガラリと変わってしまっているのを見るのは、不思議で、少し寂しい気持ちになります。ただ、ご近所に引っ越して開業し続けているT先生のクリニックはとても繁盛している事を聞いておりますので、その点は安心です。
どちらも偶然通っただけなので、180度違う不思議な体験が重なったので記事に致しました。