Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

トチの無垢板テーブルのお嫁入り@湘南T邸

湘南T邸

お引渡し直前の湘南T邸の現場に、トチの木の一枚物の無垢板テーブルが届くので、そのレイアウトを確認しに現場に行って参りました。

無垢のトチ一枚板のテーブル搬入

こちらが設置された無垢板一枚物のテーブルです。当初から色味を合わせた作りになっているように感じるかと思いますが、実はちょっと不思議なご縁があって、このテーブルが嫁入りすることになったのです。

無垢のトチ一枚板のテーブル搬入

このテーブルは、一枚板の無垢材テーブルで有名なアトリエ木馬の物なのですが、実は一年以上前にお引渡しをした代々木上原I邸のお客さまが当初ご購入なさったものなのです。

僕らが設計のお手伝いを始める前に、この一枚板に一目惚れなさったIさまが、リフォーム案が決まる前にご購入なさったものだったのですが、その後僕らが設計をしてゆくうえで、どうしても置く場所が無くなってしまい、キャンセルすることもできず宙に浮いてしまったものだったのです。

無垢のトチ一枚板のテーブル搬入

一時は、僕らカガミ建築計画の事務所にご寄付頂くお話しもあったのですが、何せ狭く貧弱な打ち合わせ室には似合わないので、どこか僕らがお手伝いするお宅で使える所があれば、どうぞお使いくださいとお嫁入を一年以上待っていたテーブルだったのです。このお話を図面等で検討した上でサイズや色味も良いのではと考えて湘南T邸のお客さまにお伝えしたところ、是非頂きたいとのことで、今回の嫁入りとなりました。

ちょっとカーブした形が、ヘの字型に曲がったT邸のベンチともマッチし、本当にこの空間の為に誂えられたテーブルかのようでした!因みに、Tさまには木馬の倉庫からの搬入設置費だけご負担いただきました。

クロス張りの終わった湘南T邸リビング

クロス張りも終わりクロス張りや照明器具付けも終わったリビングの様子です。グレーのクロスがとても効いていて、白いケーシングや腰壁がきれいに浮かび上がってきたかのようです。

クロス張りの終わった湘南T邸廊下

グレーのクロスのお陰で廊下もとてもしまって見え、グリーンも引き立たせてくれています。

キッチンアイランドカウンター設置

オーダーでコナラハウスさんに作って貰ったキッチンのアイランドカウンターも設置されました。

輸入品のキッチン取っ手類

お客さまのコダワリで、輸入して貰ったキッチンの黒い取っ手類です。

キッチン吊り戸間接照明位置検証

キッチン吊戸棚の間接照明の位置が決まっていなかったので、担当スタッフの前田君に間接照明を、奥、真ん中、手前のそれぞれに支えて貰って写真を撮影してIさまに見比べて頂きました。

書斎木製サッシへのガラス入れ

リビングに隣接する書斎の木製サッシに強化ガラスを入れていきます。手前の壁に立て掛けてあるのが、押縁(オシブチ)です。

書斎木製サッシへのガラス入れ

まずは慎重にガラスを立て込み…、

書斎木製サッシへのガラス入れ

その内側から、先ほどの押縁をビス留めして、ガラスを固定してゆきます。

前田君がコナラハウスの小形さんと打ち合わせをしながら描いてくれた書斎の木製サッシの納まり図です。

書斎の本棚は約30センチの奥行きがあり、大型本の収納には適していますが、文庫や新書をどう収納すべきかを悩んでいたところ、お客さまのIさまから、奥に段をつけて、背表紙を見えるようにできないかとのご相談があり、これも図面上で検証して、うまく行きそうだとのことになったので作ってみました。

奥行きのある本棚活用法

それがこちらでです。手前を文庫にして、奥を新書にしても良いのですが、そうなると、棚板の高さ間隔が大きくなってしまうので、手前新書で、奥文庫にするのが良さそうだとのことになりました。奥の本を取る時には手前の本をどかさないと取れない問題は残りますが、奥にどんな本が入っているかを確認できることは素晴らしいアイデアだと思っています。Iさま、素敵なアイデア、ありがとうございました!今後も使わせて頂きます(笑)!

ダイニングルーム

ダイニングの雑誌立數納もできあがり、

玄関ベンチ

玄関のベンチ収納もほぼ完成しています。

半導体不足で、お引き渡し時までに納期が間に合うか分からないと言われていたドイツ・ミーレ社の洗濯乾燥機も何とか間に合いました。

黄色いクロスの寝室

ご主人の寝室の黄色いクロスも張り終わり、次週の施主検査までの道が見えてきました。

ポルフィド特注カウンターの大型キッチン組立て

関西M邸

関西M邸の工事も順調に進み、リネアタラーラにお願いしているキッチンの施工が始まりました。キッチン取り付け工事は、位置や納まり等の細かい判断が求められる工事なので、本来であれば僕らも現場に行きたかったのですが、お客さまとの契約だけでなくゼネコンとの立ち位置や交通費の問題もあったので、リネアタラーラの担当の牧野さんからの写真と電話での相談で対応させて頂きました。

オーナービル最上階住戸_関西M邸の現場_キッチン組立て中

シンク側のアイランドキッチンが立ち上がってきた様子です。側面に張られているのが、イタリアのポルフィド・ペドレッティ社オーダーして特別に作って貰ったポルフィード(斑岩)のスラブ材です。元々ポルフィド(ポルフィード)は欧州の道路の舗装用に使われていた頑丈で、水にも強い石材です。大判で使われることは少なかったのですが、上記のペドレッティ社は自社で大きな石切り場を持っており、三種類の色味のポルフィドを扱うことができるという特徴を持っているのです。

オーナービル最上階住戸_関西M邸の現場_キッチン組立て中

厚板スラブ材にランダムに見えるように(と言っても実際は設計で指示した通りですが)溝を掘り、出っ張った部分は割肌仕上げにするという面倒な仕上げとなっています。

こちらが当初、僕ら設計側でイタリアにお願いしたポルフィドの加工イメージです。

最初のスケッチがあまりに抽象的なので、どのくらい割肌にしたいのかを見せて欲しいとのことで、担当スタッフの竹田さんに作って貰ったスケッチがこちらです。

因みに、割肌仕上げはこちらのような、岩山(大袈裟?)のゴツゴツしたイメージで…、

ビシャンは、割肌に比べればなめらかですが、やはりボコボコした仕上げです。この2枚の写真は共にポルフィド・ペドレッティ社のホームページからお借りしたものです。直接イタリアの会社と素材の仕上げをやり取りするのは難しいので、今回はイタリア在住でペドレッティ社と深い関りがあるマンジャロッティ事務所のスタッフの堀川絹江さんと、イタリア建材の輸入でいつもお世話になっているアークテック社の増田社長に間に入って貰っています。そして最終的な仕入れはオーダーキッチンのリネアタラーラにお願いするという複雑な経路での発注となりました。

オーナービル最上階住戸_関西M邸の現場_キッチン組立て中

ペドレッティ社の凄い所は、ギザギザの一部割れ肌加工をされた石材同士を、トメ加工(直角の接合の際に、両者を45度に加工してすり合わせて接合する技術)で接合できるように加工できるところなのです。

堀川さんが間に入ってくれてペドレッティ社とやり取りをした際の堀川さんの説明スケッチです。日本の石材屋さんでは、これは対応してくれない特殊な加工です。

オーナービル最上階住戸_関西M邸の現場_キッチン組立て中

アイランドカウンター4面に、それぞれ違った仕上げに加工されたポルフィドを張ってゆくので、現場での緊張度合いも凄いものだったそうです。

アイランドカウンターにさらにウォールナット無垢剥ぎ板の総長さ6メートルのテーブルが組み合わされた様子です。テーブルの足も黒い塗装仕上げの鉄板で作って貰っていますが、床の上に置いただけでは安定度が悪いので、床フローリング材を張る前に床下地に固定する方法で固定しています。

石材の加工時から、天板の厚みを決めて、ぴったり収まるように加工して貰っていたので…、

このようにきれいに収まるのです。こちら側のトメの加工も、ちょっと普通では考えられない納まりです。

まさにMさまが望んでいらっしゃった通りの、力強い仕上がりになりました。

コンロ側のカウンターは、誰からも心配されない形で施工されました(笑)が、実際には大判のホットバイブレーション仕上げのカウンターと背面板とサイドパネルが取り合う、難しい作りなのです。
ここまでできれば、後はフローリング張りと造作家具の取付け、クロス張りと器具取付となりますが、ここから先はゼネコンにお任せすることになっています。

オーダーユニットバス大解剖

渋谷R邸

ユニットバスではありながら、在来工法浴室のように浴槽もシャワーも水栓も自由に選べて、ステンレス枠に強化ガラスのシャープでホテルライクなデザイン、そして壁仕上げ材もほぼ自由に選べるオーダーユニットバスの作りを徹底解剖します。

オーダーユニットバス大解剖

渋谷R邸の現場にヴェルデにお願いした大型オーダーユニットバスが入ってきました。手前に見えているのは壁下地のLGSで、その奥に少し床から浮いて置かれているものがオーダーユニットバス(壁の裏側)です。因みにヴェルデでは、カスタムメイドシステムバスという名称で販売しています。

オーダーユニットバス大解剖

オーダーユニットバスは、床を構成するFRP製の床防水パンと、壁パネルと天井パネル、そして出入り口のサッシ部分から成り立っています。アップで見ているこちらの写真は、床防水パンの接合部の裏側です。

オーダーユニットバス大解剖

通常サイズのユニットバスであれば、床防水パンは一枚で作ってくるのですが、今回のように大型の場合は、浴槽が載る部分と洗い場のパンに2分割されています。防水パンの下を覗き込むと、排水管が接続されているのが分かります。

オーダーユニットバス大解剖

ベージュ色の筒状の物が排水トラップで、そこから灰色の管が繋がっているのがVP管の排水管となります。手前で床設置面に接着されているものがパンの脚です。

オーダーユニットバス大解剖

浴室内側から見た防水パンの全容です。

オーダーユニットバス大解剖

浴槽を設置する側のパンがこちらです。小さい穴が幾つか空いている個所は、パン下の脚の高さを上から調節するねじ穴となっています。大きなキャプ付きの丸い穴は浴槽の排水への接続口で、四角い穴は配管接続及び位置確認・点検口を兼ねた窓穴となっています。

オーダーユニットバス大解剖

手前の防水パンが洗い場となる個所です。養生されており今は見えませんが、防水パンの洗い場には既に指定した床タイルが指定した勾配で張られた状態で現場に届きます。

オーダーユニットバス大解剖

2枚の防水パンの接合部分はこのようになっています。お互いが嚙み合う形で接続され、最終的には上からアルミのキャップをかぶせて念入りにシールで固定されています。朱色のダンベルのようなものは、タイル仕上げの壁パネルを取り扱う際に使う吸盤付き取っ手です。

オーダーユニットバス大解剖

防水パンの接合部の反対側の様子です。パンの壁側上端を良く見ると、アルミのランナーが付いていて、壁パネルと噛み合うように設計されています。

オーダーユニットバス大解剖

今回は洗面側からの入り口と隣り合って、サウナ室の出入り口があるので、ステンレス枠と強化ガラスの入り口サッシが2セット付く作りとなっています。サウナ使用時には浴槽に冷たい水を満々に入れて、ザブンと飛び込む際に水が大量にあふれ出るので、出入り口側にはグリル付きの排水口を切っています。パンの立上り部分には既に壁と同じタイルが張りつけられています。

洗面側から見た防水パンと壁パネルの取り合いです。

オーダーユニットバス大解剖

こちらが現場に運び込まれている壁パネルです。今回は60センチ角のタイルを使っているので、壁パネルは幅60センチの縦長のパネルとなっていますが、最大で90センチのパネルまで作ることができるそうです。横長のパネルになると接合部からの水漏れの可能性があるので、タイル目地も縦に通る形となるのがオーダーユニットバスのあまり知られていない特徴の一つなのです(ただ、特殊な作り方で(当然費用も高くなります…)横長のタイルや横型のパネルを作ることも可能ではあります)。

オーダーユニットバス大解剖

レーザーで垂直を合わせながら、壁パネルを立てていきます。壁後ろにはスペーサーを挟んで倒れないように工夫されていますね。在来工法浴室では、壁タイルは防水下地を作った躯体やコンクリートブロック壁に直接張ります。裏までしっかり重量がある質感が魅力ですが、寒さ対策で考えると、壁パネル裏に空気層があるオーダーユニットバスの方が温かいというメリットもあるのです。

オーダーユニットバス大解剖

あれよあれよという間に、三枚の壁パネルが張られました。因みに一番最初の写真を見返して貰うと、この壁の反対側の壁の裏側が見えています。アルミのフレームに耐久性・対候性のあるフレキシブルボード(通称フレキ)を張り、そこにタイルを圧着して壁パネルを作っています。浴室内側から金物類(シャンプーホルダ―や手摺り)を取り付ける箇所にはビス固定用のベニヤ板が張られています。

オーダーユニットバス大解剖

直線部分では壁パネル同士はこのように接合され…、

オーダーユニットバス大解剖

コーナーでのパネル、そして防水パントの納まりはこのようになっています(少しピンボケですが)。

オーダーユニットバス大解剖

浴室の隣室に立て掛けられているこちらの部材もオーダーユニットバスの部品です。手前で横になっているのが洗面から浴室への出入り口のステンレスサッシ枠で、奥の四角や丸穴が空いているものが天井パネル(裏面)です。

オーダーユニットバス大解剖

ステンレスサッシ枠は、鏡面仕上げの枠に傷が入らないように白いテープで養生されています。

オーダーユニットバス大解剖

断面も複雑な形状に見えますが、一番重要なのは防水パンとの接合部の欠き込み部となります。ここが防水パンのランナーとガチっと噛み合って、水を漏らさないのです。

オーダーユニットバス大解剖

二つのステンレス枠が取り付けられた様子です。浴室内側からの写真で、左側が洗面で、右側がサウナとなります。

オーダーユニットバス大解剖

こちらは浴槽の上にかぶせるタイル仕上げの平板部(通称:デッキ)を裏側から覗いた様子です。上部に人の体重が掛かるので、溶接された鉄角パイプで頑丈に作られています。

オーダーユニットバス大解剖

デッキ材の端部にもアルミのチャンネルが付いており、壁パネルとがっちり組み上がって、水を内部に入れない構造となっているのです。

オーダーユニットバス大解剖

先ほどの天井パネルを裏返したのがこちらの写真です。青い養生シートが張られていますが、仕上げはツルツルの白い面となっています。四角い大きな穴は、浴室暖房乾燥機とそのメンテナンスのための点検口で、大きな丸い穴は音楽を聴くスピーカー、小さい丸い穴はダウンライト用の開口となっています。

オーダーユニットバス大解剖

一通り組み上がったオーダーユニット浴室を洗面側から覗いた写真です。高層マンションのビューを楽しむために、PSから一番遠い窓際に浴室を設置したので、当初の設計通り、洗面床から浴室床が約10センチほど上がっています。

オーダーユニットバス大解剖

2連のステンレス枠が合体したサッシ枠の見上げです。左側が洗面で、右側のベニヤ板下地の部分がサウナになります。

オーダーユニットバス大解剖

洗面側の天井は、天井裏のエアコンのことで浴室より天井が落ちています。サウナも天井が高いと、熱気が上に逃げてしまうので、わざと天井を落としています。まだ仕上がっていないので殺風景ですが、施工をお願いしているプレステージプランニングの松永さんと弊社担当の前田君が立っているのがサウナ室です。

オーダーユニットバス大解剖

こちらはサウナ側から浴室のサッシ枠と天井を見上げた写真です。

オーダーユニットバス大解剖

水栓やシャワー、シャンプーラックが付いた浴室壁です。こちら側は梁と干渉するので、天井に一部梁型が作られています。

オーダーユニットバス大解剖

組み上がった天井です。当初の天井パネル割だと、浴室暖房乾燥機の直上にダクトがあり干渉してしまうことが分かったので、急遽パネルを作り変えて貰いました。

オーダーユニットバス大解剖

既存の窓とデッキの取り合い部です。タイル一枚分だけ枠を取り付けて、オーバーフローした水がそのまま窓サッシに流れ込むことを少しでも防ぐようにすることができました。これからサウナ部分を大工造作で作ってゆくので、完成はもうしばらくお待ちください。
因みに今回のオーダーユニットバスは色々な理由が重なってヴェルデの立花さんにお願いしましたが、弊社では東京バススタイルや、バンクチュール(ニッコウ)などにお願いすることがあります。それぞれ得意とする範疇が少しずつ違いますが、皆素晴らしい会社です。オーダーユニットバスは価格が高いことが玉にキズですが、在来工法よりも防水性能が高く、通常のユニットバスでは不可能なデザイン性を実現することができる、素晴らしい工法です。