Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

ハイテグラ-タイルと左官の融合仕上げ-

渋谷区Q邸

左官材メーカーのフッコーが一昨年に発売した出した、左官とタイルの融合仕上げ材のハイテグラを渋谷区Q邸で採用しました。

ホームページに、左官とタイルの融合仕上げと書いてありますが、まさに「言い得て妙」な仕上げだと感じています。

このような真ん中に溝が彫られた、ザックリとした素焼きのタイル(色は2種類)をワザと隙間を開けて壁に張り、タイル同士の隙間と溝部分に、やはりザラッとした目地材を詰め、さらにタイル上にも目地材を左官材的に上塗りしてゆくという独特の仕上げなのです。

簡単に作り方の工程を紹介いたしました。LGSと不燃のケイカル板で仕上げた壁に不燃の左官下地を塗ります。因みに、今回使ったのはバイオエタノール暖炉の上と横部分の壁となります。

そこに、背面からネットで繋がった、先ほどの素焼きタイルを張ってゆきます。

全面にタイルが張れたら、目地材を隙間に詰めながら上塗りしてゆきます。

こちらがハイテグラ専用の左官材で…、

上記の材料を水で溶いたものを責任施工(メーカーが指定した施工会社にての施工)で塗ってゆきます。

全体に左官材が塗れた所で、細かいコテを使って、タイルが顔を出すように適宜左官材を削ってゆきます。この削り度合いが、左官職人さんたち曰く、一番難しい所だそうです。

一通り仕上がった状態のハイテグラのディーテル写真です。まさに、タイルと左官の融合仕上げなことが分かりますね!

こちらは、また数日後の様子で、下にバイオエタノール暖炉を据え付けるカウンターの下地まで出来上がってきた際の様子です。
今回はバイオエタノール暖炉周りの仕上げ素材として、
・どっしりと重量感が感じられる素材で仕上げたい
・ただし、実際には下が抜けているので、軽量化が図れる素材を使いたい
・出隅コーナーまで一体で見える仕上げとした
という3点を考えてゆくうえで見付けた素材がハイテグラでした。ハイテグラはベースとなるタイルの色と形、左官材の色で多様な表情を見せることができる、ユニークな仕上げ素材なので、今後も工夫しながら使ってみたいと考えております。

廃材が少ない築浅マンションの解体@仙石山T邸

仙石山T邸

仙石山T邸は築10年未満の築浅マンションのリフォームプロジェクトです。まだ、比較的新しいマンションですので、使えるものは下地から設備まで最大限活用して、表層のイメージをうまく変えて、リフレッシュしたいというのがお客さまからのご要望でもありました。

エアコンの交換やスプリンクーラーの移設はそれなりの費用が掛かるので、既存エアコンは再利用(ただし、フェイスのプラスチック部分が紫外線で黄ばんでいたので、白い塗料を吹き付けてリフレッシュ予定)、スプリンクラーもキッチンの間取り変更がありましたが、カバー範囲が変わらないので、移設や増設無しで済ませることができそうです。

通常のマンションでは、フローリングを張り替えると、フローリングの下の床暖房パネルを傷つけてしまうので、床暖からやり直しとなるケースが多いのですが、ここアークヒルズ仙石山レジデンスは、以前の幾度かの工事で、捨て貼りベニヤ板が貼られており、床暖を活かしたまま床材を交換できることが分かっていました。

キッチンについては、レイアウトを全面変更するので、このようにきれいさっぱりキッチンが消えてしまっていますが…、

食洗器からレンジフード、ガスコンロからディスポーザーまで、使える設備機器類はすべて丁寧に付属金物まで一緒に取り外して保管しています。

床には、もうすでに新しい対面型カウンターの位置に合わせて、給排水菅が設置されていました。

キッチン背面側にもガス管が丸められています。床パネルも、必要最小限に取り外されているだけです。

解体を限定的、部分的にすることは、実は施工会社からすると面倒なことで、スピードも解体業者を入れて、すべてを撤去するスケルトンの方が楽なのです。ただ、大工さんに必要最小限な部分だけを剥がして貰えれば、廃材を少なくすることができ、結果的にリフォームに掛ける金額を落とし、スピードアップすることができるのです。

玄関横にあったトイレも、便器と手洗いの位置を交換するだけだったので、床パネル三枚を取り外して、配管位置を交換して、またパネルを戻しているので、最小限の作業で位置交換することができました。

こちらは玄関ホールです。こちらも床は既存のタイルを撤去しましたが、床下地は残すことができています。左側の壁は、仕上げ材をビニールクロスから石張りに代るので、ボードから撤去しています。ただ、壁のLGS(軽量鉄骨)の下地はほぼすべて残すことができています。

玄関正面にあたるこの壁にアクセントとなるニッチを設けることまでは決まっていますが、まだ、そのサイズと位置、デザインが決まっていないので、まずは位置出しをして、お客さまに見て貰うことに致しました。

赤い養生テープでマークした部分が、大よそのニッチの範囲となります。LGS下地をなるべく残したいので、玄関扉の位置とLGSの位置から、この位置に決めました。ニッチ中央のLGSだけは部分的にカットすることになります。

今回のリフォーム現場、とにかく廃材が少ないのが、一番の特徴となっています。

→リフォーム工事完成後の仙石山T邸の様子をご覧ください。

カーブを描く左官壁の下地作り

赤坂N邸

赤坂N邸リフォームの一番重要なデザインポイントとなるカーブ壁の左官下地作りが始まりました。

写真中央右で脚立に足を掛けた職人さんが触っているのが、その壁です。もうこの段階で、本当の左官下地は塗られていますが、ここからデザインとなる絵柄(模様)とテクスチャーが施されていきます。

共同設計の3*D空間創考舎の石川さんと僕でご提案したのが、この展開図に描かれているランダムな斜め線のデザインです。

と言っても、実際にどのようなイメージになるのか分かりにくいので、黄色い養生テープを使って、お客さまご夫妻の前で、僕、各務が実際に想定される位置に斜めの線をテープで張ったものを見て頂きました。

ただ、直線に硬い線が走るだけでは面白くないので、ビニールテープを使って、幅も少しうねる様にカッターで切って調整してはどうかとの提案を左官会社の望月工業の社長の望月さんから貰いました。

仕上げ材のサンプル(これも望月工業で作った貰ったもの)を見ながら、ベースとなる素地の作り方と磨き込みの度合いも見て貰っています。

大まかなデザインと流れは、これで良さそうだとのお客さまのご了承を頂きましたので、左官の職人さんにビニールテープで下地に斜めラインを張り始めて貰いました。

カーブ壁に沿った扉が2枚ありますが(1枚はトイレ水回り、もう1枚は設備室)、扉も同じ左官材で塗って貰う予定なので、壁と扉が一体化して見えるように同じ柄を繋げて貰っています。

いよいよ左官の下地作りです!と言っても、最初は天井際の塗りにくい個所を細かいコテを使って塗ってゆくので、地味な作業からのスタートとなります。

細かい部分が収まってくると、いよいよ左官名人の出番となります!今回の左官工事は、左官材メーカーの日本化成からのご推薦で、望月工業さんが入ってくれていますが、社長の望月さんが左官の超ベテランで、細かい柄から大きな模様まで、左官コテで作ってゆく名人なのです。

名人、望月さんの腕で、流れのある左官のニュアンスが作られてゆきます。テープを張った部分は、一旦塗り終わって、半分乾いた所でテープを剥ぎ、その部分だけが凹むことで柄になるという塩梅なのです。

場所によっては、ローラーで左官の流れを乱したり…、

縦横無尽に名人が楽しみながら(?)左官下地を作っていってくれました。

片や左官下地を作っている横では、寝室とLDの間仕切りの特注スチールサッシも現場に入ってきており、取り付けが始まりました。

天井高さが変わっているところから先が寝室となりますが…、

その位置にフィックス(嵌め殺し)のスチールサッシの吊り込みが始まりました。

建具職人さん二人では手が足りず、現場に入っていた大工さんも手伝って、位置を固定していきます。その左側では、カーテン屋さんがレールを吊っています。

カーテンレールは、リモコンで電動開閉することになっているので、電動カーテンに対応した緩やかなカーブでの設置となっています。

カーテンの溜まり部分に、このような電動カーテン装置が取り付けられました。

そうこうしている内に、スチールサッシの建て込みも進み始めました。

玄関からリビングへと続く廊下の壁のタイル張りと建具の吊り込みもほぼ終わり…、

カーブ内側のトイレの便器設置と、壁クロス張りもほとんど終わってきました。

ステレオマニア(?)なお客さまからの追加のご要望で、天井に吸音パネルを追加で張ることになり、LD全体の天井にパネルを張って貰う工事も進んでいます。

窓際にはスクリーンを設置するボックスも無事取り付けが終わっています。

お引渡しが迫ってきた中で、タキズミの現場監督の池谷さんの差配で、職人さんが15人ほど出入りしての大変な作業が続いています…。