Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

マンション壁への大理石張り@港区R邸

港区R邸

先日の工事で床の大理石張りがほぼ終わった港区R邸ですが、今度は壁や天井への大理石張りが始まりました。

大理石製三方フレーム

廊下からリビングへ入る左右の飾り棚と、テレビ置き場を囲むように大理石製の枠材を張回す予定で、そこには癖のないミストグレーを張るデザインとしています。

大理石製三方フレーム

天井に石材を張るのは、ちょっと変則的ではありますが、大理石のサイズを小さくして、下地となるベニヤ板をしっかりと組み、接着剤だけでなく金物とビスでも固定しています。この写真、左上の方に、L字型のアングル金物とビスが見えています。

大理石フレームの固定方工法

廊下からリビングダイニングに入る扉上部分は、扉の金物やダウンライトは入ってくるので、正確な位置を実測したうえで、工場加工で穴をあけて貰った石を張っております。右上に黄色い線が見えていますが、これは真っすぐなライン状に仕上げるための糸です。

大理石三方フレームのコーナー端部ディテール

フレームは折れ曲がりながら、壁から天井、そして壁へと枠状に曲がってゆきます。スラブ材の石の厚みでは、迫力が足りないので、このようにL状に石を組んで、事前に工場で接着してもらっていたものを取り付けています。特にコーナー部分は、トメ加工といって45度に切った石を張り合わせて貰っています。

大理石製フレームの施工

天井に張る石部分にちょうどダウンライト用の孔が空いているので、そこにクランプを差し込んで固定しながらの作業となっていました。

大理石製フレームのコーナー留め加工

このトメ加工は、現場側は嫌がる特に面倒な組み方なのですが、そうすることで、立体感がうまく表現できるので、少々の無理をお願いしてやって貰っています。

大理石ミストグレーの三方枠造作

ミストグレーの三方枠がほぼきれいに張り終わった状態です。

テレビ周囲のポルトロ大理石張り

ミストグレーの三方枠が終わったところで、一番の山場のテレビ周囲のポルトロ張りです。イタリアのリグーリア州ラ・スペッツィア近郊で採掘される超高級な大理石が、このポルトロです。

リビングのテレビボードのポルトロ大理石の端部ディテール

テレビ取り付けサイズを考慮しての開口を避けて、ブックマッチにして柄が繋がるようにして、張って貰っております。この張り方については、以前のブログで説明した通りです。また、小口に柄が繋がっているのも大理石の見せ場ですので、壁端部はきれいに磨いてもらっています。

玄関ホールの壁大判アラベスカート張り

もう一つの大物の壁大理石張りがこちらの玄関ホールのアラベスカートでした。まだできておりませんが、黒いカラーガラス張りのトンネル状の廊下と対比させるために、白い部分がきれいなアラベスカートを選び、柄が繋がった状態で壁に張って貰っています。

サルバトーリの大理石素材到着

まだ、張り始めるのには時間が掛かりそうですが、玄関ホールの反対側の壁に張るサルバトーリの加工大理石も現場に入ってきました。梱包を解いたところ、欠けなどがあったのでお願いしているインテリアズにも連絡してもらっています。

アリオステアのアラベスカート柄タイル張り

床の大理石張りのところでも説明しましたが、石屋のキダバーブルの職人さんに壁のタイル張りも張って貰っています。浴室壁や洗面所の床でも使っているイタリア・アリオステア社のアラベスカート柄タイルをキッチン壁に張って貰いました。

折り上げ天井のカラーガラス張り

目立つ大理石張りだけではなく、その他の工事も静かに(?)進行中です。リビングの折り上げ天井の高天井部分に小割の黒カラーガラスを貼りますが、両面テープと接着剤での貼り付け作業が進んでいました。

窓際キッチンのガスレンジとレンジフードの工夫について

二番町I邸

二番町I邸で、オーダーキッチン屋のエクレアにお願いしているキッチンの組み立てが始まったとのことで、現場を見て参りました。

エクレアのオーダーキッチン組み立て

オーダーキッチンの組み立てに入ってから3日目とのことで、カウンターや箱組は終わって、設備の取り付け工事中で、その後棚板と扉を取り付ければ終わりのところまで出来ていました。

エクレアのオーダーキッチン組み立て

今回の構成は二の字型といわれているもので、片面にシンクとコンロがあり、背面側に冷蔵庫置き場と食器や調理機器置き場を設置するオーソドックスな作りとなっています。ただ、背面側にはアイレベル(目線の高さ)に組み込んだオーブンと引き出し式のパントリーが入る部分がちょっと特殊な作りとなっています。

窓際のガスレンジカウンター設置

今回のキッチンで一番難しかったのが、窓際に設置するガスレンジとレンジフードと窓サッシとの取り合い部分でした。こちらはまだ、ガスレンジが付いていない状態のカウンターですが、ちょうどカウンターの高さに既存サッシの横框があったので、そこにカウンタ甲板を押し当てて、正面壁から回ってきている立ち上がりも廻し込んだ様子です。油煙がサッシの奥の方に回り込まないように南側からの日差しの遮熱も兼ねた二重サッシを設けています。

エクレアのオーダーキッチン組み立て

レンジフードの横は、窓サッシにフードをピタリと寄せると、どうしても掃除しにくい場所ができてしまうので、こちらは却って隙間を10センチほど開けて、手を差し込んでの掃除がしやすい収まりとしました。

窓際のガスレンジとレンジフードの納め方

こちらは最終的に組み上がった際のガスレンジとレンジ―フードと窓サッシの取り合いです。

エクレアのオーダーキッチン組み立て

シンク上の吊り戸には折れ戸のフラップアップ扉を採用していますが、扉設置前でその金物がちょうど見えていたので、撮影したものです。

エクレアのオーダーキッチン組み立て

これだけ組み上がったように見えても、まだリビングダイニングエリアには、組み立てまえの部材が並んでいました。資材搬入の際には、この広いLDいっぱいにキッチン資材が広がっていたのというので、キッチンの密度が高いのが改めて分かりました。

エクレアのオーダーキッチン組み立て

今回はクローズドキッチン(オープンではなく隠れたキッチン)とのことで、予算のことなども踏まえてメラミン製の扉を採用していますが、エクレアさんが丁寧に作ってくれたので、とても良い出来となっていました。

エクレアのオーダーキッチン組み立て

今回のキッチンのもう一つの特徴は、シンク側から正面に小扉を付けて、そこの開閉でリビング側の様子を見ることができるように考えています。薄型タイルの割り付けと合わせた開口がきれいに空いており、リビング側からキッチンの様子が見えるアングルの写真です。

二番町の高級マンションリフォームI邸工事現場

まだ、造作家具や特注の建具が収まっておりませんが、その他の工事も順次進んできています。

神谷のクロス張り建具詳細

こちらはリビングダイニングから直接出入りするお子さまの寝室の扉のディテールです。壁の仕上げと同じビニールクロスを張ることができる、神谷コーポレーションのF/Sという建具の小口です。ちょうどへこんだ箇所に建具のヒンジが入ります。

柱型のカラーガラスとミラーの見切り金物

LDに出っ張った形の柱型には、その存在感を打ち消すために、カラーガラスと鏡を張る予定ですが、それらの取り合いのコーナー部分にステンレス鏡面磨きの見切りを取り付けて貰っています。

建具用特注取っ手金物

廊下からLDへ入る建具は、特注のウォールナット突板張りとしていますが、金物は僕らが良くデザインしている特注金物を少し変形させたもので考えています。金物屋から焼き付け塗装された特注取っ手がすでに現場に届いていました。
キッチンの残りを完成させた後は、造作家具と建具の吊り込み、そして照明やエアコンなどの機器取付でお客さまの検査へと進む予定です。

ニシザキ工芸の塗装工場にて家具塗装の勉強

港区R邸

港区R邸の家具と建具全般をお願いしている造作家具会社ニシザキ工芸の塗装工場を見学させて貰いました。

以前より、造作家具の腕の確かさ以上に、塗装部を自社に持ち、鏡面塗装の仕上がりの良さに定評があったニシザキ工芸という会社には、ずっと興味を持っていました。

こちらにも普段お願いしている優秀な造作家具屋がいたので、これまでお願いすることができておりませんでしたが、港区R邸では、工事全般をお願いしたリフォームキューの営業&設計の坂本さんが、鏡面塗装仕上げの量が多く、非常に難しい工事になりそうなので、イチオシの造作家具屋にお願いしたいとのことで、初めてニシザキ工芸さんとのお付き合いが始まりました。
こちらは、本社から歩いて3分ほどのところにある、塗装工場です。道路上から入り口が数段あがっており、左側の大きな扉の前がプラットフォーム状になっていますが、これはトラックでの家具搬入のために、このような形態になっているようでした。

3階建ての建物で、1階と2階が塗装工場になっています。訪問した当日午前中は、塗装部のスタッフ全員で工場内を清掃する日だとのことで、塗装そのものは工場長が一人で細々とやっている程度で、他のスタッフはずっと片付けと清掃をしていました。鏡面塗装のようなデリケートな作業では、ホコリが一番の大敵とのことで、徹底的な掃除で感心致しました。

こちらは3階の倉庫に置いてあったサンプルです。仕上げレベルによって変わってくるのですが、塗装のプロセスは20~40工程を経て完成させるとのことで、流れ作業で効率的に仕上げてゆくとのことでした。因みに塗装の費用は、工程の数と一般的でない技法を使うかどうかによって変わってくるそうですが、ツヤだけで考えると、ツヤなしから7分ツヤありまでは同額で、全ツヤや鏡面磨きはその約2倍の費用になり、工期も倍ほど掛かるとのことでした。

家具も組み立てる前に塗装するものから、仮組してからするもの、最終的に組み上げてから仕上げ塗装するものと、そこも複雑に分かれてくるので、工程管理が一番大変だとのことでした。塗ってゆく順番に家具や材料を並べて、次の順番が来るまでに乾燥させるシステムを組むとのことでした。

こちらは工場の片隅に置かれていた塗料と調色用の塗料です。色も素地である木材に色を付ける場合と、上に重ねてゆくウレタン層に色を付ける方法があるそうで、透明度やツヤの度合い、色の奥深さなどを検討しながら設計者に提案してゆくそうです。

こちらが、それぞれの塗料やウレタンなどを吹くためのスプレーガンです。

最初の写真で、工場長が吹いていたのがこちらです。家具扉の下地となるMDF(中密度繊維板)はそのままでは塗料を吸い過ぎてしまうので、目止めとしてサンディングシーラー材(プライマー材を吹き付けるそうです。同じサイズの材料を塗装してゆくのであれば、工場でも簡単に作業ができるそうですが、サイズや形もマチマチで、工程も微妙に違っている特殊な塗装をすることが多いので、やはり人力が一番とのことでした。

こちらがそのサンディング材です。MDF材専用のサンディング材があることも知りませんでした…。

塗装でもう一つ重要なポイントは養生とのことでした。必要な箇所は仕上げてゆきますが、不要な箇所は塗る必要がありません。仕上げるには塗る作業だけではなく、塗り重ねた塗料を削る作業もあるので、塗装が載るべき箇所以外をきちんと養生してゆくことも大変な作業だとのことでした。

こちらは建具の枠材に使う幅4センチほどの細い材料ですが、組み立てると他の大きな面積の材と並んで見えるので、きちんと養生しながら必要か所を仕上げてきたそうです。因みにこちらは、突板大手の北三の人工黒檀材のワンダーコクタンを突いて貰ったものです。

ワンダーコクタンの塗装前の段階では、このような柄と色味になっていますが、小さな部材では分かりにくいですが、仕上げてゆくことでグンと高級感が出てくることを再認識することができました。
因みに、黒く仕上げる扉材に使う家具用のスライド丁番は、この写真のような黒い丁番を使ってくれるそうです。

こちらは、R邸の主寝室で使う天然ものの黒檀突板を鏡面塗装に仕上げる途中の様子です。こちらの材料は僕らが特殊な突板をお願いする際の定番の山一商店さんから入れて貰ったものです。やはり大きな柄と歪んだところなどが天然モノならではの迫力でした。

こちらは主寝室の書斎コーナーに作って貰っている、鉄製の本棚のディテールです。

溶接跡が見えてしまうと鉄のシャープさが鈍ってしまうので、扉付きの収納が入る部分や、壁の後ろに隠れてしまう箇所で溶接してもらい、ある程度組み上げた状態から塗装で仕上げてゆくとのことでした。

今回の塗装工場の見学は、港区R邸のうちの担当スタッフの前田君も一緒で、案内してくれたニシザキ工芸の野田さんと上野さんは、港区R邸を見てくれているので、見学最中にも細かい箇所の取り合いなどの打ち合わせになっていました。

最後の幾枚かの写真は、塗装工場の設備で見たことがないものをご紹介します。東京都江東区三好に工場があるのですが、今このエリアはブルーボトルコーヒーを始め、オシャレショップが沢山集まってきており、塗装で発生する臭い対策が重要とのことでした。塗装中に埃が舞わないことも併せて、この一枚のパネルの背部に大容量の排気用フードが隠されているとのことでした。

黒い箱の奥に金属製のクロスが見えているのは、荷物専用の昇降機です。1階と2階の塗装工場と3階の倉庫の間を、家具はこれを使って行き来するそうです。因みに、この写真の手前に積まれている材料も、皆港区R邸の素材でした。ウォールナットのルーバー状のものは、ご家族用トイレの手洗いカウンター下の扉材です。

忙しい中、丁寧に分からないところまで説明しながら案内して下さった、野田さん(中央)と上野さんとの記念写真です。

最後のこちらは、オマケです。ニシザキ工芸本社の打ち合わせ室横にあるショールームのキッチンです。和のテイストも加えた、ユニークな作りで、造作家具屋ならではの細かく工夫も沢山あり、とても興味深い造りとなっていました。