Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

竣工時施主検査立ち合い@平河町T邸リノベーション

平河町T邸

約3か月半の工事期間を経て、ようやくリノベーション工事が終わった平河町T邸マンションリノベーションプロジェクト、竣工時のお客さま検査に立ち会ってまいりました。

リビングの窓際に設けたウッドブラインド付きシャッター扉は、今回の工事で最も気に入ってくださっているものの一つだと言ってくださいました。

今回はデザインアドバイスという形でのお手伝いでしたが、フローリングや建具のデザイン&色味、クロスの選択や柱型にトラバーチン(大理石)を張るアイデアは、全てお客さまからのご希望で、僕らはそれらのチョイスが全体としておかしくないかをチェックするような作業形態でした。

玄関ホールは既存の扉の横にブロンズ色のミラーを設置しております。こちらからのご提案としては、建具の高さに合わせて上下二つに分割して、ミラーのエッジ部分はカット加工してはとアドバイスしておりましたが、お客さまの最終判断で真っ新な鏡となりました。その個所についてまた、お客さまとお話をさせて頂きました。

当日は検査立ち合いだけでなく、ご購入くださっていたダイニングテーブル上のペンダント照明の高さを決定する必要もあったので、現場監督の織田さんと弊社スタッフの前田君に現地で実物を抱えて貰って、お客さまと高さの感触を確認致しました。

現地には電気屋さんにも来てもらっていたので、高さが決まり次第、すぐに取り付け作業に移って貰いました。

ペンダント照明が吊られた状態のリビングダイニングのインテリアです。広いお宅で、色々なインテリア要素が混じったデザインとなっていますが、色味と質感のマッチングはとても良く仕上がったと思っております。ただ、家具が入らないとどうにも締まらない空間ですね…。

ダイニングからキッチンへの扉は、スチール枠にアンティーク加工のガラスを入れたデザインとなっています。

クモリフィルムとは全く違った、独特な質感がトラバーチンや大きな柄のクロスと合って、とても素敵な雰囲気に仕上がっています。

キッチン扉とは打って変わって重厚なのが、こちらの玄関ホールからリビングへの建具です。オーク材の木目を残しながら黒く染色した特殊な塗装と、框扉のデザインを採用しております。その両脇の袖壁には、白い巾木とモールディング、そしてアクセントのケーシングを廻し、その中央はグレー色に塗装して貰っています。
床の仕上げで壁際には灰色の大理石をボーダー状に巡らしていますが、これは結構効いていました。

キッチンの構成はリフォーム前とほぼ同じですが、白い壁部分には縦柄のクロス、アイランドカウンターの壁部分にはカラーガラスを張り、お客さまがルミナベッラで選んでくださった3つのAplomb(アプロム)というペンダント照明がアクセントになっています。

広い主寝室は、片側の壁に壁面いっぱいのクローゼットを作り、

反対側には造作本棚収納を作っています。お客さまが選んでくださったクロスとの相性もバッチリです。

小学生の息子さんが選んでくださったクロスは、中学や高校に進んでも飽きなさそうなヨットの設計図のような柄のクロスでした。色違いで同じ柄のクロスを張り分けて貰っています。

来客用トイレはとてもシックかつスタイリッシュに仕上がりました。腰までの大理石とクロスの見切りの縁材が白いのはおかしいので、グレーに塗装してもらうよう依頼しております。青い付箋が所々についていますが、これは手直しが必要な箇所をマークしているものです。

最後に2枚ビフォーアフターの写真を掲載しておきます。リビングダイニングは仕上げ材が変っただけでなく、玄関ホール回りの収納を削って、その分広くした空間効果が感じられます。

リフォーム前は新築マンション(実際は築浅マンションですが)にありがちな個性乏しい空間でしたが、リフォーム後はちょっとクラシカルでシックで、そして高級感が感じられるような空間に仕上がったと思っております。
Tさまご夫妻、リフォーム工事の無事の完了、おめでとうございます!

建具吊り込み&造作家具据え付け@西麻布N邸

西麻布N邸

西麻布N邸大型ロフト付きリノベーションの現場ですが、仕上げ工事が一気に佳境を迎えました。

リビングダイニングだけで100平米はある広い現場なので、この写真ではそれほど感じませんが、とにかく色々な種類の職人さんが現場に入ってきました。

先回のブログでご紹介した、大理石ダークセルベに真鍮の目地棒を入れながらの壁仕上げは、大分仕上がってきました。

大理石のサイズ違いで埋まっていない箇所もありますが、きれいに出来上がってきたところは、このような表情になってきました。真鍮目地に接着剤がついているのをうまく取れば、ハイブランドのショールームのような雰囲気になってきました。

こちらはリビングダイニングからその壁が折れ曲がってきた玄関ホールの展開写真です。向かって左側は大きなシューズインクローゼット(SIC)の入り口をカラーガラスの袖壁と扉で隠すデザインとなっています。

同じ玄関ホールの反対側の壁には、三連の収納扉が付き、キッチンへの通用口はまだ扉が吊りこめていませんが、その右側の壁には天窓まで大理石張りが進んでいます。

玄関ホールの天窓下に立って見上げると、このように大理石が上へと伸びてゆきます。

キッチンへの通用口は隠し丁番ではディテール的に収まらないので、このようなピボットヒンジを使って納めて貰うことになっています。

建具のつり込みが随所で進んできました。玄関ホール入って正面のシャム柿突板の迫力ある二枚扉と両袖の透明ガラスが吊り込まれました。白太(シラタ)の部分がどのように見えるか、細心の注意を払って作って貰いましたが、うまく行ったようでホッとしております。

こちらは来客用トイレ手前の引き込み扉の吊り込み状況です。このようにフラッシュで作られた建具芯に特注取っ手をはめ込むためのスリットが入れられています。

そこに、この床に置かれた不思議な形状の金物を…

このように差し込んでゆきます。

最後に事前に作っておいたステッチ入りのレザーパネルを張ると、上質感のある素敵な建具へと変身してゆくのです。

リビングダイニングからプライベートゾーンへの入り口と合わせて、柱型隠し、AV収納を合わせた家具の据え付けも始まっています。

こちらは、キッチン入り口横に入る、ビルトイン型ワインセラーをはめ込む造作家具です。右側の奥行きがある箇所の下部にワインセラーが入り、左側には開くと収納できる扉をつけて、下に扉付き収納とカウンター、上部にガラス扉のワイングラス入れが入ります。こちらの扉材などは玄関ホールの扉と同じシャム柿突板(こちらはツヤなし仕上げ)で、造作家具の上部隙間には、ダークセルベの大理石と真鍮目地がまわる予定となっています。

ワインセラーを収める家具の隣に来るダイニングからキッチンへの扉も、同じシャム柿のツヤ無し塗装仕上げとなっています。こちらの引き込み扉に特注取っ手をはめ込んでいる様子です。

ここまであまり作業が進んでいなかった洗面所のカウンター家具も入ってきました。

クォーツストーンのカウンター甲板やアンダーカウンターのシンクはまだですが、凡その形が組み上がってきました。向かって右側の壁には、お子さまたちが座って歯磨きができるようなベンチも取り付ける予定です。

こちらは来客用トイレの手洗いカウンターです。

主寝室には人工レザー張りのヘッドボードが入る予定ですが、その下地が組み上がってきました。

同じ主寝室の反対側の壁には、奥さまが使う予定のミニ書斎テーブルも組み立て始められていました。

 

 

 

 

中国福建省への大理石視察ツアー-3

港区R邸

福建省アモイ市近郊の大理石視察ツアーの3日目は、港区R邸のリビングダイニングの床に張る大理石の現品確認がメインの目的です。

キダマーブルの斉藤さんには同行してもらっていますが、代理店が昨日までの石販の秦さんからこれまでも幾度か他のプロジェクトでお世話になっているアジアングラニットの池田さんに代わり、現地側の代理人と通訳の方も変わりました。代理店によって特異な石種があるそうで、キダマーブルでは幾つかの代理店を使い分けているそうです。

また昨日に続き、巨大な大理石展示場を廻ってゆきます…。

今回捜している石は、当初サンプルを手に入れた際にはブレッチャ・オニチャータ(Breccia Oniciata)だと聞いておりましたが、人によっては、それはゴールデン・ストリングス(Golden Strings)だと言われたりしましたが、とにかく日本では見たことがない特殊な大理石なことは確かなようでした。
英語でも検索を掛けたところ、ベローナ・ゴールデン(Verona Golden)だったり、ツンドラ・ゴールド(Tundla Gold)といった名称で似たものが見つかりましたが、その正体は良く分かっておりませんでした。

中国側の代理人には事前にこちらのイメージ写真とサンプル写真を送っていたので、ある程度目安をつけておいた箇所を回ったので、最初から色味はピッタリのものが見つかりました。前田君が持っているものがこちらのサンプルですから、現物から切り出したと思えるほど似た色味&表情でした。その後に回った展示場でも、ほぼ同じ表情のものが見つかりましたが、ただ、残念ながらスラブの厚み(つまりは石の厚み)が薄すぎて、日本への輸入時に破損してしまいそうなことや、面積が足りないことが理由で採用することは出来ませんでした。

最後に回ったのがこちらの市場でしたが、スラブの厚みも最適で、面積も十分な量が確保できることが分かりました。ただ、1ブロック分のスラブ材に濃淡があり、濃い部分については、こちらがお客さまに出発前に了承をえていたものより黒味が掛かっていました。

日本であれば、仮押さえをお願いした上で、お客さまに事情をお伝えしてサンプルをお見せした上で、最終的な購入を判断できるのですが、中国の場合は仮押さえという概念がないので、ここで購入するしか確保する方法がないのです。購入を見送って、日本に戻ってお客さまと相談のうえで決定した際に、この石材が売れてしまっていれば、また改めて中国に飛ぶしかなくなってしまうということ、まだスケジュール的にも早急に決めないと輸入してからの施工も間に合わないことを勘案して、急遽中2階にある打ち合わせ室で、石割と石取り、さらにどの部分にどの濃さの石を使うかを検討することになりました。

その間に、帰国後にお客さまに色違いのことをご説明するために、それぞれの色味に近いサンプルをお願いして、現物と比較した写真を撮らせて貰いました。
キダマーブルの斉藤さんと前田君と各務で検討した結果、直接自然光が当たらない玄関ホールと来客用トイレと廊下部分に黒っぽい石を使えば、メインで大きく見えてくるリビングダイニングには明るい表情のものを廻せることが分かったので、その場から日本の工事担当のリフォームキュー坂本さんに電話したうえで、この方針で購入したい旨を伝えたうえで、すぐに現地で購入手続きを進めて貰うことに決定しました。

現地で購入する場合は、すべてのスラブをきちんとチェックしておいた方が良いので、市場の人にも手伝ってもらって、重たい石スラブを一枚ずつめくって、隙間から石材に傷や割れ目がないかを全て確認して行きました。

また、それぞれのスラブの横に掛れている数字と、背面に張られている番号を控えて、日本に入ってきた際に現物であることを確認できるように準備しておきました。因みにこの石材の中国名も色々とありましたが、購入したものは云多拉金という名称で、他には云多拉灰や金灰や黄金灰といった名称で展示されていました。

折角中国まで来たのに、うまく仕入れられないとすべてのスケジュールが変ってしまうという、責任重大なプロセスでしたが、何とか無事購入することができたので、一同ホッと致しました…。

この市場はBMGストーンという会社でしたが、他にも面白そうな大理石が多数展示されていたので、ちょっと散歩がてら見学して歩きました。

日本では良い柄のスラブ材がなかなか見つからないネロクラウンやネロマルキーナは黒白根という名称で、良さそうなものが沢山並んでいました。

初日に希少石の市場でも見たオニキスのユニークな柄のスラブも沢山展示されていました。

一枚のスラブだけでは、ただ不思議な模様にしか見えませんが、二枚のお揃いのスラブを本を開いたような張り方(ブックマッチ)で張ると、神秘的な文様になってくるのです。

日本へ戻る最終日の午前中は、少しだけアモイ市の市内観光をさせて貰いました。留守の事務所スタッフへのお土産を探しましたが、海を挟んでお向かいにある台湾土産ばかりで、福建省独自の特産品はほとんど見つかりませんでした。

こちらは3泊したホテルの部屋からのアモイ市の景色です。戸建て住戸は極端に少なく、団地形式の古い建物が街区に沿ってブロック状に立ち並び、大きな道に沿って比較的新しいマンションやオフィスビルが並んでいました。大理石の一大集積地の近くではありますが、大理石を特徴的に使ったようなデザインの建物は見つけることができませんでした。

最後の写真は、帰りの飛行機の窓から見た大理石市場が集まった水头市の空撮です。白い屋根と黒いパネル屋根になっているところのほぼ全てが大理石市場でしたから、どれだけのマーケットが集積しているかが良く分かりました!
3泊4日ながら中身が詰まった大理石視察ツアー、大理石や御影石について、色々な勉強をすることができました。