Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

ラグの現場シーミング加工後にミノッティのソファ搬入

西麻布N邸

お引渡しが終わった大型リノベーションプロジェクトの西麻布N邸ですが、オーシマプロスでお願いしていたラグが現場に搬入されました。

通常は中が空洞になった紙製の筒に巻いた状態で搬入されますが、それだとサイズが大きくなり過ぎてしまうので、芯を抜いた状態で現場に搬入してもらいました。

写真だとサイズが分かりにくいですが、一つで2×3.7メートルの大型ラグです。そのサイズのラグ2枚を現場で継ぐシーミング加工をして貰い、4×3.7メートルの大型ラグを作って貰うのです。最初からそのサイズにしてしまうと、マンションエレベーターでの搬入ができないので、このようなスタイルになりました。

シーミングとは、カーペットを繋ぎ合わせる加工のことです。写真のような粘着剤の付いたテープを、二つのラグの継ぎ目の下に敷き込み、…

専用の小型アイロンで粘着剤を溶かしながら接着してゆきます。二枚のラグの間に挟み込まれているのがそのアイロンです。

手前から始めて、徐々に奥へとシーミングしてゆきます。

こちらが一通りシーミングが終わった様子です。大理石調タイルの上で、ラグが滑らないように滑り止めシートを敷き込んでもらいました。もともとのラグも2種類のラグを工場でシーミングしたものだったので、ラグを裏返すと3か所でシーミングジョイントされたように見えますね。

こちらがシーミングが完成した際のクローズアップ写真です。オーバーロック加工(縁がほつれないように、特殊なミシン二重縫いして仕上げること)部分はうまく継げないのではと心配していましたが、間近で見て問題がないほどきれいにシーミングされていました。

ラグを敷いたところで、ミノッティでお願いしていたソファ類を現場に搬入設置して貰いました。事前の調査でエレベーター搬入は出来ないサイズであることは分かっていましたが、階段では無事荷揚げすることができました。

大型のWHITEソファを現場で荷解きして、

こちらが指定した箇所にレイアウトして、組み立ててゆきます。

ソファの接合部分には、このようなジョイント金物がついており、そこをうまく合わせてゆくと、ピッタリと寄せ合って離れなくなる仕組みとなっています。

暖炉前に置くラウンジチェアと、ソファに合わせてオーダーしたクッションも届ています。

一通りのソファセットが組み上がったところで、お出かけしていたN君が戻ってきて、大喜びでソファを橋に見立てて、遊びまわってくれました!

こちらは暖炉前のラウンジチェアの様子です。家具が入ってきたことで、西麻布N邸の空間も大分落ち着いてきた感じが致します。

 

 

アレキサンダーラモントの魅惑的な素材について 

港区R邸

素敵なインテリア素材を扱っているエルクリエーションの高田さんが扱っているアレキサンダーラモントの素材を見せて頂きました。

イギリス人のオーナーのアレックス・ラモント氏が欧州や日本の装飾美術にインスピレーションを得て、タイに構えた工房でオリジナルの素材研究を行い、壁のパネル素材や家具、照明や装飾小物までを揃えた高級インテリアブラントです。
上の写真は、その素材集の一端でしかないそうですが、天然素材をそのまま使ったものは少なく、素材に独特な加工を施して、鮮やかな色味や、古びたマチエールを作り出しています。

こちらは、ストローマルケタリーと呼ばれるらい麦の茎を寄木細工のように加工したパネルだそうです。職人技で一枚ずつ手作りで作成するので、サイズも自由に作ることができるとのことでした。

色味も5種類(Beechwood / Bronze / Ebony / Mercury Gold / Argento)あるのですが、それぞれ見る角度によって光沢と反射で色が変わって見える、不思議な上質感のある素材でした。

こちらはガルーシャ革、あるいはシャグリーン革と呼ばれるエイの皮を環境に配慮した伝統的な方法でなめして磨き上げたものです(一般的な「なめし」にはクロムなめしが多く使用されますがアレキサンダー・ラモントの工房では、クロムを使わない伝統的な手法によってエイ皮を加工しているそうです。その方が強度がより強く、出来上がりが精巧で、無数の粒子の自然なトーンが美しく、またクロムなめしにより発生する汚染もなく、環境にも優しいものとなっているからだそうです)。天然素材なので、取れるサイズはバラバラだそうですが、要望の応じてこの小さなカード状のパネルを集めて大きなパネルにすることも可能とのことでした。

この白さと儚さが同居した繊細な素材は、石膏と他の素材を混ぜて板に塗って、特殊な乾燥をさせたうえで磨いたものだそうです。他にもブロンズや、漆、金箔やパーチメント(山羊皮)等の特殊加工素材も数多く揃えています。

それらの魅惑的な素材を使って、多様な置物や調度品も作っているとのことでした。当然ながらお安い金額ではありませんが、ここぞといったインテリアの見せ場で使いたいと考えていたところで、港区R邸のお客さまから、玄関ホール入って正面の壁の素材の提案がなかったので、う少しユニークな素材を提案して欲しいとのご依頼があったので、早速ストローマルケタリーのサンプルを借りてお見せすることになりました。

こちらが現地で、玄関ホールの素材として床の大理石や、横壁のサルバトーリの壁素材と並べた様子です。残念ながら、この部分の壁については他の素材を使うことになりましたが、素材自体はとても気に入ってくださったので、ダイニングの壁に使ってはどうかとのお話になりました。

リビングダイニングの奥に四角いコンクリートの柱型があるのですが、その正面はオニキス系の大理石を背面から照らして見せ、背部にはワインコーナーを作る予定となっていました。ダイニング側にはフレームを廻した塗装壁を作って、アートワークを後日探そうという方向で進んでおりましたが、その部分にこのストローマルケタリーをとの話になり、見積用の図面を前田君に作って貰いました。

 

 

 

 

お引越し後の施主検査って…@西麻布N邸

西麻布N邸

通常のマンションリノベーションでは、工事の最後に清掃が入り、そのタイミングで設計者とお客さまの検査が入り(別の時も一緒の時もあります)、それを是正したうえで、お引渡しと取り扱い説明で、その後にお引越しという流れになっています。しかし、この西麻布N邸では、近隣の方々からの工事騒音への注文や、工事の難しさでやり直し工事が幾つか発生してしまったことで、工事の終わりを待たずに清掃が入り、先に取り扱い説明を行ってすぐにお引越しをして、お客さまのご家族が暮らし始めて、少し落ち着いてからお客さまと設計者の検査に入るという変則的なスケジュールになってしまいました。

壁にはアートが掛かって、家具も入って暮らし始めた状態での検査だと、細かい部分まではチェックすることができないのではと心配していましたが、却ってNさまご夫妻が使ってみて、使い勝手の悪い箇所や、傷やズレなどを事前にチェックしておいてくださったので、スムーズに進めることができました。

モルテーニのダイニングテーブル(大理石エンペラドールの天板のフィリグリー)とレザー張りのダイニングチェア(チェルシー)、そしてオーシマプロスにお願いしたラグが入ったダイニングスペースです。天井から吊り下げられたアーテリアーズのダラス・シャンデリアの根元を指さして、説明をしている様子です。

ダイニングは以後のワインセラー置き場は、上部の大理石張りがまだ未完成なので、どのようなスケジュールで完成させてゆくかを現場監督の石山さんと相談しました。

既にNさまご夫妻お手持ちの高級ワインが入った状態のワインセラー収納です。セラーの左はフリッパー扉を開くとワイングラス収納とカウンターになっています。右に細い収納を挟んで、キッチンへの引き戸となっています。全て目の位置を合わせたシャム柿の突板で作って貰いましたが、カッコ良い感じに仕上がりお客さまもとても喜んでくださっています。

来客用トイレがある扉部分をチェックしています。トイレを流す音がリビング側に聞こえるので、何とかできないかとのご相談がありました。レザー張りの引き戸は新しいものですが、その奥のトイレの扉は既存の扉を転用したものなので、そちらを防音仕様にする見積りを作って貰うことになりました。

ロフトへの階段の天井開口部の塗装がうまく出来ていない箇所に付箋を貼っていますね…。工事側のミスばかりを指摘していると、施工業者も面白くないので、きちんと施工されている箇所もお客さまにお示しして、如何に難しい工事かを説明したうえで、それをよくぞきれいに仕上げてくれたことまで伝えるようにしています。ここでは天井の真鍮見切りが素晴らしい出来でした!

階段の足元部分はコーキングがやせて、凹んでしまっている箇所があったので、それを指摘させて貰いました。担当スタッフの前田君がチェックした箇所を全て平面図にマークしてくれています。

こちらもとてもきれいに仕上がった個所です。リビングからプライべートルームへ繋がる扉と一体で作った造作家具です。柱部分の表面にはエッジをカットした鏡を三枚並べてみました。その右側の収納には、AV&テレビ関係のアンプやDVD機器などが収納されています。左側は扉が開いていますが、閉めると一つの家具のように見えるデザインとしています。

一通りの検査が終わったので、新しいダイニングテーブルに座ってこれからの補修方針やスケジュールを相談させて頂きました。

こちらが当日に前田君がチェックしてくれたメモで、

それをその後、お客さまからの追加のご要望や、施工側の意見も取り入れて作り直した資料がこちらです。これをベースに、施工会社側で未成工事や是正工事、追加工事に分類して日程調整しながら完成までのスケジュールを組んで貰うことになります。