Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

ボード張り工事@中央区S邸

高級高齢者向けサービスアパートメントS邸

木軸の壁下地とLGSの天井下地が先週出来上がっていた中央区のMレジデンスS邸の現場では、今週はボード張りが始まっています。

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まずは天井のボード張りからです。以前はリビング部分とダイニング部分が分割されたデザインの空間でしたが、LDが一体となった大きな空間になっています。

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まだ、造作家具が入っていないので、壁面がガタガタしているように見えますが、造作家具(作り付け家具)をはめ込むことで、壁面もスッキリした表情に仕上がる予定です。

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共用の排水竪管とトイレを繋ぐ排水管が、一部壁下地から飛び出てしまっていますが、こちらは予定内の寸法におさまったので、造作家具の巾木の範囲で隠してしまいます。

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キッチン側からの排水管も問題なく繋げたようです。家具の背面には、後日配管状況をチェックできるように点検口を設けることとなっています。

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主寝室とリビング・ダイニングを馬路切る壁の下地もできています。壁面中央の向こう側にベニヤ板が張られているのは、後日壁にアートなどを飾る際に釘を打てるように入れて貰った下地です。左側の壁が三角形に飛び出ているのは、引き込み扉の袖壁にスイッチ類を入れると壁厚が厚くなってしまうので、目隠しとスイッチボックス入れを兼ねた工夫の一つです。

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主寝室とリビングダイニング間には、一か所明り取りの窓を設けています。ご夫婦別の寝室で寝るスタイルとなっているのですが、お互いの気配を感じられるように、この縦長の枠の中に乳白フィルムを貼ったガラスを入れることになっています。

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主寝室の天井の設備の確認を行っている様子です。照明の位置とスプリンクラー、自火報や空調設備の点検口などがレイアウトされているので、その最終確認をしています。

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先回のブログでも紹介した、4枚の引き戸が交差する部分にも天井が張られていますす。

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天井はフラットに枠なしで納めて、竪枠だけナラ材のホワイトオイル仕上げで立てて貰っています。引き戸のレールがポケットの中にまで続いています。

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枠がある箇所とない個所があり、かつ巾木も一部なくなったりの複雑な構成になっています。こちらは巾木とボードの仕上げをフラットに納めるためのプラスチックの見切りが入った巾木周辺のディテールです。

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もう一つの寝室側の壁面にもボードが張られ始めています。天井に設けた段差にエアコンのリターンを取っています。

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リビングの壁にテレビを壁掛けとするので、その下地を補強して貰っている様子です。テレビの下には特注でAV機器ラックを作って貰う予定です。

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来客用トイレの横には、既存の冷水と温水のヘッダーが来ています。こちらは今回移設しないこととなったので、造作のコート掛けを作りその内部で箱で隠して、上部と横から点検できるようにすることになっています。

 

 

壁は木製軸組、天井はLGSの下地工事

高級高齢者向けサービスアパートメントS邸

以前、LGS(軽量鉄骨)下地のメリットとデメリットについて書きましたが、Mレジデンスの現場は、既存状態に合わせて、壁の下地は木軸で、天井下地はLGSで組み直すこととなりました。

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LGSと木軸では作る職人さんの種類が違ってくるので、どうしても人工数(現場に入る職人さんの数)が多くなり、非効率的になってしまうのですが、今回は既存に合わせることと事前に注意を貰っていたので、仕方がありません。

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こちらは玄関ホールからリビングへの入り口付近の天井を見上げたアングルの写真です。実はここに4本の引き込み扉が合流する複雑な間取りをなっているので、壁と天井も特殊な作りとして貰いました。4本の引き戸は、①玄関ホール-リビング、②リビング-主寝室、③主寝室-洗面、④洗面-玄関ホールと回遊できる構成となっています。

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非常に判りにくいですが、その4本の引き戸の個所を見上げた写真です。全てが天井からの吊り込み戸となっているので、天井部分にはLGS下地に挟まった形で調整しやすい木軸が差し込まれています。

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壁と天井の下地工事と同時進行で設備工事の配管も進んでいます。来客用トイレには背面抜きの便器用の汚水管(左奥)と手洗い用の雑排水管(右手前)が既に配管されています。中央少し左奥に見える銀色の竪管が合流式の共用排水管です。

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この銀色の排水管は建物を縦に貫通している管なので動かすことができません。そこへ合流する排水の取出し口の位置と高さも既に決まっているので、こちらから上手く分岐配管しながら先ほどの来客用トイレ、手洗い、更にキッチンの排水を取る必要があります。綿密なした打ち合わせをしておいたこともあって、立体的に交差しているように見えますが、きちんと勾配を取った上で配管が接続されていました。

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別の竪管へと排水される洗面内の洗濯機の雑排水管(茶色の管)とトイレの排水(床に布巾を突っ込まれた丸穴部分)も何の問題もなく配管されていました。

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天井のLGS下地の間から、赤いキャップをされた管が降りてきていますが、こちらはスプリンクラーヘッドの配管です。こちらの住宅は高層ビル内にあるので、全ての部屋の共通設備としてスプリンクラーが設置されています。写真で見ると非常に簡単な管のように見えますが、スプリンクラーには常時非常に高い水圧が掛かっており、これを再配置するためには、建物全部のスプリンクラーが接続されているのを一端切って、その後再配置するという大作業になります。建物側が指定する業者でなければ工事ができないのが一般的で、また、レイアウト変更には消防署への申請が必要になることもあるので、移設の為の費用もとても高額になってしまいます。

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スプリンクラー移設の申請用に作った天井伏図です。 スプリンクラーには幾つかの種類がありますが、今回は1種で2.3mの離隔距離でしたので、仮にレイアウトしたスプリンクラーヘッドから2.3m半径円(図中緑色の線)を書き込んで、カバーできていない個所がないかを確認します。実際には、照明や天井裏の空調用ダクトとの絡みなどがあり、何度も設備会社さんとやり取りして、ようやく決まったレイアウトです。

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他にも、既存の窓枠やカーテンボックスを、壁移設に合わせて調整するようお願いしていた個所の確認等も細かくチェックさせて貰いました。

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毎週の定例打合せでは、高島屋SCから2人、建築工事の青から2人、設備側から2人、造作家具の現代製作所から1人、僕らの事務所から2~3人と大所帯での打合せとなるので、毎回寝室-2に仮の打合せテーブルを組んでもらって、このような形の打ち合わせをしています。

 

 

 

ビンテージマンションの墨出し位置確認

番町H邸

解体が一通り終わった番町H邸の現場に、墨出し位置の確認に伺って参りました。

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墨出し(すみだし)とは、解体後の床や床下地に、新しく立てる壁や家具の位置を墨(すみ)で描く作業のことです。現場監督の坂本さんや担当大工の町永さんが、僕らが作った図面に沿って、写真のように地面に図面を書いてくれています。赤いマーカーは、この部分に壁下地のLGSを立てるという印です。

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このようにスッキリとした現場の床に墨で描かれた図面の位置が間違っていないか、既存壁との取り合いや配管との絡みで問題がないかを確認してゆきます。

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一番気になっていたのが、この個所です。既存の設備配管が床から立ち上がった位置と、キッチン裏のユーティリティーを設置する個所の取り合いです。地面を這っているガス管は、フローリングのための遮音下地とフローリングの厚みに隠れるので、問題はないのですが、排水の立ち上がりだけは壁裏に隠したいと考えておりました。斜め壁の位置をある程度現場に合わせて調整できるようにフレキシブルに考えていたので、何とか壁と配管がぶつかることは避けることができました。

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一人踊っているように見えますが、墨出しで確認した位置にキッチンのカウンターが建つ様子を体で表現して、お施主さまの奥さまに確認して頂いている様子です。

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遊び盛りのお子さまがいらっしゃるHさまご夫妻は、子どもたちの遊び声や走り回っている音で近隣のお宅に迷惑を掛けたくないとのことで、隣戸住宅との戸境壁にも遮音壁を作ることなりました。壁際に沿ってLGSが建てられているのがこの遮音壁の下地です。因みに、既存の壁裏にも断熱材が充填されており、それだけでもある程度の遮音性能は確保されていましたが、また新たに遮音壁を作って、念には念を入れたいとのご意向でした。

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現場では他にも設備配管の位置調整なども進められていました。ビンテージマンションならではの床スラブ下を配管が通る(つまり下の階の住戸の天井裏を排水管が通っている)システムなのですが、スラブからの立ち上がりを少しでも下げるために、床シンダーコンクリートをドリルで削って、曲がり役物(エルボー)をなるべく床低くに埋め込む作業をして貰っています。

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このような地道な作業を重ねることによって、家具内に上手く設備配管を隠して、床上のデザインの自由度を高めることができるのです。現場の監督、そして職人さんたちに感謝です!