Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

オーダーキッチンの組立て@仙石山T邸

仙石山T邸

リフォーム工事進行中の仙石山T邸の現場に、オーダーキッチンの天板が入ってくるタイミングで、担当スタッフの神崎さんと一緒に現場を見に行って参りました。

既に一日前からキッチン部材の搬入から大まかな組立てまで終わっている段階でした。

ちょうどそこに、大の大人4人掛かりで木材養生された大きなパレット状のものが搬入されてきました。

現場の床に組まれた仮の木製台に慎重に置いていきます。

裏返してみると、裏側には大きな四角い箱がついています!
実はこれがクオーツストーンで組まれたキッチン天板なのです。そして、箱のように見えるものが、天板に接着されている特注のステンレスシンクを裏側から見た所なのです。

養生を剥がすとこのようになっています。ステンレス製のシンク裏には、静音と結露防止のための防振材が貼られた後、水性の結露防止剤が塗布されており、このように白く仕上がっています。

洗剤やスポンジ用のポケットの裏側にもしっかり結露防止剤が塗られており、カウンターとの接着部分もクオーツストーンと10ミリほどの隙間が取られており、水を流した時の振動や熱がカウンターの直接伝わらないように細かく細工されているのが分かります。

カウンターの横面にも天板と同じクオーツストーンが接着されています。小口面だけでなく、内側の折り返し部分も少し見えてくるので、そこまで同じクオーストーンが巻き込まれていることが判るでしょうか…。

こちらは天板を載せる前のキッチン下台で、シンクしたから接続するための給水給湯管と排水管が先行配管されています。右側の隙間は、既存再利用するミーレの食洗器を納めるスペースとなっています。

こちらはオープンなペニンシュラ(半島)型のカウンターの背面の調理カウンターです。中央左側の白く見える部分にコンロが入り、その直上で吊戸棚に隙間がある部分がレンジフードの取付け場所となっています。吊戸棚はリビングダイニング側からしっかりと見えると、家具のようにも見えるように、ニッシンイクス社のレオラスティックの突板を貼って貰っております。

今回のキッチンレイアウトは、プライベートゾーンへと通り抜け可能なキッチンとなっておりますが、プライベート側から見た背面キッチンの様子です。手前の大きな隙間に国産の冷蔵庫がすっぽりと入り、その上には鉄板焼きプレートや蒸し器、カセット型のコンロ等の大物を入れるフラップアップ扉付きの吊収納となっています。

リビングダイニングの折り上げ天井の突板張りも終わっておりました。こちらも既存の折り上げ天井の形状をそのまま使い、間接照明がテラス部分に温かみを加えるために、キッチン吊戸棚と同じレオラスティック突板を貼って貰っています。

リビングダイニング空間の雰囲気が折り上げ天井の木板でグッと引き締まってきました。
壁に立て掛けられている部材は…、

ウォールナットの突板で作られた廊下部分に作る本棚の部材となっています。こちらはちょっと色味が濃い目のウォールナット材を選びました。

アップで見ると、なにやら細い目地が入っていますね。どのように目地がデザインに活きてくるのかは、竣工時までお待ちください!因みに、今回のオーダーキッチンはアルノさん、本棚等の造作家具はお馴染みの現代製作所さんにお願いしています。

まだ、未完成のキッチンに壁もボード張りの状態ですが、ここから色々な仕上げ材が組み込まれて、仕上がってゆくさまが僕らも楽しみです。

→リフォーム工事完成後の仙石山T邸の様子をご覧ください。

八掛(はっかけ)の建具枠

千代田区M邸

八掛(はっかけ)とは建築の専門家でもあまり聞かない単語ですが、和風建築の技法の一つで、建具や窓の枠を薄く見せるための加工方法のことです。壁の仕上げ材が塗装やビニールクロスでは使えませんが、千代田区M邸のように左官仕上げ(今回は本漆喰仕上げです)の時にのみ使える、特殊な枠の作り方です。


八掛枠の特徴を簡単に言うと、枠の見付寸法(壁正面からみた枠の幅)を最薄に見せるディテールの工夫です。

枠の切断面をみると判るでしょうか…。

担当スタッフで副所長の前田君が初期に書いてくれた八掛枠の断面スケッチがこちらで…、

それをベースに施工会社の青が施工図として書いてくれた枠図がこちらです。赤字チェックは、またその施工図をカガミ建築計画でチェックバックした指示です。

上記のようなスケッチから図面へとのやり取りを経て、塗装された八掛の枠材が現場に入ってきました。

早速に、大工さんが八掛枠を組み立ててくれています。

アップで見ると、このようになっています。

これだけではどうなるか分からないので、なるべく早くに仕上がった状態の写真を載せるようにいたしますが、枠の形だけでの問題ではなく、ヒンジやラッチ、ドアチェックなどとも絡んでくるカ所なので、色々と細かいディテール調整が必要になってくる、苦労の多いディテールなのです。

八掛で作られた三方枠(左右と上で門型に組まれた枠)が取付けられた様子です。これは洗面所から廊下への枠材で引き込み扉の枠となっています。

こちらは主寝室から、奥の書斎スペースとウォークインクローゼット(WIC)への扉枠となっています。右手の書斎への扉は開き扉で、左手WICへの扉は引き込み戸と違う開き勝手ですが、枠の見え方は同じ八掛としています。


アップで建具枠コーナーを見るとこのようになっています。壁面に本漆喰が塗られると、枠材がほぼ消えてみるという不思議な枠なのです。

その他の部分も現場は着実に進んでいます。正面の掃き出し窓の上を見ると、リビング天井に隠蔽型のエアコンが設置されています。

吹き出し口と吸い込み口が横並びになる型のエアコンなので、チャンバーを組むためにこのような箱を設置して、その中にエアコンを吊り込むという面倒な仕様になってしまいました。

この日は、お客さまが現場見学に来てくださることになっていたので、以前確定していたサンプルをベースに、造作家具屋の大沼さんが作ってくれた仕上げサンプルを用意して…、

現地の光で最終確認して頂き、OKのお返事を頂きました。

取付け中の枠材や、隠蔽型エアコンなどをご説明しながら、一通り現場を見て頂きました。

図面を見るだけでは、立体的な空間を把握するのが難しいと、ずっと悩んでいらっしゃった奥さまも、ここまで出来上がってくると、全体像が見えてきたと喜んでくださいました。

真鍮目地を使ったインテリアの作り方

渋谷M邸

最近、ピンタレストなどのインテリア事例写真でも数多く見かける、金属目地を使ったインテリアですが、渋谷M邸でもお客さまのお好みの真鍮目地を沢山使っています。

まだ施工途中の段階ですが、ダイニングの壁に真鍮目地を縦に入れ、隙間に大理石とカラーガラスと鏡をランダムに入れた壁を作っています。

材料の真鍮目地棒はこのようなもので、事前にサイズに合わせて工場でカットしてから現場に入れて貰っています。

現場監督の滝川さんが打ってくれた墨に従って、まずは真鍮目地棒を壁全面にビス止めしてから、隙間のサイズに合わせてやはり工場カットしてきた大理石を慎重に張ってゆきます。

職人さん一人で丸一日の作業で、ようやくここまで進みました。

壁のレイアウトは、弊社担当スタッフの岸本さんが作ってくれた、この展開図に従って割り付けて貰っています。

二日掛かってようやく壁一面の大理石を張ることができました。空いている隙間には、寸法の数字が書き込まれていますが、ガラス屋さんが現地に来て実測していったものです。

石(マジェッタ・ホワイト)が張られた部分はこのような様子で…、

隙間の部分はこのようになっています。良く見るとわかるのですが、カラーガラスと鏡を張る部分は、石とは厚みが違うので、パーチクルボードで下地の厚みが調整されています。

因みに、天井廻りに取り付けたアルミスパンドレルとの取り合いは、このようになっています。

主寝室でもヘッドボード側の壁面に真鍮目地をふんだんに使っています。

こちらはヘッドボードからそこに連なるお化粧コーナーの造作です。

真鍮目地棒だけのアップ写真です。L字型の金物を直角に交差する部分だけは、フランジ部分が重なってしまうので、このようにカットして使っています(L字型金物の場合、縦部分をウェブ、横で固定する部分をフランジといいます)。とにかく緻密で正確かな作業が必要なのが金物目地の取付け作業なのです。

化粧コーナーも真鍮と塗装棚板とカラーガラスとアンティコスタッコの左官にレザーパネルが入り組んで、さらにそこにコンセントや間接照明も絡むという複雑なデザインで、取付け作業の職人さんも苦労しています…。

因みに、こちらがこの寝室造作の為に、施工会社のリフォームキューが作ってくれた施工図です。

トイレの壁にも真鍮目地が入っています。

下地のベニヤ板に墨が打たれ、真鍮目地棒だけが取り付けられても、一体どのように仕上がるか想像できないと思いますが、こちらは出来上がりを楽しみにしていてください。

真鍮とは関係のない部分でも内装材の取付けが進んでいます。こちらはテレビボードとなるリビング壁のイタリア製フィアンドレの大理石柄大判タイルの取付けです。

ダークマルキーナという柄のタイルですが、アップで見ても本物の大理石に見える精緻なプリント技術です。こちらも端部を細かく見ると、似た色に焼き付け塗装をしたL字アングル金物を取り付けています。

キッチンも真っ白だったキッチンパネル部分に、フィアンドレの大判タイルが張られました。こちらはアトランティック・グレー色です。本物の大理石だと厚みと重量があって、こんなにスピーディーにかつ薄く仕上げることができませんので、まさに大判タイルならではのメリットを最大限に活かしたデザインだと自負しております。

キッチンの大判タイル越しに真鍮目地入りの大理石壁を見たアングルです。

その他、カラーガラス張りの壁&扉の特注取っ手付き扉も吊りこまれていました。写真ではまだまだ未完成ですが、実際にはあと少し仕上げ作業でリフォーム工事の終わりが見えてきました。