Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

FGボードを使った曲面(カーブ)壁の作り方

赤坂N邸

高層マンションリフォームの赤坂N邸では、部屋の中央にカーブした壁が出てきます。ちょうどこのカーブ壁を作っているタイミングで工事現場を見ることができたので、簡単に解説いたします。

広々としたリビングの全容の写真の右手中央に曲がった壁があります。赤坂岬の突端(笑)のような形状のカーブ壁です。

少し角度を変えて近寄ってみると、このような形になっています。ちょうど右側の大工さんが貼っているのが、FGボードと呼ばれる壁ボード材です。石膏系の不燃ボードながら、濡らすと曲げることができて、乾いた時には濡らした際の形状を保持するという優れものの材料なのです。

上の写真で張っていたのが、この小さなFGボードでした。バケツに入れた水にスポンジを浸して、たっぷりの水分をFGボードに吸わせてから、カーブ壁に沿って押し付けてゆきます。

カーブ壁の内側から見ると、まだLGS(軽量鉄骨下地)の下地が見えているので、どのようにカーブを設定しているかが分かりますね。

僕ら設計側が、何を基準にどのようなカーブを作りたいかを図面化したものがこちらの寸法入り平面詳細図です。

図面の指示に沿って、床に墨を出して、LGSのランナーを曲げて配し、そこに壁下地を立ててからFGボードを張ってゆく算段となっています。

FGボード一枚張りでは、継ぎ目の部分が出っ張ってしまうので、継ぎ目部分を違えながら二重張りをして行きます。こちらのボードは大分大きなボードですね。


三枚の連続写真です。左から、まずは端部をビス固定し、そこからゆっくり力を掛けてカーブに沿ってボードを固定してゆきます。まだ寒い室内空間でしたが、職人さんたちは汗まみれで頑張ってくれていました。

ボードの下側端部は、L字型の金属巾木を入れていたので、そこに差し込みながらカーブを固定してあります。

中央に横継ぎ目が見えますが、下部は2枚目のボードを張ったことで、カーブが滑らかに仕上がっています。まだFGボード一枚張りの上部は、ボードの継ぎ目が出っ張っていて、スムーズなつなぎ目になっていませんね。

ようやくカーブ壁の全容が固まってきました。背部では、共同設計者の3D空間創考舎の石川利治さんが、施工をお願いしているリフォーム会社のタキズミの現場監督の池谷さんとこの後に続く工事の打ち合わせをしてくれています。

実はカーブ部分は、壁だけでなく、天井の折り上げ部分にもあります。扇型の大きなLDの天井に、窓の形に沿ってこのような折り上げ天井ラインが作られています。

その最先端に埋まっている天井カセット式エアコンの先には、さらにスクリーンが埋め込まれる予定なので、その墨出しも行われていました。

カーブ壁から玄関・廊下側を見返したアングルの写真です。カーブ壁からこの廊下壁に沿って、先日決定した左官材の が塗られてゆくことになります。

玄関側からみると、このようになっています。床に小さな穴が開いていて、電気の線が出ているのは、超コンパクトな床付けアップライト照明の配線となっています。

この日は、お客さまのNさまも現場に来てくださったので、仕上げ材の最終確認もさせて頂きました。

ステレオ音響、テレビなどのAV機器にもこだわりのあるお客様なので、壁裏や天井裏には大量のCD管(写真の赤いチューブで内部に後から配線を通すことができる)が仕込まれています。

お客さまも、ほぼ形が決まって見えてきたカーブ壁の出来をとても喜んでくださっています。


床の幅広ヘリンボーンフローリング張り

渋谷区Q邸

渋谷区Q邸のご夫妻二人が最初からこだわっていた、床フローリングの幅広ヘリンボーン柄張りが始まりました。

と言っても、すぐに釘を使ってフローリングを張ってゆく訳ではありません。まずは専門のフローリング屋(一般の大工さんではなく、フローリングを張る専門家です)がフローリングの精度を確かめながら、仮並べをしてゆきます。

接着剤をつけず、合板の直角な角を利用しながら、実(サネ・フローリング同士を平面的につなぐオス(凸)とメス(凹)型のデコボコ)の働き幅を確認してゆきます。

こちらがアップで見たフローリングのサネです。へリングボーン張りの場合は、このサネを切る位置が、通常のフローリングと変わっており、その精度が重要になるのです。

精度は相当に良いことが確認できた所で、実際にノリ(接着剤)とタッカーを使ってフローリングを張ってゆきます。

左上の部分に接着剤が塗られていますが、このようにヘリンボーンの山の登頂部分に墨を打って、そこに合わせながら張ってゆきます。

まずは横一列にジグザグに張ったうえで、一カ所だけ垂直方向に延びていっていますが…、

実はそこに床付けのコンセントが仕組まれているので、その正確な位置出しをしていたのです。この写真で職人さんが床の下地ベニヤをカットしているのが、床付けコンセントの場所となります。

これは床下地を張る前、数日前の様子なのですが、向こう側から手前でビニールまかれた線が丸まっている個所まで電線が繋がっています。一旦大よその位置を出したうえで、電線は巻き取っておきます。

電線の上に敷かれたベニヤ板に、へリングボーン張りの墨を打ち、そこをジグゾーカッターで孔をあけてゆきます。

コンセント埋め込み孔だけでなく、電線を埋め込む溝も掘ってゆきます。この時点で、右側からヘリンボーンのフローリング張りが迫ってきている状態です…。

巻き取っておいた電線を溝に埋め込んで、四角い孔部分に巻いておいておきます。

プロのフローリング屋さんの腕は確かで、複数人(今回は4人)が有機的にお互いを補助しあいながら作業が進んでゆくのが凄い所です。

現場に並べられたこれだけのフローリング材の山が見る間に無くなってゆきっます。因みに、今回採用したこの幅広のヘリンボーン張りのフローリングは望造さんに特注でお願いしたものです。

張り始めから2時間ほどでここまで進んできました。

気がつけば、先ほどの床付けコンセント部分まで張り上がっていました!
今回はへリングボーン張りはリビングダイニングだけですが、廊下や寝室やウォークインクローゼットもフローリング張りなので、あと2日程の日程で全てのフローリング工事が終わりそうです。

クレーン(ラフター)を使っての建材荷揚げ

千代田区M邸

千代田区M邸は、ヴィンテージマンション4階のお部屋ですが、大きなテラスがあり、道路に面しているので、クレーン(ミニラフター)を使って建材を揚重しています。

これだけ広いテラスがあると、上階での荷受けも必要最小限の人手で済むので相当に楽だそうです。今回揚重しているのは、フローリング下地用の遮音マットです。

テラスから顔を出して下を覗いた様子です。十分に立派なクレーンに見えますが、正式名称としてはミニラフターとなるそうです。今回は道路と建物の間には電信柱や電線がなく、植栽のみなので、これも作業が楽になる要因だそうです。
因みに、クレーン車はトラックの荷台にクレーンがあり、トラックの運転席とクレーンの操縦室は別となりますが、ラフターの場合は、運転席と操作席が一緒のものを指すそうです。

室内に積み込まれた遮音マットと床下地材です。これだけの量がラフターを使うと2時間ほどで荷揚げすることが可能だそうです。これを地階の駐車場からエレベーターを使って搬入すると、養生手間や他の住人の方との兼ね合い等もあるので、丸一日は掛かるとのことでした。
費用としては、5万円(ラフターの賃料)+4万円(道路の警備員2名分)+3千円(道路使用許可料)の計10万円弱となるそうです。費用は掛かりますが、スピードとマンション住民の方々との調整、養生手間などを含めると、全然楽だとのことで、今後も荷揚げでラフターを2~3度使うことになりそうだとのことでした。

こちらは施工会社の現場監督の石坂さん、そのボスの樋口さん、そして社長の片岡さんと弊社副所長の前田君での現場定例打合せの様子です。

左官で仕上げる壁と建具枠の納まりのことが一番の話題となっております。今回は八掛(ハッカケ)枠という木製枠の縁が薄く見える特殊な枠で考えており、その検討を何度も行ってきました。

現場のコンクリートの床スラブです。下階の梁で囲まれた中央部分のスラブがクリープ現象で下がっており、レベル(水平度)が取れていなかったので、そのくぼんだ部分を薄塗のモルタルで補修して貰いました。

部屋全体のスラブレベルを調整する際には、セルフレベラーという液体を流し込む方法もあるのですが、スラブ段差や配管用の溝などがあるので、手作業の薄塗モルタル補修となりました。

床付けコンセントを設置する予定の場所は、少しでも厚みを確保したいので、このように薄塗モルタルを塗らないでくれています。このような細かい部分が青ならではの配慮で、ありがたく思っております。