Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

在来工法浴室の配管と防水

渋谷区Q邸

現在工事進行中の渋谷区Q邸の浴室とシャワーユニット、お客さまと施工会社の青と設計の僕らで、色々と相談した結果、在来工法で進めることになりました。

Q邸には大きな浴室が一つ、さらに主寝室の奥にはシャワーブースがあり、それぞれを在来工法で作るべきか、オーダーユニットのシステムで作るかのメリットデメリットを何度も相談させて頂きました。
因みに、僕らはマンションリフォームでは在来工法の浴室は普段はお受けしていませんが、①低層マンションであること、②新耐震以降のマンションであること、③整形なプランのマンションであること、④地盤が良い場所に立っているマンションであること、⑤在来工法浴室の防水の保証についてのリスクを十分に理解して下さるお客さまであることの条件がすべて合致した場合は、検討させて頂いております。

こちらは在来工法の排水菅の接続口となる、バス兼トラップです。写真の黒い縁(ツバ部分)の部分がモルタルとフラットに埋め込まれていますが、ツバの部分まで防水塗膜を作ることで、床下に水が回らないようにするための排水金物となっています。

トラップの先には塩ビ製の排水管が接続されており、この写真のように床下の段差部分を通ってマンション共用部でもある竪管へと接続されています。

こちらは先ほどの浴室に比べて、すこし遅いペースで作り始められているシャワーブースの木製下地です。裏側にしたプラスチックバケツの上にレーザー測量機が置かれていますが、ちょうどこの四角く囲まれた部分がシャワーブースとなります。

反対側から見返すと、シャワーブースの立上り部分が木で作られているのが分かります。

1週間ほど進んだ現場写真で見ると、もう少しシャワーブースらしく組み上がってきているのが分かりますね。シャワー手前、写真の左側にはトイレが来るので、トイレの排水管が設置されています。因みにトイレの排水管から分岐されて、壁の内部で上へと繋がっている管は通気管で、この先にドルゴ通気弁を設けることで、トイレの排水がスムーズになり、かつトイレを流した際に他の葉汚水口からゴボゴボする音が出ないようにする機能があります。

シャワーブースからの排水管とトイレの排水管が交差する床下の高さはないので、トイレからの排水はシャワーを迂回するルートで配管して貰っています。

シャワーブースの内部は、奥の壁に埋め込みの水栓を設置し、その左横にシャンプー等を置けるニッチ棚を設けるデザインとなっています。

こちらはシャワーブース用のコーナー排水継手です。やはりこの黒いツバの部分まで勾配を持たせたモルタルでフラットに仕上げ、その上から防水層を張り付けてゆく形の排水金物です。

そのコーナー継手の上、仕上がった状態で設置する排水目皿とトラップのセットを…、

の片岡社長がお客さまご夫妻に説明してくれました。排水部分の清掃を気にしていらっしゃる奥さまも喜んで下さいました。

シャワーからの排水管は、以前コア抜きしながら、シンダーコンクリートに埋設されていた排水管を見つけた部分に接続します。

身長差のあるご主人と奥さまのシャワーの設置高さの最適寸法を測るため、同じマンション内の仮住まいにお邪魔して、シャワー高さを確認させて頂きました。

この日は、排水金物のチェックだけではなく、コンセントと照明等のスイッチ類の位置確認のためのお打合せもお客さまご夫妻と一緒に進めさせて頂きました。

ここはキッチン部分ですが、左側のコンクリートの壁や、右側の木製下地の所々に四角い白いカードが貼られているのが見えるでしょうか?

事前に竹田さんがスイッチやコンセントの位置をお客さまが確認しやすいように、スイッチやコンセントの形に切った紙を現場に貼り付けてくれたものなのです!

現場をご夫妻と回りながら、スイッチやコンセントの位置、高さなどを手直ししながら確認させて頂きました。

こちらはキッチン奥にある、集中コントロールパネル部分です。インターフォンや床暖房、スイッチ類やセコムのパネルも一緒に纏めたものです。

ダイニング上の折り上げ天井の下地も見て頂きました。ダクトのルートを変えることで、ダイニングの天井が約20センチほど上がったこと、お客さまもとても喜んでくださいました。

お客さまとの確認が終わった後も、現場は打合せ続きです。施工会社青の岡田さん、片岡さんたちに、現代製作所の吉岡さん、オーダーキッチンのリネアタラーラの現場担当の原口さんと電気のムラデンの井上さんを交えての打合せです。

キッチンはこれまで2度ほど現場に来てもらい、図面を修正して貰っていましたが、キッチンと造作家具の取り合いや、キッチン内の照明器具やスイッチの取り合いを確認させて貰いました。

原口さんが測った寸法と、青の現場監督の岡田さんが測った寸法がずれていた部分については、再度皆で実測して、正しい寸法を確認しました。

電気工事で使う照明器具のデモ機を持ってきてくれたので、点灯して明るさや色味を確認させて貰いました。キッチンと造作家具で使う照明器具が違ってしまうと、使い勝手でも色味で問題が発生してしまうので、共通して使える照明器具類を確認することができました。

RC壁へのコア抜き

千代田区M邸

ヴィンテージマンションリノベーションの千代田区M邸では、マンションの管理規約で、構造壁ではないRC壁(鉄筋コンクリート壁)についてはエアコンや床暖房用の穴を後から空けて良いとのルールがあります。ただ、雑壁(構造壁でないRC壁)と言っても鉄筋を切ってはいけないので、まずはレントゲン撮影で鉄筋の位置を探っていきます。

ホワイトボードにはコンクリート内部検査と書かれていますね。黄色く見える部分がRC像の柱と壁で(黄色は以前吹かれていた断熱材です)、元々2か所孔が開いていましたが、その上下で鉄筋がない部分を探ってゆきます。

こちらの機械がレントゲンを照射するマシンとなります。高さに合わせて架台を組み替えます。

レントゲン撮影する壁の背面側にこのような黒いシートを張り付け…、

壁裏のシート位置に合わせて、レントゲンを照射します。

何枚か撮影した後、下に停めた車に戻って20分ほどで、このようなレントゲン撮影された原寸大のフィルムが焼き上がります。白く格子状に見えているものが壁のコンクリート内に馬こまれている鉄筋となります。

それらの原寸レントゲン写真を、撮影した位置と照らし合わせながら、鉄筋の位置を壁に記してゆきます。

上の穴は既存の穴で、その直下に7センチほどの鉄筋の隙間を狙って孔を穿孔してゆきます。

こちらが孔をあけるコア抜きの機械です。コンクリート壁にピンを打ち込んでボルトで機械を壁に固定して、丸い歯を高速で回転させてコンクリートに穴をあけます。1本につき2~30分ほどの、それほどの騒音がない作業で孔が空いていきます。

中央の2つが元々の孔で、その下に新たな孔が2本、上に1本空きました。最後の1本を上に開ければ作業は終わりとなります。

きれいに抜かれたコンクリート、いわゆるコアサンプルがこちらです。コンクリートの老朽化(中性化)を測る時にはこちらのサンプルの方が重要になるのですが、今回はこちらは廃棄するゴミとなります…。
給湯機からの追い炊き用の管と床暖房用のペアチューブを通す穴を、何とか無事あけることができてホッとしております。

ちょうど10年前にも、高輪のヴィンテージマンションでレントゲン撮影からコア抜きの流れを、もう少し詳し説明したブログ記事もありますので、どうぞそちらもご覧ください。

当日は、もう一つ別の作業が入っていました。窓のガラスの交換作業です。これまではシングルガラスがが行ったアルミサッシでしたが、管理組合の許可を受けたうえで、真空ガラスに交換します。ただし、2か所だけは、建築基準法上の「延焼のおそれのある部分」として網入りガラスが入っており、この2カ所は交換することができませんでした。

こちらが現場に入ってきていた、真空ガラスのスペーシアです。高価なガラスですが、その分だけ窓の断熱性能を向上させるので、費用対効果は十分にあるものだと考えています。

こちらのマンションは、窓外ほとんどすべてに小さなベランダがついており、窓外に立ってガラス交換作業ができるので、とてもスムーズに工事が進みました。

現場定例会議の中身と意味について

渋谷区Q邸

解体時に、元々の壁や天井の下地が木製で作られていた渋谷区Q邸の現場は、新しく建てる壁下地や作り直す天井の下地も木製で進めることになりました。最近のマンションやオフィスでは、仕事のスピードを重視して、LGS(軽量鉄骨)を下地材として使うことが多いのですが、LGSと既存の木製下地が混じると、工種が増えてしまうので、今回は木製下地で進めることになりました。

現場に入ってくれている大工の矢野さんが、抜群の腕を持つ大工さんであることも、木製下地で進めることになった一つの理由かもしれません。

因みに「大工さんの腕」という表現は、細かい細工ができる腕という意味もありますが、それ以上に図面と現場監督の意図を素早く理解して、後にどのような工事が来るのかを考えながら、計画的に大工作業を進めてゆくことができるという意味の方が強くなってきています。

かつてのリビングに並べられた木製下地用の材料です。木製下地作りは、LGSに比べるとスピードは落ちますが、実は後になっての変更や細かい作りにはメリットもあるのです。

に施工をお願いする場合は、毎回現場定例打合せを設けて、週に一度は現場を僕らは設計者が訪問して、工事の進め方や細かい材料の取り合い、素材の承認などの打ち合わせをコンスタントに詰めるようにしています。

この日は、造作家具と建具をお願いしてる現代製作所の吉岡さんが、写真の染色した突板サンプルを持ってきてくれたので、その色見本を見比べています。お客さまがお手持ちのモルテーニの家具に合わせた色で家具を作りたいとのご希望があったので、中央上にある小さなユーカリの木板サンプルに合わせた色味を作って貰いました。ウォールナットやオークを染色したものに加えて、日本では珍しいユーカリの突板をアンモニアで処理したものも作って貰いました。
密閉したビニール袋の中に突板サンプルを入れ、液体のアンモニアが入った容器を袋の中に入れておくと、気化したアンモニアで突板の色が深く濃くなるというやり方で、欧州はウォールナットが希少になってしまったので、比較的安価で豊富に手に入るユーカリ材をこの方法で染めて使っているケースが増えているそうです。

因みに上記の写真は、他の木の突板(オーク材)サンプルを、簡易的にアンモニア処理をしてくれた際の記録写真です。上下並びの突板の上一枚をアンモニア処理したことで、全く違った色味の突板に変わっていることが良く分かりますね。因みに、上の突板には節穴があったそうで、そこをパテで埋めた部分は変色していませんでした。

今回の施工会社・青の体制は現場監督の岡田さんに、サブの監督の池田さん、見習の川野さん、そして毎週の定例には社長の片岡さんも参加してくれています。こちらの現場担当は副所長の竹田さんで、現代製作所の吉岡さんもこの日は同席してくれています。

こちらは、水回りの床下地の状況です。以前のブログ記事でも書いた通り、配管を埋めていたシンダーコンクリートをコア抜きとパッカーで大々的に壊しましたが、余計に穴が開いてしまっていたカ所については、ここの在来工法の防水書類を施す関係上、平滑に直しておく必要があり、穴の部分にモルタルを詰めて貰っています。


こちらも同様です。ただ、新たに浴室の排水を集める目皿の部分や、そこからは排水管竪管へと繋げる部分については、穴埋めしておりません。

その翌週の現場定例時の現場の様子です。壁下地の木製軸組工事も大分進んできました。

キッチンのレイアウトが決まったので、リネアタラーラが用意してくれた設備図に沿って、床下ピット内の給水給湯管、ガス管と排水管も接続されました。

因みにこちらがリネアタラーラが用意してくれた設備平面図です。

スラブを貫通している排水竪管への接続部分の1メートル分が耐火二層管或いは耐火のVP管になっていなかったので、そのことを片岡さんに確認して貰っています。後で調べたところ、建築基準法129条の2の5→建告示1422を根拠にVP管を
使用することで被覆なしでOKとのことが分かり、このまま進めることになりました。

在来工法で作るシャワー室は、スチールサッシを黒で引き締めることとなっており、テンパーガラス(強化ガラス)用ヒンジで黒いものを探したところ、ジョープリンス竹下(因みに製品メーカー名です)こちらの製品(写真下部、左側のメカ)しか見つかりませんでした。ちょっとスモークしたような不思議なニュアンスのある黒色なので、特注で作るスチールサッシの色をどうするかの打ち合わせです(その後、ジョープリンスはニュアンスの無い黒色のヒンジを売りだすことになりました…)。

フローリング材で壁を作る予定ですが、見切りを焼き付け塗装したスチールとしていますが、その焼き付け塗装色を選んでいる様子です。

毎週の定例会議で、この先に工事が始まる部分についての考え方や具体的な進め方を協議し、その中で設計側や現場監督から挙げられたトピックを詰めてゆきます。宿題も出ることも多いですが、それでも現場に集まった各関係者と頭をひねりながら、ひとつづつ細かいことが決まっていくのです。