Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

大理石&大理石調タイルの使い分けについて

青山P邸

青山P邸の工事現場では、大理石と大理石調タイルを張る作業が始まっています。

dsc_3208_pt

玄関ホールとダイニングの間にある壁には、グリジオ・ビリエミという大理石が貼られています。右手側に縦に一本スリットが入っているのが見えますが、そこはステンレスのコの字型の金物が入っており、後日ガラスが取り付けられる予定です。

dsc_3224_pt

こちら廊下突き当りの壁は大理石調のタイルです。アドヴァンのイマルミ・グリジオという600角のタイルです。

dsc_3209_pt

玄関からの廊下がここで突き当たって、右へと曲がるとプライベート廊下へと変わってゆきますが、その結節点に当たる部分にこのタイルが貼られています。

dsc_3211_pt

洗面所と浴室には、やはりミネラルDリビング(アドヴァン)という大理石調タイルを使っています。

dsc_3215_pt

タイル張り作業を接近してみた写真です。タイルの目地幅が均一になるように、このような十字型の黒いスペーサーを挟んで張ってゆくのです。本物の大理石を壁に貼る場合は、「眠り目地」といって目地幅をゼロにすることが可能ですが、硬くてその分脆いタイルでは、最低でも2ミリほどの目地が必要になってくるのです。因みに、床の場合は特にマンションでは二重床となると、人の荷重で揺れるので、大理石でも眠り目地はできません。

dsc_3148_pt

キッチンのガスレンジ正面に当たる壁は大理石調タイル張りで、

dsc_3150_pt

キッチン床は本物の大理石張りです。

dsc_3139_pt

玄関床の本物の大判大理石張りで、

dsc_3151_pt

そことフラットに繋がった通り抜け型シューズインクロゼットのタタキ部分にも大理石を貼って貰っています。

dsc_3141_pt

来客用トイレの床と壁も大理石張りとしています。

dsc_3231_pt

本物の大理石が手前に張られていて、奥に大理石調タイルが貼られている様子です。
やはり色味や柄などに由来する迫力は、真正の大理石の方が迫力があります。ただ、石の厚みや貼る職人さんの手間、費用などを考えると、どこもかしこも大理石という訳にはいかないのです。その時に、奥の方に見える壁や水が掛かるような壁(本物の大理石は水が染みこむので、洗面やキッチンに使う場合は十分は撥水加工が必要になるのです)には注意が必要なので、そんな部分に大理石調タイルを使うことで、上手くメリハリを出すようにしています。
また、部屋に入ってすぐの部分などで、目につきやすい個所や間近でテクスチャーが見えるような場所にはなるべく本物の大理石を使い、ちょっと離れた場所や頻繁に水拭きするような個所には大理石調タイルと使い分けるようにしています。

dsc_3551_pt

3日後には、大理石壁にガラスの袖壁が取り付けられていました。職人さんが間違って突っ込まないように、養生テープがバッテン状に張られています。職人さんがちょうどガラスを固定するためのコーキングを打っている最中でした。やはり本物の大理石は光が当たると特にきれいに見えます。

dsc_3549_pt

ガラスコーキング作業を反対側のダイニング側から見返した様子です。

dsc_3538_pt

先ほどタイルが先行して貼られていた洗面脱衣室には、ダブルボウルのシングが乗る洗面カウンターが設置されていました。その上部にタイルが貼られていないのは…

dsc_3552_pt

こちらで調整中のメディスンキャビネットが取り付けられるからです。両側には鏡付きの扉の収納キャビネットで、中央にはチーク突板の飾り棚が付いたちょっとおしゃれな構成としています。

dsc_3536_pt

来客用トイレにはウォールナット突板張りの手洗いカウンターが設置され、

dsc_3555_pt

SICには大容量の靴収納棚が設置されました。

 

レザー張り建具のディテール研究&工場訪問 

元麻布I邸

元麻布I邸の玄関ホールからリビングへの建具を人工レザー張りにしたいと考えています。これまでも、幾度か家具の天板や建具などに人工レザーを張って貰った経験がありますが、スティッチを入れた際の糸の細さや、その間隔といったディテールのことや、どのようなことができて、何ができないのかを研究したいと以前より思っていました。

r5552205_pt

今回の建具製作をお願いしている現代製作所の藤田さんから、レザー加工を依頼している工場を紹介して貰い、スタッフの前田君と一日掛けて栃木県の工場まで打ち合わせ兼見学に行って参りました。
先方では、東京からわざわざ設計者が来るというので、何を知りたがっているかすら判っていないようでしたが、欧州のハイブランドで使われているレザー張りの建具や、レザーを使った取っ手ディテールなどの写真を見て貰いながら話をさせて貰ったところ、食いつくように写真を見ながら、これは出来るが、あれはどうやって作っているか判らない等、工場の人たちが集まって話をしてくれました。

r0058280_pt

事前に、現代製作所経由で制作を依頼していたサンプルを見せて貰いながら、スティッチの線が曲がってしまう理由やコーナーでスティッチの間隔を合わせることが如何に難しいかの説明も聞かせて貰いました。

r0058281_pt

スティッチの線が曲がってしまう理由は、下地として使っているベニヤ板の繊維にあるとのことでした。先ほどのサンプルの背面を見たところですが、ベニヤの繊維の方向に沿って縫っていると、微妙な力具合で繊維に負けてしまうそうです。
それでは、下地をベニヤ板代わりに繊維質がないMDFやアクリル板で作ったらどうかと聞いてみたところ、試してみる価値はありそうだと言ってくれましたが、硬い下地だと針が折れてしまう可能性もあるとのことでした。

実際に作業をしているところを見せて貰いたいとお願いして、2階の作業所に連れて行って貰いました。

r5552220_pt

ミシンは家庭用ミシンを大きくしたようなものでした。貼る下地に合わせて作った大きなT定規(T字型のガイド)のようなものを使って、手で支えながらゆっくり5センチずつを縫ってゆく地味な作業でした。

r5552229_pt

こちらが縫製用のミシンです。かなり使い込まれた年季物でした。

r0058305_pt

厚手の下地だと、縫ってゆくうちに針が熱を帯びてしまい、そのことが原因で糸が切れてしまうことがあるそうで、職人さんが独自に工夫して、ミシンの上にオイルポットを取り付けて、糸をオイルに潜らせて熱を帯びることを防いでいるそうです。

r0058310_pt

濃い木のガイドも職人さんが作ったもので、それに沿って大きなレザーパネルを動かしてゆきます。表面が濡れているように見えているのがオイルの跡で、縫製後にきれいに拭えるそうです。

r0058298_pt

こちらは二つの針と裏地テープで、二枚のレザーを継ぎ張りできるミシンです。

r5552237_pt

一枚のレザーにこちらのミシンを使うと、8ミリ間隔でスティッチを入れることができます。

r0058296_pt

こちらは職人さんが今まで作業しながら作った型紙です。企業秘密だから、写真は撮らないでと最初はいわれましたが、この写真を見せても、誰も何だかすら判りませんよと言ったところ、笑って許してくれました。

dsc_3058_pt

工場には、沢山の人工レザーや厚手の布のロール生地がストックされていました。

dsc_3057_pt

レザーを縫い合わせる糸もあらゆる色のストックが置かれていました。

dsc_3063_pt

こちらが工場の1階の様子です。昔は技術を活かして、色々な細工をした家具やパネルなどを制作していたそうですが、残念ながら今のレザー家具の主流はファミレスのベンチ型シートがほとんどで、作り甲斐のあるものが少なくなってきたと嘆いていました。それだけに、欧州のレザー家具や金物などの細工は刺激になったようで、僕らが依頼したレザー建具も良いものに仕上げたいと力強く言ってくれました。

 

 

 

四方向通り抜けキッチンの横浜伊勢山Y邸プロジェクトがスタート

横浜伊勢山Y邸

新しいプロジェクトが横浜市西区伊勢山で始まります。築年数5年未満の築浅マンションで、広さは165平米のお部屋です。

%e3%82%a4%e3%83%a1%e3%83%bc%e3%82%b8%e3%82%b9%e3%82%b1%e3%83%83%e3%83%81-3

こちらは、始めにご相談があった際に、プレゼンテーションで使ったリフォーム後のイメージスケッチ提案図です。その後の打ち合せで、少しずつディテールや色味が変ってきましたが、概ねこの方向でデザインが纏まってきています。

dsc_3987_pt

こちらが現状写真です。大きなLDKは、広さは十分にありますが、大きな2枚の引き戸でリビングとダイニングが仕切れるようになっていることで、却って狭く感じてしまうことや、

dsc_4011_pt

こちらの写真に写っているオープンスタイルのキッチンの動線が不便で、買い物をして帰ってきた際には、このLDを通るか、大きくプライベート廊下を回り込まないとキッチンに辿り付けない構成をなっていました。

r5552914

こちらで考えたリフォーム案では、LDは仕切りをなくして一体の大きな空間として、動線上の問題があったキッチンは、図のように4方向から抜けられるデザインで考えています。当然、既製品キッチンは使えないので、オーダーキッチンで組み上げる予定です。

r5552900_pt

お客さまは、以前からこの規模のマンションを中古でご購入して、僕らにリノベーションデザインを一括して任せてくださり、グレードアップ工事完成後に再販売なさるというビジネスを展開しているYさまで、不動産購入や販売のお手伝いもしてくださっている不動産会社のNさんもご一緒に打ち合わせをさせて頂いております。

dsc_3983_pt

床に並べられた素材類が、今回のプロジェクトで使いたいと考えて現地に持ち込んで仕上げ材サンプルです。

r5552913_pt

使いにくかったキッチンカウンターで、プランをどのようにリフォームすればよくなりそうかを、Yさまにご説明している様子です。

r5551867_pt

以前、こちらのマンションの近くでリノベーションのお手伝いをした横浜市O邸のインテリアイメージがお好きだとのことでしたので、そちらの竣工写真を見て頂きながら打ち合わせをさせて頂きました。

dsc_3998_pt

不整形な玄関ホールは、天井の高さも変えて、玄関&玄関ホールとして作り直す予定です。

dsc_3999_pt

こちらの来客用トイレも、面積に余裕がある割に、手洗いカウンターが小さく、コンパクトに纏まり過ぎているので、長いカウンターに大き目の手洗いボウルを設置できるレイアウトにリノベーションする予定です。