Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

解体で現れたキッチン部分の逆梁への対処法

原宿K邸

先日アップした原宿K邸のブログ記事で、解体時に予想していなかったカ所に逆梁が現れて、キッチンのレイアウトを大幅変更することになった件のその後の経緯です。

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上のCGが解体前まで進めていたキッチンのデザインです。ダイニング側から見て、左側手前にはテレビを置いたカウンター、右手には、正面奥のガスレンジから、出窓前のシンクを経て、大きくL字に曲がったカウンターが対面で伸びてきていました。キッチンに入って左側の調理機器を置くカウンターや冷蔵庫が設置されていました。
解体で現れた逆梁はせい(高さ)が20センチ近くありましたので、冷蔵庫を20センチ嵩上げすれば、物理的には同じレイアウトが可能ですが、それでは使い勝手は極端に悪くなってしまうので、急遽キッチンレイアウトを大変更することになりました。

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元々築古で図面もきちんとしたものがなかったので、何かあった時の為に解体をリフォーム工事本体とは別契約にしてあり、解体後に改めてリフォーム案を検討しお見積りを作り直してからリフォーム本体工事契約を結ぶスケジュールとしていました。時間的には3週かのほどの余裕があったので、ご主人さまにもオーダーキッチンのアムスタイルの代官山ショールームに足を運んで頂きました。

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やむを得ない事情とはいえ、急ぎでリフォーム案を変えると、何か大きなポカミスをしてしまうことがありがちなので、キッチンについてはここまであまり打ち合わせに参加してくださっていなかったご主人さまに立ち会って頂くことで、冷静な判断をすることができたと思っています。

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当初案(左)と最終的に決まった案(右)のレイアウトを比較した図面です。
シンクとガスレンジのレイアウトは全く変わっていません。図面上部に紫色の点線で示した部分が逆梁の個所で、新しい案では冷蔵庫をダイニング側に少し出っ張らせて、その代りにその部分にビルトインのスチームオーブンと調理機器を置く収納カウンターを設けました。また、中央部分のスペースが少し大きかったので、幅40センチのアイランドカウンターを設けることになりました。

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こちらが最終的なレイアウト(実際には面材の色や細かいレイアウトは、ここからもさらにグレードアップされていますが…)をCGにして貰ったものです(CGは2枚ともアムスタイルにお願いしています)。ガスレンジがある正面の壁には、以前ショールームで確認したイタリア・フィアンドレ社の大判タイルをブックマッチの形で張って貰うデザインとなっています。

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キッチンレイアウトの変更とその見積りも上がってきて、他のコンクリートが傷んだ箇所の補修見積りも揃ったので、最終的な金額とスケジュールをご説明したうえで、リフォーム本体工事の契約をお施主さまと辰(しん)の間で結んで頂きました。
ここまでまどろっこしいプロセスを辛抱強く見守ってくださったKさまご夫妻、どうもありがとうございます。いよいよ、ここからリフォーム本体工事開始がいよいよ開始です!

新規プロジェクト・成城Z邸が始まるまでの経緯

成城Z邸

新しいプロジェクト、成城の低層マンションリノベーションプロジェクトZ邸が始まります。お施主さまのZさまから初めてメールでご連絡を頂いたのが2015年の5月ですから、約2年前のことになります。頂いたご相談メールは以下のような内容でした。
「初めまして。先日、成城に約160㎡の中古マンションを購入しました。〇月中の引っ越し目標に不動産仲介会社が候補に挙げたリフォーム会社の中から選んだ会社とリフォーム内容を進めている段階です(リフォーム会社とはまだ契約はしてません)。生活形態が一般的ではないのか、彼らが作ってくれたリフォーム案がどうもしっくりきません。自分の中で好みやイメージはあるのですが知識がないので具象化できない状態です。」とのことでした(メール文章は、プライバシー保護の為に、一部改変しています)。

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具体的な引っ越しのスケジュールがあるので、基本的にはここまで相談してきたリフォーム会社で工事は進めたいとのことで、この案に対して有料で構わないのでアドバイスが欲しいとのご依頼でした。基本的には、初回にこちらの事務所に出向いて頂いてのお打ち合わせは無料としておりますので、事前に送って頂いていた資料を見ながら、何が問題なのか、僕らがアドバイスをするとすれば、どのようなことが可能かをご説明させて頂きました。
それに対して、Zさまから「今日はありがとうございました。人さまのリフォームなのに真剣で親切な対応感謝します。特に全体像のバランス、細かい造作(モールディングのお話)など眼からウロコでした。短時間でリフォームを終わらせようということ自体が間違えなんでしょうね。少し考えてみます。
今後、アドバイスを賜るかどうか改めてお返事させてください。本日は本当にありがとうございました。」とのご連絡を頂きました。その後、幾度かスケジュール感覚や具体的な費用等についてもメールでやり取りさせて頂きましたが、どうしても引っ越しのスケジュールを動かせないので、今回は諦めますとのご連絡がありました。

その後、3か月ほど経ってから、再度以下のようなメールがZさまから届きました。
「お久しぶりです。以前、成城マンションのリフォームのことで相談させていただいたです。お願いがありメールさせていただきました。
その後、リフォーム会社さんに基本設計料をお払いし、プランを練ってきました。リフォームプランも大筋が決定し、ショールーム巡りをしています。マンション組合からのリフォーム許可も出ました。まずは解体をしてみないとわからないことがあるので今月△日くらいから解体が始まる予定で、その前に工事契約をすることになっています。
しかし、どうもひっかることがあり本当に契約してよいのかな、とこの後に及んで躊躇しております。一度、各務さんに有料のご相談をお願いしたいです。」との内容でした。

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もうそのリフォーム会社との打合せも4か月以上続けてきたそうで、図面も見積りも出来上がっており、マンション管理組合への申請・許可も下りており、あとは契約を結ぶだけで、工事着工時期まで決まっているとのことで、この段階から何か有用なアドバイスすることは難しいのではと考えて、当日はお返事をためらっておりました。

メールを頂いた翌日に、他のお客さまと一緒に青山にあるミノッティのショールームに伺ったところ、何とそのZさまと偶然鉢合わせになったのです!

元々Zさまは、少しクラッシカルな雰囲気の空間に、モダンでスタイリッシュなミノッティの家具を入れたいとのご要望で、ミノッティの家具を採用した経験が豊富な建築家をインターネットで探して、僕らのことをお知りになったそうです。そういった意味では、ミノッティのショールームでお目に掛かる可能性はあったのでしょうが、ご相談メールを頂いてお返事をどうお返ししようか迷っているタイミングでしたので、何かのご縁を強く感じました。その場では、ご案内をしたいたお客さまもいらしたので、お返事を致しますとだけお伝えして、事務所に戻ってからすぐにご連絡して、お打ち合わせの日程を決めさせて頂きました。
(写真は、その後にミノッティ・ショールームにご一緒した際のもので、参考写真です。)

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改めて、リフォーム会社が作った図面と見積りを拝見しながらお話をさせて頂きました。残念ながら図面は平面図とイメージ図的な展開図が数枚しかなく、お見積りもZさまが指定した部材だけはスペックされていましたが、それ以外は一式見積りばかりで、全体的に経験不足なことがすぐにわかるような内容でした。Zさまが不安に感じていた内容と、こちらが指摘したことがほとんど一致したこともあり、リフォーム会社との契約はひとまず見送ることになりました。
そこから先は、①お施主さま側のアドバイザーとして打ち合わせに参加しながら、その会社と計画を進めることにするか、②スケジュールを大幅に伸ばしたうえで、僕らがデザイン・設計をゼロベースからやり直すか、或いは③僕らが良くお願いしているリフォーム会社の幾つかの候補の中から選んだ会社に設計施工でリフォームをお願いして、僕らがデザインアドバイスで入るか(こちらの方が②よりスピーディに工事に入れます)の3つの方針を比較検討して、最終的には③の方針で、かつリフォーム会社はリフォームキューで担当者は岩波さんと森井さんで進めることになりました(写真は後日、スタッフの竹田さんと一緒に成城のお宅を訪問した時のものです)。

ここまでのリフォーム計画を進める際には、ずっと僕らのブログを参考にしてきてくださったそうで、お願いすることになったリフォームキューの担当の岩波さんのこともブログでご存じだったことも信頼関係を築く上では大いに役に立ったようです。

以上のような経緯を経て、改めて成城Zさまのお宅の全面リフォームのお手伝いをすることになりました。Zさま、どうぞ宜しくお願いいたします!

 

 

 

 

 

 

乾式二重床の際根太とLGSと木製の複合下地組など

赤坂S邸

無事解体工事が終わった六本木S邸の現場では、遮音乾式二重床システムが組み上がり、LGSの壁下地作りが始まっていました。

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毎回、このような工事現場の写真をブログにアップしていると、「結局はどこの現場でも同じようなものではないですか?」と聞かれることがあります。確かに見た目はどちらの現場でも似たようなことが起こっていますが、やはりそれぞれの現場で特殊な事情や色々なレベルでの問題も発生しているのです。
ちなみに、今回の六本木S邸の現場では、以下のことが通常とは違っており、現場打合せを重ねながら解決しています。

  • 耐震ダンパーがついた特殊な構造の建物であること
  • 同時に、10件以上のリノベーション現場がマンション内で動いており、エレベーター確保だけでも大変なこと
  • 元々の作りから、天井裏を走っているダクト経路が複雑で、それに合わせた天井の作りが難しいこと

等です。以下、順不同ですが、現場で工事をお願いしているリフォームキューと打合せ、確認していった事項を書いてゆきます。

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墨出し寸法の確認は、毎回解体工事後の重要なイベントです。とはいえ、乾式二重床の場合はコンクリートのスラブ(床板)に細かく寸法を墨出ししても、二重床で隠れてしまうので、スラブ上での墨出しと二重床のベニヤ下地上の墨出しの二段階での寸法確認が必要になります。

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こちらは搬入設置されたオーダースタイルのユニットバスの鏡面ステンレス・アングルピース(通称アンピ)と洗面側の枠や壁との取り合い確認です。通常オーダーユニットバスは白いビニールでカバーされたアンピまでしか作ってくれないので、そこから先をリフォーム本体工事側でどう処理するかを決めなければなりません。処理方法としては、木枠を取り付けるか、ステンレス枠を作るか、壁として塗装またはクロスで仕上げるかの3通りが考えられます。今回はもっともオーソドックスな木枠取り付けで仕上げることになっています。

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ちなみに、こちらが設置された東京バススタイルのオーダーユニットバスの箱です。左側の白いビニールでカバーされた箇所がガラスの扉とガラス壁で、右側がタイル壁の裏側になります。ベニヤ板を貼ってある部分は内側から将来的に取っ手などを取り付けられるように下地補強されている個所になります。

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外側はチープに見える(?)オーダーユニットバスですが、内側はこのようにシックに仕上がっていました。

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床に転がっているこちらの部材は、遮音乾式二重床システムの独立際根太(きわねだ)部材です。遮音性能を高めるための二重床システムも、マンションでの採用が増えて、騒音問題が社会的に取り扱われる回数も増えるとともに研究が進んできており、そのシステムも変わってきました。以前は際根太(壁際で二重床を支える部材)は壁に固定されていましたが、それではこの際根太から壁に振動が伝わってしまうとのことで、現在は壁から独立際根太を浮かせて(少し離して)床に接着剤で固定する方法が主流になってきました。

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このように、床スラブに梁等での段差があっても、独立際根太と固定床脚を段差に応じてつなげてゆくことで、遮音性能が確保された乾式二重床をくみ上げることができるのです。

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壁間仕切りのLGS下地は床スラブから直接立ち上がり、その壁下地を挟んだ形で、乾式二重床が組み上がってゆく様子です。壁下地に二重床がくっつかないように、隙間にスペーサーが挟まれているのが見えるでしょうか?

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壁と天井の下地(最終的にボードを張って壁や天井とするための骨組み)材は基本的にはLGSで組んでもらっていますが、部分的には木製の下地材も混ぜてくれています。特に細かい寸法調整作業が多く発生する扉の枠廻りにには木材が多く組み込まれています。工事を担当していくれている大工の内原さんは、元々がLGS職人だったのが大工作業もできるようになったので、LGSと木の組み合わせがとてもスムーズにできています。

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写真は現場に運ばれていた枠材です。これらは事前に工場で集成材で作られた枠材やカーテンボックスで、LGSに組み込んでゆくのです。

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引き込み扉(壁のポケット内に扉を引き込むタイプの引き戸)の枠廻りは、特に作り方が複雑なので、このような複合的な作りになっています。

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ブログの最初にダクト経路が複雑だとのことを書きましたが、こちらがスケルトン状態の天井を見上げた様子です。写真中央に左下から右上に3本のダクトが通っていますが、これらがキッチンの給気と排気に、トイレの排気ダクトです。さらに写真左端にも浴室からの排気ダクトが通っています。浴室からの排気ルートは、この部分の天井を高くしたいので、3本のダクトが通っている個所に移動を検討しています。

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キッチンの排気もガスコンロの場所が変わったので、このようにダクトを大きく曲げる形で、天井の形が変にならないように調整して貰っています。ダクトには火災予防の点からも、内部&外部結露の問題や振動による音の問題からも、ロックウール断熱材でカバーしてゆく必要があります。

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職人さんが切っているのが、そのロックウール断熱材の基材です。直線部分を巻くのは簡単ですが…。

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曲がったダクトのコーナー部分は、このように三角形に切ったロックウール材を扇状に繋げてきれいにカバーしてゆくのです。職人さんの丁寧な技に感服です!