Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

八掛(はっかけ)の建具枠

千代田区M邸

八掛(はっかけ)とは建築の専門家でもあまり聞かない単語ですが、和風建築の技法の一つで、建具や窓の枠を薄く見せるための加工方法のことです。壁の仕上げ材が塗装やビニールクロスでは使えませんが、千代田区M邸のように左官仕上げ(今回は本漆喰仕上げです)の時にのみ使える、特殊な枠の作り方です。


八掛枠の特徴を簡単に言うと、枠の見付寸法(壁正面からみた枠の幅)を最薄に見せるディテールの工夫です。

枠の切断面をみると判るでしょうか…。

担当スタッフで副所長の前田君が初期に書いてくれた八掛枠の断面スケッチがこちらで…、

それをベースに施工会社の青が施工図として書いてくれた枠図がこちらです。赤字チェックは、またその施工図をカガミ建築計画でチェックバックした指示です。

上記のようなスケッチから図面へとのやり取りを経て、塗装された八掛の枠材が現場に入ってきました。

早速に、大工さんが八掛枠を組み立ててくれています。

アップで見ると、このようになっています。

これだけではどうなるか分からないので、なるべく早くに仕上がった状態の写真を載せるようにいたしますが、枠の形だけでの問題ではなく、ヒンジやラッチ、ドアチェックなどとも絡んでくるカ所なので、色々と細かいディテール調整が必要になってくる、苦労の多いディテールなのです。

八掛で作られた三方枠(左右と上で門型に組まれた枠)が取付けられた様子です。これは洗面所から廊下への枠材で引き込み扉の枠となっています。

こちらは主寝室から、奥の書斎スペースとウォークインクローゼット(WIC)への扉枠となっています。右手の書斎への扉は開き扉で、左手WICへの扉は引き込み戸と違う開き勝手ですが、枠の見え方は同じ八掛としています。


アップで建具枠コーナーを見るとこのようになっています。壁面に本漆喰が塗られると、枠材がほぼ消えてみるという不思議な枠なのです。

その他の部分も現場は着実に進んでいます。正面の掃き出し窓の上を見ると、リビング天井に隠蔽型のエアコンが設置されています。

吹き出し口と吸い込み口が横並びになる型のエアコンなので、チャンバーを組むためにこのような箱を設置して、その中にエアコンを吊り込むという面倒な仕様になってしまいました。

この日は、お客さまが現場見学に来てくださることになっていたので、以前確定していたサンプルをベースに、造作家具屋の大沼さんが作ってくれた仕上げサンプルを用意して…、

現地の光で最終確認して頂き、OKのお返事を頂きました。

取付け中の枠材や、隠蔽型エアコンなどをご説明しながら、一通り現場を見て頂きました。

図面を見るだけでは、立体的な空間を把握するのが難しいと、ずっと悩んでいらっしゃった奥さまも、ここまで出来上がってくると、全体像が見えてきたと喜んでくださいました。

真鍮目地を使ったインテリアの作り方

渋谷M邸

最近、ピンタレストなどのインテリア事例写真でも数多く見かける、金属目地を使ったインテリアですが、渋谷M邸でもお客さまのお好みの真鍮目地を沢山使っています。

まだ施工途中の段階ですが、ダイニングの壁に真鍮目地を縦に入れ、隙間に大理石とカラーガラスと鏡をランダムに入れた壁を作っています。

材料の真鍮目地棒はこのようなもので、事前にサイズに合わせて工場でカットしてから現場に入れて貰っています。

現場監督の滝川さんが打ってくれた墨に従って、まずは真鍮目地棒を壁全面にビス止めしてから、隙間のサイズに合わせてやはり工場カットしてきた大理石を慎重に張ってゆきます。

職人さん一人で丸一日の作業で、ようやくここまで進みました。

壁のレイアウトは、弊社担当スタッフの岸本さんが作ってくれた、この展開図に従って割り付けて貰っています。

二日掛かってようやく壁一面の大理石を張ることができました。空いている隙間には、寸法の数字が書き込まれていますが、ガラス屋さんが現地に来て実測していったものです。

石(マジェッタ・ホワイト)が張られた部分はこのような様子で…、

隙間の部分はこのようになっています。良く見るとわかるのですが、カラーガラスと鏡を張る部分は、石とは厚みが違うので、パーチクルボードで下地の厚みが調整されています。

因みに、天井廻りに取り付けたアルミスパンドレルとの取り合いは、このようになっています。

主寝室でもヘッドボード側の壁面に真鍮目地をふんだんに使っています。

こちらはヘッドボードからそこに連なるお化粧コーナーの造作です。

真鍮目地棒だけのアップ写真です。L字型の金物を直角に交差する部分だけは、フランジ部分が重なってしまうので、このようにカットして使っています(L字型金物の場合、縦部分をウェブ、横で固定する部分をフランジといいます)。とにかく緻密で正確かな作業が必要なのが金物目地の取付け作業なのです。

化粧コーナーも真鍮と塗装棚板とカラーガラスとアンティコスタッコの左官にレザーパネルが入り組んで、さらにそこにコンセントや間接照明も絡むという複雑なデザインで、取付け作業の職人さんも苦労しています…。

因みに、こちらがこの寝室造作の為に、施工会社のリフォームキューが作ってくれた施工図です。

トイレの壁にも真鍮目地が入っています。

下地のベニヤ板に墨が打たれ、真鍮目地棒だけが取り付けられても、一体どのように仕上がるか想像できないと思いますが、こちらは出来上がりを楽しみにしていてください。

真鍮とは関係のない部分でも内装材の取付けが進んでいます。こちらはテレビボードとなるリビング壁のイタリア製フィアンドレの大理石柄大判タイルの取付けです。

ダークマルキーナという柄のタイルですが、アップで見ても本物の大理石に見える精緻なプリント技術です。こちらも端部を細かく見ると、似た色に焼き付け塗装をしたL字アングル金物を取り付けています。

キッチンも真っ白だったキッチンパネル部分に、フィアンドレの大判タイルが張られました。こちらはアトランティック・グレー色です。本物の大理石だと厚みと重量があって、こんなにスピーディーにかつ薄く仕上げることができませんので、まさに大判タイルならではのメリットを最大限に活かしたデザインだと自負しております。

キッチンの大判タイル越しに真鍮目地入りの大理石壁を見たアングルです。

その他、カラーガラス張りの壁&扉の特注取っ手付き扉も吊りこまれていました。写真ではまだまだ未完成ですが、実際にはあと少し仕上げ作業でリフォーム工事の終わりが見えてきました。

金属調左官材モダナ

赤坂N邸

左官材ながら、金属の粉が配合されており、仕上げ後に磨き上げると金属の光沢がでる不思議な素材、モダナ(日本化成)の左官工事が赤坂N邸で始まりました。

と言いながら、僕らが現場に着いた頃には、ほとんどの左官作業は終わっておりました…。

こちらがモダナの基材となる左官材です。今回は、金と銀と銅の三色を同量で混ぜて、中間色を狙っております。色味のサンプルの写真は、以前のブログ記事に掲載しています。

基材を水で溶いたものは、このように金属のキの字も感じられません!が、基材の90%近くが金属粉となっており、磨いて光沢の度合いを調整したり、錆びを出したりとまだまだ発展性のある素材なのです。

モダナを塗って、乾燥してから、磨いてゆくと、金属光沢が出てくるのですが、本日まだお預け状態です。

先日のブログで書いた、斜め模様や細かいテクスチャーの違いは、うまく表現されているようです。

この曲線で入り組んだ形の左官もきれいに仕上がっています。タイル張りの甲板の下は収納になっています。

心配していた、廊下部分の建具の左官仕上げも、しっかり左官されていました。廊下奥が玄関で、玄関から入って左手には金属左官の壁が続き…、

右手側には、大理石調タイルの壁が流れているというデザインになっています。

先日はまだ組み上げ途中だった特注のスチールサッシも無事取り付けられていました。

LDと寝室を間仕切るこのスチールサッシは、廊下とLDの仕切りともなっています。

リビング天井のスクリーンボックスとスクリーンもきれいに納まりました。カーブ形状の折り上げ天井のラインも何とかうまく調整して貰いました。

まだ色々な職方が出入りして、最後までバタバタの現場になりそうです…。

夜になると、赤坂から青山、外苑前の夜景が一望できるピクチャーウインドウに職人さんたちも思わず手を止めてしまいます。