Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

廃材が少ない築浅マンションの解体@仙石山T邸

仙石山T邸

仙石山T邸は築10年未満の築浅マンションのリフォームプロジェクトです。まだ、比較的新しいマンションですので、使えるものは下地から設備まで最大限活用して、表層のイメージをうまく変えて、リフレッシュしたいというのがお客さまからのご要望でもありました。

エアコンの交換やスプリンクーラーの移設はそれなりの費用が掛かるので、既存エアコンは再利用(ただし、フェイスのプラスチック部分が紫外線で黄ばんでいたので、白い塗料を吹き付けてリフレッシュ予定)、スプリンクラーもキッチンの間取り変更がありましたが、カバー範囲が変わらないので、移設や増設無しで済ませることができそうです。

通常のマンションでは、フローリングを張り替えると、フローリングの下の床暖房パネルを傷つけてしまうので、床暖からやり直しとなるケースが多いのですが、ここアークヒルズ仙石山レジデンスは、以前の幾度かの工事で、捨て貼りベニヤ板が貼られており、床暖を活かしたまま床材を交換できることが分かっていました。

キッチンについては、レイアウトを全面変更するので、このようにきれいさっぱりキッチンが消えてしまっていますが…、

食洗器からレンジフード、ガスコンロからディスポーザーまで、使える設備機器類はすべて丁寧に付属金物まで一緒に取り外して保管しています。

床には、もうすでに新しい対面型カウンターの位置に合わせて、給排水菅が設置されていました。

キッチン背面側にもガス管が丸められています。床パネルも、必要最小限に取り外されているだけです。

解体を限定的、部分的にすることは、実は施工会社からすると面倒なことで、スピードも解体業者を入れて、すべてを撤去するスケルトンの方が楽なのです。ただ、大工さんに必要最小限な部分だけを剥がして貰えれば、廃材を少なくすることができ、結果的にリフォームに掛ける金額を落とし、スピードアップすることができるのです。

玄関横にあったトイレも、便器と手洗いの位置を交換するだけだったので、床パネル三枚を取り外して、配管位置を交換して、またパネルを戻しているので、最小限の作業で位置交換することができました。

こちらは玄関ホールです。こちらも床は既存のタイルを撤去しましたが、床下地は残すことができています。左側の壁は、仕上げ材をビニールクロスから石張りに代るので、ボードから撤去しています。ただ、壁のLGS(軽量鉄骨)の下地はほぼすべて残すことができています。

玄関正面にあたるこの壁にアクセントとなるニッチを設けることまでは決まっていますが、まだ、そのサイズと位置、デザインが決まっていないので、まずは位置出しをして、お客さまに見て貰うことに致しました。

赤い養生テープでマークした部分が、大よそのニッチの範囲となります。LGS下地をなるべく残したいので、玄関扉の位置とLGSの位置から、この位置に決めました。ニッチ中央のLGSだけは部分的にカットすることになります。

今回のリフォーム現場、とにかく廃材が少ないのが、一番の特徴となっています。

→リフォーム工事完成後の仙石山T邸の様子をご覧ください。

カーブを描く左官壁の下地作り

赤坂N邸

赤坂N邸リフォームの一番重要なデザインポイントとなるカーブ壁の左官下地作りが始まりました。

写真中央右で脚立に足を掛けた職人さんが触っているのが、その壁です。もうこの段階で、本当の左官下地は塗られていますが、ここからデザインとなる絵柄(模様)とテクスチャーが施されていきます。

共同設計の3*D空間創考舎の石川さんと僕でご提案したのが、この展開図に描かれているランダムな斜め線のデザインです。

と言っても、実際にどのようなイメージになるのか分かりにくいので、黄色い養生テープを使って、お客さまご夫妻の前で、僕、各務が実際に想定される位置に斜めの線をテープで張ったものを見て頂きました。

ただ、直線に硬い線が走るだけでは面白くないので、ビニールテープを使って、幅も少しうねる様にカッターで切って調整してはどうかとの提案を左官会社の望月工業の社長の望月さんから貰いました。

仕上げ材のサンプル(これも望月工業で作った貰ったもの)を見ながら、ベースとなる素地の作り方と磨き込みの度合いも見て貰っています。

大まかなデザインと流れは、これで良さそうだとのお客さまのご了承を頂きましたので、左官の職人さんにビニールテープで下地に斜めラインを張り始めて貰いました。

カーブ壁に沿った扉が2枚ありますが(1枚はトイレ水回り、もう1枚は設備室)、扉も同じ左官材で塗って貰う予定なので、壁と扉が一体化して見えるように同じ柄を繋げて貰っています。

いよいよ左官の下地作りです!と言っても、最初は天井際の塗りにくい個所を細かいコテを使って塗ってゆくので、地味な作業からのスタートとなります。

細かい部分が収まってくると、いよいよ左官名人の出番となります!今回の左官工事は、左官材メーカーの日本化成からのご推薦で、望月工業さんが入ってくれていますが、社長の望月さんが左官の超ベテランで、細かい柄から大きな模様まで、左官コテで作ってゆく名人なのです。

名人、望月さんの腕で、流れのある左官のニュアンスが作られてゆきます。テープを張った部分は、一旦塗り終わって、半分乾いた所でテープを剥ぎ、その部分だけが凹むことで柄になるという塩梅なのです。

場所によっては、ローラーで左官の流れを乱したり…、

縦横無尽に名人が楽しみながら(?)左官下地を作っていってくれました。

片や左官下地を作っている横では、寝室とLDの間仕切りの特注スチールサッシも現場に入ってきており、取り付けが始まりました。

天井高さが変わっているところから先が寝室となりますが…、

その位置にフィックス(嵌め殺し)のスチールサッシの吊り込みが始まりました。

建具職人さん二人では手が足りず、現場に入っていた大工さんも手伝って、位置を固定していきます。その左側では、カーテン屋さんがレールを吊っています。

カーテンレールは、リモコンで電動開閉することになっているので、電動カーテンに対応した緩やかなカーブでの設置となっています。

カーテンの溜まり部分に、このような電動カーテン装置が取り付けられました。

そうこうしている内に、スチールサッシの建て込みも進み始めました。

玄関からリビングへと続く廊下の壁のタイル張りと建具の吊り込みもほぼ終わり…、

カーブ内側のトイレの便器設置と、壁クロス張りもほとんど終わってきました。

ステレオマニア(?)なお客さまからの追加のご要望で、天井に吸音パネルを追加で張ることになり、LD全体の天井にパネルを張って貰う工事も進んでいます。

窓際にはスクリーンを設置するボックスも無事取り付けが終わっています。

お引渡しが迫ってきた中で、タキズミの現場監督の池谷さんの差配で、職人さんが15人ほど出入りしての大変な作業が続いています…。

ボードの割れ目補修はエクセルジョインで

渋谷区Q邸

渋谷区Q邸の工事では、きれいにカーブを描いて折り上がっている天井部分は、既存を再利用する方針で進めています。ただ、折り上げ内のボード塗装部分には、ヒビが沢山入っているので、その補修が必要となっていました。

まずは折り上げ天井の周囲のボードを二重張りにする作業をボード屋さんが先行して進めてくれています。カーブ部分は、このようにボードを天井に当てて、鉛筆で形をトレースしながらカットしてゆきます。

バナナ状に曲がった吹き出し口の部分も切り取る必要があるので、結構面倒な作業です。

二重のボード張り作業はもうすぐ終わりです。

本当はボードの継ぎ目もなるべく少なくして、まっすぐに通したいのですが、4重にカーブが重なった形なので、継ぎ目のラインもガタガタになってしまっています…。

一部カーブした折り上げ天井の全容です。

ここで出てきたのは、このエクセルジョイントです。正式名称はファインモル・エクセルジョイントというそうですが、各種下地素材のジョイント部分の亀裂処理、予防処理にために開発された素材で、無機質材料に繊維質と特殊語彙性樹脂を混ぜたセメント系の下地材で、曲げ強度と付着性が強く、剥離やクラックの発生が少ないのが特徴だそうです。簡単に言うと、地震などの揺れがあっても追従性があるので、簡単にひび割れがしない下地材とのことです。

袋の中の、練る前の素材を見ると、確かに細かい繊維質が混ざっており、粘着性が良さそうな素材に見えます。

元々ヒビが入っていたカ所は、ヒビ割れを大きくするために、カッターを差し込んで亀裂をお置きしたところに…、

まずはこのように重点的に水で練ったエクセルジョイントで処理します。

その後は、平滑でヒビが入っていない部分も含めて、全面をエクセルジョイントで塗ってゆきます。

塗装とは違って、左官のコテで押えるので、ちょっと不思議な塗模様のように見えますね。

ボードとの取り合い部分です。カーブした部分にも対応したフクビの塗装用コーナー見切りを入れて貰っています。

今回の工事では、エクセルジョイントを他のカ所でも使って貰っています。こちらは浴室の天井です。

浴室の工事は少し遡っていますが、防水下地が終わったところで、防水下地を守る抑えモルタルの接着性を良くするために、ラス網を張っている様子です。

壁にくっついている丸い金物はアルミ製のトンボと呼ばれる金物で、これのつの部分をメタルラスに引っ掛けて固定してゆきます。

タイルを張る下地となるモルタルを塗った後の様子です。ライニング(浴室内の壁の出っ張り部分)内に隠れる箇所に水とお湯の配管が通されています(青が冷水で、オレンジが温水です)。

そこに浴槽が設置されました。浴槽周りには、断熱の発泡ウレタンがたっぷりと吹き付けられていますね。天井もエクセルジョインとの上から白いエクセルホワイトが塗られています。

詳しく見ると、浴槽は現場で組まれたコンクリートブロックで動かないように固定され、浴槽からの排水管が、床のバス兼トラップに接続されています。

「バス兼トラップ」とはバス(浴槽)からの排水と、床排水を一つで兼ねたトラップの略語です。黒いお皿のした部分に防水層が絡まって、水漏れがしないように作られた便利な製品です。

今回は追い炊き管が設置できない給湯方式なので、バス水栓を浴槽のデッキ部分に設置するために、このような水栓のベースが浴槽の頭側に取り付けられています。

浴槽周りのエプロンがコンクリートブロックで組まれた後は、このようになります。バス兼トラップも頂部の排水目皿だけを残して、モルタルの中に埋め込まれています。

エクセルホワイトの下地が完成した浴室の天井です。この上から仕上げの「水性ケンエース」という、水回りや外壁に使える塗料塗って仕上げる予定です。従来はツヤツヤしたVP(ビニールペイント)を使っていましたが、塗装最中の塗料の臭いがキツイので、施工会社の青の推薦で、こちらを使ってみることになりました。

もう一カ所エクセルジョイントが使われたのが、こちら主寝室横に設けたシャワーブースの天井です。

こちらもエクセルホワイトまで塗られた状態です。この状態を見て、お客さまから浴室やシャワーの天井が普通の塗装仕上げで塗られているようだが、将来的なカビや汚れの割れの可能性がないかとの質問が来ましたが、エクセルジョイントの工法をご説明したところ、「さすがカガミ建築計画だ!」と喜んでくださいました。

シャワーブースの排水部分は、バス兼トラップではなく、単純なトラップですが、排水目皿はタイル割に合わせて角型を採用しております。

現場では、キッチン部分の壁補強下地の作業も進んでいます。

キッチン吊戸棚がつく部分やカウンターが設置される個所には、オーダーキッチンのリネアタラーラの指定位置に従って、写真のようなベニヤ板の補強板が取り付けられました。

シューズインクローゼットや、書斎のガラス扉裏の壁には、

稼働収納用壁付けブラケットチャンネルの設置

ベニヤ板下地に棚柱を取り付けて、上から9ミリの石膏ボードを張ることで、棚柱がほぼ壁とゾロ(壁とフラット)に仕上がるという算段です。

シューズインクローゼットには大量の棚柱が設置されて、大容量の靴収納庫となる予定です。

180平米超えの大型マンションの工事なので、まだベニヤ下地の部屋もあれば、仕上げの塗装作業に取り掛かっている部屋もあるのです。

一番や早く進んでいる書斎部屋では、ほぼ塗装が終わっているのです。正面には、アルミフレームのガラス扉が入り、その背部には可動棚板を設置する棚柱が取り付けられています。

アルミフレームのガラス扉は、ライキ(コンフォート社)を使う予定ですが、レールを埋め込むための溝も天井には設置されています。

一番工事が遅れているのが、ダイニングスペースです。最後に追加で折り上げ天井を実行することが決まったので、ようやく天井の骨組みが仕上がったばかりなのです…。

現場定例の様子です。現場定例の場所も、職人が作業に当日作業に入らない予定の部屋を作って用意してくれています。この日は玄関ホールでした(笑)。

キッチンの二段カウンターの大理石の仕上げが決まったので、その最終打合せの為に、石材屋の日本辰華の営業担当の渕川さんと相談役の池上さんが来てくれました。

お客さまにお預けして見比べて頂いたエンペラドールダークのアンティーク加工のサンプルです。

アンティーク加工の具合や、艶の具合で多数のサンプルを作って貰いましたが、竹田さんが指さしている仕上げが最終決定となりました。