Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

現場寸法確認打合せ@六本木M邸

六本木M邸

解体が無事済み、床下地工事が進行中の六本木M邸現場にお施主様ご夫妻と一緒に伺って参りました。

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今回は、大きな間取り変更はありませんが、無駄なスペースを有効活用してテレビを入れるニッチを作ったり、キッチンの寸法的な問題を解決するために、冷蔵庫置き場とカウンタースペースを交換したりと、現場の寸法に応じた対応をすることになっているので、この段階でお施主様ご夫妻に現場に来ていただき、それぞれの現況をご説明いたしました。

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中央に開いている箇所にテレビを入れる家具を埋め込む予定ですが、向かって左側には構造体のRC柱があり、右側には抜けないLGS下地があり、それによってニッチの寸法が決まり、テレビのサイズも限られてしまうことをご説明いたしました。

こちらが事前に図面上で検討していた際の寸法なのですが、やはり壁を開けてみないと判らないことがあるのがリフォームですね。

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こちらは同じテレビ用ニッチを背面の廊下側から見たところです。上部に弱電盤がついているので、そこまでの弱電関係の配線をどのように隠すかを工事のライフデザイン山碕さんと斉藤さんと打合せを致しました。

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玄関周りもタイル張りの床を天然石のボーダー張りに変更するので、下地からやり直しています。右側に見えているのがキッチンへの通用口ですが、こちらの建具枠は、当初は既存をそのまま利用する予定でしたが、現場を見ると建具を傷めずに枠だけ削り取ることが出来そうだったので、先回お願いして枠を撤去して貰いました。他の開口と合せた装飾の付いたケーシング枠を取り付けることにしています。

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廊下は、途中にあったPP分離(パブリック部分とプライベート部分を分離すること)の為の建具を撤去して、その廊下長さを楽しめるようなインテリアとして活用する予定です。床には玄関とは違った黒いフローリングを張って、正面の壁には鏡を張ることにしています。

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こちらは判り難い写真ですが、キッチンの背面収納の部分です。新築の高級マンションなのに、キッチン内の通路幅が85センチしかなかったので、お子様に料理を手伝って貰ったりする際には絶対不便になりそうだったので、冷蔵庫位置とカウンター位置を変えて、更にその背面の玄関側の収納も調整して、通路幅を100センチに変える計画です。

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キッチン通路の幅が広くなる分、床のフローリングに継ぎ目が出てしまうので、その状況をMさまご夫妻にご説明している様子です。実際にはフローリングの継ぎ目が見えるかどうかより、歩いている際の脚触りの方が気になるとのことで、すきまをきちんと補修材で埋めることを優先することと致しました。

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天井埋め込みの照明ボックスの寸法も、スプリンクラー配管の影響で変わってしまうことになったので、どのような寸法で、照明の角度をいじることができるかを実験するために、現場にボックスのダミーを作って貰いました。

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ここから正面右手の壁にトラバーチンを張ったり、玄関ホールとの間にシックな扉を入れたりと、まだまだ工事は続きますが、これからどのように変身してゆくか、とても楽しみです。

市ヶ谷S邸マンションリフォームが完成致しました

市ヶ谷S邸

新宿区市ヶ谷でマンションリフォームのお手伝いをしていた市ヶ谷S邸が竣工し、お施主様へのお引渡しを無事終えることができました。

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以前からウェブマガジン「家の時間」の建築家リフォームの読者だったというご夫婦から、58平米の中古マンションを購入したので、リフォームの相談に乗ってほしいとのご依頼がありました。

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一度こちらの事務所にいてして頂いて簡単なリフォームのご相談を受けて、その後現地に伺って撮影したものが上の写真です。間取りの変更以上に、空間の雰囲気、インテリアのテイストを追求したいとのお話しだったことと、何より「建築家リフォーム」の愛読者だったということが嬉しくて、お手伝いすることになりました。とはいえ、スケジュール的なことと費用的なことで、フルサービスの設計では効率が悪そうだったので、現地からも近く、マンションリフォームの実績が豊富なリフォーム屋さんのライフデザインさんとチームを組むことになりました。

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最初にSさまご夫妻のご要望を伺ってプランに落し込んだ後は、お施主様のSさまご夫妻が直接ライフデザイン社とマンションリフォームの契約を行って、僕らはアドバイザーとしてSさまに適宜アドバイスしてゆく形になりました。写真はライフデザイン社の飯田橋ショールームにて、営業の和久さんと設計の遠藤さんと打合せしている様子です。

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海外に長く住まわれていたSさまご夫妻は、モールディングやケーシングなどの装飾材を上手く使って、コンパクトながら気持ちが良く、雰囲気のある空間になさりたいとのご要望で、コストデザインで苦労致しましたが、無事着工することができました。

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取り付ける前のミハシ社のモールディング・ケーシング・巾木材です。事前に違う場所でベースとなる白色に下塗りしてあります。

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二つの部屋を一つに繋げたLDは、窓の出っ張りなどで変形の空間なので、それを縁どるようにモールディングを廻しております。

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こちらは既存のキッチンへの開口部にかぶせるようにして仕上げたケーシング材(枠材)です。廊下からの新しい扉の枠材とも揃えています。

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そうこうしているうちに、工事もほぼ完了し、施主検査にアドバイザーとして立ち会わせて頂きました。モールディング等の装飾材はとても上手く出来ていたのですが、薄手のクロスを張った個所に、ヨレや段差などが目立ったので、それらがどのような理由で発生するのかをご説明しながら、検査を進めてゆきました。因みに、フローリングはちょっと濃いめのウォールナット三層フローリングを使っています。

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玄関からリビングへの扉を見返した写真です。扉は岡崎製材が販売している木製室内扉を工場で吹き付け塗装で仕上げて貰ったものです。とても可愛らしくて雰囲気のある扉に仕上がっていました。因みにこのような扉を専門用語では框扉(カマチトビラ)といいます。最近はこのようなデザインの問合せも増えているのですが、特注で作るととても高くなってしまうので、サイズが合えば既製品を使うとコストパーフォーマンスが圧倒的に良くなります。

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お引渡し時に撮影した記念撮影写真です。左からライフデザイン社の営業の和久さん、現場監督の伊藤さん、Sさまご夫妻、ライフデザイン社のCS(カスタマーサティスファクション)担当の山口さん、そして私、各務です。
コンパクトながら、Sさまご夫妻の思いが詰まった、お洒落で雰囲気のありとても愛着がわくマンションリフォームが完成致しました。まだ新しい家具が届くまでに時間が掛かりますが、どうぞこれからのここでの生活を存分に楽しんでください!
(アドバイザーとしてお手伝いした経緯で、これまで途中経過をこのブログではご報告していませんでした)

黒檀の突板探し@山一商店

代官山T邸

代官山T邸の玄関ホールからリビングへの扉は、お施主さまとのこれまでのイメージ詰めで、力強く華やかなでかつスタイリッシュなデザインにすると決めていました。建具の表面に使う突板は黒檀かローズウッドとターゲットを定めて、探し始めました。

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当初は、工事をお願いしている家具・建具屋の問屋さんのルートで、イメージを伝え探してもらったのですが、あまり良い柄が見つかりませんでした。そこで、突板業界の最大手の新木場にあるショールームに伺ったところ、もう良い柄の黒檀突板は手に入らないと言われてしまいました。却って、人工的に染色した天然目を積み重ねてから突板化した人工突板の方が、良いのではと勧められました。上の写真で、左側が本物の黒檀の突板で、右側と中央奥が人工柄、右奥が現在大手突板屋にストックがある天然黒檀だとのことでした。

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上の写真の大手町のパレスホテルでは大々的に使われていたので、そんなハズはないと思い直して、以前杉並区S邸でお世話になった突板屋の山一商店さ んに連絡したところ、良い柄の黒檀があるとのことでしたので、現物を拝見するために新木場から川口に向かいました。

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こちらには、ありました!新木場ではもう良い柄のコクタンは、どこを探しても見つからないと言われていたのですが、山一さんには僕らの想像以上に良い柄のものがあったのです。

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良い柄が黒檀では2種類あり、こちらは厚突きと呼ばれる突板の厚みが0.6ミリ以上あるもので、通常の薄突き(0.2~0.3ミリ)のモノに比べて2倍以上あるものでした。欧州や米国では突板は厚突きが当たり前で、風合いもそちらの方が良いのですが、価格的は倍程してしまうのと、今回は特に柄と色味が僕らのイメージと違ったので、薄突きを選ぶことにいたしました。

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こちら山一商店さんは3階建ての建物で、一番上の3階には、貴重だと言われる銘木や唐木などの突板材のストックが、これでもかと並んでいました。

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このように短手方向で見ると、一本の木を薄くスライスしていったものであることが良く理解できますね。

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1階には、より一般的に使われる材料が高い天井一杯まで積まれていました。代官山T邸では、メインの建具以外にも、ウォールナットの突板を使う予定があるので、そちらも参考までに幾つかの材を見せて頂きました。

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最初は、良いものがないと言われガッカリするところからスタートした突板探しでしたが、結果的には予想以上の良い柄を見付けることができて、デザイナー冥利に尽きるとても幸せな一日になりました。その後は、山一商店の山内社長と山内専務です。厚突きで板の真ん中にヒビガ入ったようなものは、現在の日本のマーケットでは商品にならないようですが、そのヒビを上手く活かす方法や、そういった方法を違った観点で商品化する方法を探していることをご説明頂きました。また、後で聞いたところでは、パレスホテルの黒檀も山一商店さんが集めて納入したとのことが判りました。
以下、その後黒檀突板張りの建具が作られる様子と完成後の写真のご紹介です。

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このように芯材に単板を並べた突板ベニヤを張り、建具の形に作ってゆきます。まだ塗装が掛かっていない状態です。

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その間に、貰っていた見本突板を塗装工場に回して貰って、ウレタンで全艶(ぜんつや)塗装のサンプルを作って貰いました。そのままウレタン塗装したものと、素地に少しだけ赤味を浸透させてからウレタン塗装したもの二つに上下で分かれています。

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こちらが最終的に出来上がった代官山T邸の黒檀建具です。大理石張りの壁やガラス、鏡、ステンレスを使ったインテリアと上手くマッチしてくれました。

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お陰様で、特注で作った鋼製の取手と組み合わせたディテールもカッコ良く決まりました!